第84話:円環の竜輪を破壊する唯一の魔法
『沸騰する血の呪法』。
如何なる攻撃を受けても絶対に死なない不死身のドラゴン・ウロボロスを斃すためにドラゴンたちが編み出した魔法の一つで、その魔法を使うと対象に掛けられた回復効果が全てダメージへと変換され、魔法を解かない限りは一切の回復を受け付けなくなるという恐ろしい魔法である。
「『沸騰する血の呪法』だと……?!」
母をドラゴンに持つ龍人の少女が耳を疑う。
「てめえはそんな恐ろしい魔法を人間に掛けたっていうのかよ?!」
呪法が禁忌である所以。
それは、一つ一つの威力や影響力があまりにも強すぎて、魔法を使ったバトルのバランスや生命への被害に大きな影響を及ぼすからである。
その余りの威力の大きさに人々は呪法を使うことを恐れ、セーブし、戦いでの使用を一切禁じたのだ。ドラゴンとドラゴンによる大規模かつ無法な戦いが起きない限りは、そのような呪法を目にする機会や知る機会などゼロに等しい。
そんな絶大な影響力を持つ魔法を使ったことを、
「人間ではないよお。そこにいるエルフに掛けたのさ」
アラキラはあっさりと認める。
それどころか、呪法によって死ぬ生身の生き物を見られた愉悦からか、呪法を使った時のことを回顧して逆に嬉しそうな表情を浮かべる。
「そうしたら面白いことに、そこの女が回復魔法を掛けたから死んじゃったんだよねえ。愉快愉快!!」
人間の手指のはずなのに不自然に尖った指先でラウンから少し離れていた場所に立っているリルを指すと、その顔からは血の気が失せていた。
「……で、どうする?『沸騰する血の呪法』をアタシに使えば、アタシは【ウロボロス】を使った瞬間身を引き裂かれるような激痛を伴って死ぬわけだけど?大事な彼氏を殺した宿敵を、彼氏に掛けられた呪法と同じ魔法を使って殺す。実に感動的じゃない?」
「とんでもないクズ野郎だな」
勇者がその場で吐き捨てる。
アラキラは最初からこのシチュエーションを想定して聖剣リライトを奪ったに違いない。
リライトがなければアラキラを斃すことはできない。しかし、斃す方法はかつて恋人を殺した『沸騰する血の呪法』しかない。
リルに『沸騰する血の呪法』で自身を斃させることで、『恋人の復讐を成就させるために禁忌に手を染めた』という罪悪感を与えたいのだろう。
「どうする?使っちゃう?『沸騰する血の呪法』を使っちゃう??」
餓死する寸前ではないのに「腹が減って死にそう」と言うように。
茶化されて仲のいい友達に「殺すぞ」と言ってしまうように。
そうならない、そうしないという絶対的な安心感があるのだろう。気持ちの悪い笑みを浮かべながら様子を窺っている。
「魔王軍の声になど耳を貸してはいけないよリル。僕はあの時のことなんて気にしていないし、現に僕は生き返ったじゃないか?君が禁忌の魔法になど触れる必要はないんだよ」
「……してやる」
恋人に肩を揺すぶられる中、リルは俯いて蚊の鳴くようなトーンで答える。
「……してやる」
「おいリル。あの魔法の危なさはドラゴンを親に持つあたしが一番よく知っている。こんな時だけ龍人面するのは烏滸がましいかもしれねぇけど、『沸騰する血の呪法』は絶対に使うな」
「幸い目撃者はおれたちしかいないからリルが呪法を使ったことを揉み消すことだってできる。けど、『呪法を使った』という事実は自分の心奥にいつまでも残り続けるんだぞ?」
前衛で盾を構えたラウン以外の仲間たちが諭すべくリルの周りに集まるが、
「殺してやる!!」
面を上げたリルの顔には憤怒の形相が宿っていた。
「魔王軍などという蛮族如きが私を手中で踊らせようなどとよく考えたものです!そんなに言うのであれば、禁忌に手を染めてご覧に入れましょう!!さあ教えてください!!どうやって使えばいいんですか?」
「…………えっ!あっ!ああ」
あれ?リルってこんなキャラだっけ?
言い出しっぺのアラキラ本人が困惑する中、挑発してしまった手前引き下がれないアラキラが口を動かす。
「呪法はドラゴンたちが編み出した特別な魔法というだけあって、詠唱するための文句さえ知っていれば、【才】のスキルがなくても使うことができるん、です。いまから教えるね」
楽しく雪合戦をしていたら、近くに落ちた雪玉の中に鉄釘の塊が入っているのを見つけてしまった気分だった。
殺される。
『沸騰する血の呪法』で確実に殺される。
『絶対にあり得ない』から、『これ死ぬんじゃね?』にシフトチェンジしたことで死の恐怖が刻一刻と近づき、思わず変な言葉遣いになってしまったアラキラが震える唇で呪法の文句を伝授する。
「「天からの癒しを魔からの苦痛へと変換し、絶対に癒えない力を体内へと注ぎ込め!」。後はこの文言を魔証石を握りながら言うだけだよ。ドラゴンたちが生み出した呪法と言われる類の魔法たちは、火・水・土・風・光・闇の六つの属性にも、【女神の祝福】にも【天啓の導き】にも【悪魔の勾引かし】にも属さないから、この文言さえ知っていれば簡単に唱えられてしまうのさ」
「…………」
首に下げられたペンダント状の魔証石を強く握る。
この呪法さえ使えば【ウロボロス】を完全に突破することができるため、アラキラを斃すのも時間の問題だろう。
しかし、呪法に手を染めたモノは陽の当たる場所を二度と歩くことはできない。
「どうしたのかなあ?最後の最後で躊躇っちゃったのかなあ」
「ちょっと待て」
最も前衛に立つ騎士が待ったを掛ける。
「貴様、リルに『沸騰する血の呪法』を使わせるだけ使わせておいて『ワープ』で逃げるなどという卑怯な真似はしないよな?私は貴様のことなど微塵も信用しておらん。だから、リルが呪法を撃つ前にこちらも対策をさせてもらおう」
「それもそうだな。じゃあ、あたしが『ゴブリンの足踏み』を掛けておくぜ」
『ゴブリンの足踏み』とは、相手が持つ遺物の効果を失わせる【悪魔の勾引かし】の妨害系魔法だ。
この魔法の効果によってペンデュラムが八回往復するまでの時間|(約20秒間)、所持している遺物が効果を失うため、アラキラは『天籟王の冠』を使って『ワープ』することができなくなる。
「この魔法の効果はそんなに持たないから、やるんならさっさとやっちゃいな。……あたしはあまり気が進まないけどね」
いよいよ逃げ場はなくなった。
【アシディティ=ユーモア】なのか汗なのか空から降る雨なのかも分からない液体で、じっとりと湿っぽくなってきたアラキラを目の前にしてリルは呼吸を整える。
ここにいる仲間たちは自分が禁忌を犯したことを隠してくれると言った。
目の前の敵を斃すのには『沸騰する血の呪法』を使うしかない。
「…………」
頭の中で禁忌を正当化して自身を納得させ、魔法の詠唱に入る。
「私が斃す」
雨で濡れた魔証石を掴み、文言を唱えるために口を開いたところで、
「あなたが禁忌を犯す必要などありません」
アラキラの背後に人間の姿。
人間よりも遥かに優れた聴力と視力を持つはずのトルーニですら気づけなかった。
その一言を発したことにより初めて存在が認知された少女が言葉を続ける。
「何故なら、この女はわたしが処分するからです」
鈴を転がすような可愛らしい声のはずなのに、低く棘のあるトーン。
激しい雨を受けているにもかかわらず、まるで天日に干された布団のように柔らかく風に靡く純白のトーガ。
その小さな身体の周囲を包む神々しい光。
短く切り揃えられた金色の髪。
何処か幼さを孕んだ印象を持つ面立ち。
その姿は髪が短いことを除けば、絵理華と行動を共にする金髪の少女のようだった。
「セレン…………?」
見知った少女によく似た姿を発見したレオルスが思わず声を漏らす。
「なろう」にてブックマークが二件、いいねが一件増えました!ブックマーク&いいねしてくださった方ありがとうございます!!
コロナ禍になってから一度も行ってなかったので、先日三年ぶりくらいに名古屋に観光に行きました。目的はデュエマとアニメのCDとえっちな同人誌の購入です。
用事があってこれまた久しぶりにアニメイトに行ったのですが、グッズコーナーに「ウマ娘」の特別コーナーが設置されていて、グッズがたくさん並んでいました。
さらにカードショップに行ってみると、「ウマ娘」の萌えスリーブがずらりと並んでいますし、紙版「シャドウバース」とのコラボとのことで、「ウマ娘」のカードがショウケースにたくさん並んでいました。
秋葉原のラジオ会館にあるK-BOOKSでグッズを探したにもかかわらず、ジャンル「その他」に二点、しかも同じグッズで缶バッチしか存在しない(しかも推しのグッズではない)ような作品を推していた身からすれば、いつ、どの店に行ってもグッズの供給が豊富にあるというのは、見ているだけで幸せな気分になりますね!!今から10年くらい前の「東方シリーズ」全盛期を見ている気分でした。
あの時はアニメイトに特別コーナーが設置されていて、大きい棚の片面が丸々東方グッズコーナーになっていて、キャラクターごとに分かれて平置きされていたりしたんですよ!!
……別に「東方シリーズ」が落ちぶれた、と言いたいわけではないですよ?今となっては「アイマス」・「ラブライブ」・「アイカツ」・「プリティシリーズ」・「プリキュア」・「ウマ娘」・「艦これ」・「ガルパン」・「バンドリ」などと対抗馬が増えて趣味が多様化し、ファンが分散していった結果こうなってしまったというだけで、今でも「東方シリーズ」は根強い人気のあるビッグコンテンツですからね。
ではまた!これからもよろしくお願いします!!
……作品の裏トークとかを全然していませんね。期待している方申し訳ありません。だってヲタ活楽しいんだもん!!次回は裏トークしますよ!!




