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第83話:『ダイヤモンドリング』

 雨が降っている以上は【アシディティ=ユーモア】による強酸の霧は作れない。

 ならば、少々危険だがラウンをタンクとして前線に立たせ、なるべくアラキラの注意を惹くしかない。


「せいっ!!」


 剣を振り下ろすが鱗に包まれた腕で防御される。


「無駄無駄あ。鱗に覆われたアタシの身体は並大抵の武器では斬れないよ。それこそ、聖剣リライトくらいの名剣じゃないとね」


 ぷっ!とカウンター気味に吐かれた唾を回避すると、足元に生えた草が緑色の液体となって形を失う。


「……相変わらずおぞましいスキルだな」

「さっきあの女の子の服を溶かしたのを見てたでしょ?LS(レジェンドエス)ランクの鎧でも難なく溶かせるのは確認済みだよお」


 今度は尻尾を振り回して薙ぎ倒そうとしてきたので【鉄統鉄備(てっとうてつび)】を発動させて受け止める。


「相変わらず恐ろしいスキルだねえ」

「【騎士の誇り】や【ドラゴンスケイル】だったら【アシディティ=ユーモア】も受け止められたのだがな。そこばかりが残念だ」

「けど、今の攻撃は【鉄統鉄備】じゃなかったら死んでたんじゃない?結構本気で殴ったよ?」

「違いない」


【鉄統鉄備】がまだCT(クールタイム)に入っていないので、吐き出された強酸を足捌きで回避し、物理攻撃はそのまま受け止める。


「今のうちに強力な魔法を決めてしまうしかないね。レオルス様」


 幸いなのは相手が一体なことか。これといって飛び道具を持っているわけではなさそうなので、ラウンとの一対一を強制している間はこちらの魔法の妨害はできないはずだ。エウロと協力して策を練る。


「あいつに効きそうな魔法って言ったら、『モノクローム=アンドゥレーション』くらいしかないけど、【漆黒の才】のしかも【神】を持ったやつなんてパーティにいないから無理だな。おれの【閃光の才】と合わせるだけなのに残念」

「僕の火とレオルス様の風・光……。リルのも合わせれば水もあるけど、回復役を使うのは少し危険かな。なら、『ダイヤモンドリング』にしよう」

「……『ダイヤモンドリング』って、ほとんどおれの負担じゃないか」

「三属性を掛け合わせた高火力の魔法が咄嗟にこれしか思いつかなかったんだ。むしろ見つかっただけ感謝してほしいくらいだよ」


 何処か嫌味っぽく言いながら手を翳すと周囲を火属性の妖精(サラマンダー)が舞う。


 ダイヤモンドリングとは、皆既日食において日食が始まる直前と直後に一瞬だけ確認される眩しい光のことだ。

 熱や炎を司る火属性・自然現象を担当する風属性・天体を(かたど)る光属性の三つの属性の魔法を合わせることで再現し、相手を焼く一筋の光として射出するのである。


「行くよ?」

「任せろ」


 2~3つの属性を混ぜ合わせる時、割合を均等にすることが多いのだが、『ダイヤモンドリング』の場合は火・風・光の割合は2:3:5。同じ力を持ったモノ同士が闇雲に合わせても完成する魔法ではなく、絶妙な調整や熟練度が必要となる。


 しかし、この場にいるのは魔王ロザスを葬り去って(形としては)世界に平和を(もたら)した勇者と、かつてその勇者を支えていたが命を落としたエルフの大賢者。


『ワープ』を使った卓越的な座標移動が可能なほどのコントロール力があるのだから、レオルスにとっては、この程度の調整など造作もない。


「「天空にて相反する二つの天体よ。刹那の協調関係によって暗黒に包まれた世界の始まりと終わりを告げる一筋の光を表出せよ!ダイヤモンドリング!」」


 二つの声が重なり一つの魔法が生まれる。

 直後、雨天であるにもかかわらず天空から出現した偽りの太陽と偽りの月が背後で重なり、暗闇の世界の終焉を告げるように眩しい光を周囲に拡散させる。


「ぐうああっ!!」


 偽りの太陽と偽りの月を使ってはいるものの、空に天体現象を再現しているのだ。『ワープ』を使っても逃げられるような場所など周囲にはなく、戦場となった小屋周辺をダイヤモンドリングの光が隈なく照らす。


 普通のモンスターであれば光に焼かれて消滅し、跡形もなく地上から姿を消す。

 SSランクに匹敵するレベルの狂暴なモンスターでさえも、これほどの火力の魔法を受ければ大きなダメージは避けられない。


 そう、普通のモンスターであれば。


「……なんてね、死ぬかと思ったよ」


「死ぬかと思った」という言葉をこれほど多量に使い、これほど似合うモノもいないだろう。

 何故ならば、本当に死んでいてもおかしくないほどの火力を直に受けているのだから。


『ダイヤモンドリング』が直撃したはずのアラキラは表面が黒く焼き焦げるような様子も一切なく、むしろ、ラウンが今まで稼いできたはずの細かい傷すらも完全に回復しまっている。


 LSランクスキル【ウロボロス】。

 不死身の竜・ウロボロスのような円環を自らの尻尾を噛んで作り出すことで、あらゆるダメージを回復することができるスキル。


 即死するような攻撃をいきなり受けない限りは何度でも傷を再生することが可能で、しかもスキルであるためにMPを一切使わずに回復することができる。



【アシディティ=ユーモア】による不可視の強酸の霧を発生させて飛び道具を無効化し、接近戦であれば大蛇の身体を使って絞め殺す。そして、大きなダメージを受けるようであれば【ウロボロス】を使って被弾とともにダメージを回復する。


 一度戦ったことがあるレオルスたちは素性を完璧に理解しているが、何も事情が分からないモノたちからすれば、魔法を一切使わずに飛び道具や剣が見えない酸性の霧によって破壊され、回復魔法を使わずに自らの手でダメージを回復する様子は、まさしく『妖術』と称するに値するだろう。


「言ったでしょう?聖剣リライトがない限りアタシを斃すことはできないって。どんな攻撃を受けようが【ウロボロス】を使えば全て無効にできてしまうんだかねー。……あっ、そうだ。一つだけこの【ウロボロス】を突破できる魔法があったっけ?ああ怖い怖い」


 難攻不落とも言える【ウロボロス】を突破できる魔法?

 不死身とも言えるアラキラさえもが死を覚悟して恐れる魔法?


『モノクローム=アンドゥレーション』。……この場には闇属性の魔法を使えるモノがいないため、この魔法は使えない。

『ニューワールド=イントロダクション』。……火・水・土・風・光・闇の六つの属性を過不足なく合わせないと発動できない魔法であるため使うことはできないし、レオルスでさえアジ=ダハーカとの戦いで初めて知った魔法だ。そんな魔法をアラキラが知っているとも思えない。


「興味深いね。その魔法っていうのは一体何なんだい?君に使ってあげるから教えてくれよ」


 大賢者である自分が知らないのだ。その自分を満足できるような答えが返されるだろう。

 内心でほくそ笑みながら蛇型獣人の女王の答えを待つと、


()()()()()()()()()()


 青い髪が張り付いた顔を不気味に歪めながら女は解を発した。


「この魔法を掛けられると、回復魔法や回復スキルで逆にダメージを受けるようになるんだよ。……あ、ゴメン。アタシが一度君たちに使ったんだから、説明は不要だったよねえ」


『沸騰』という言葉とは逆に全員の表情が凍り付く。

「ノベルアップ」にてブックマークが一件、「なろう」にてブックマークが一件増えました!ブックマークしてくださった方ありがとうございます!!



 最近になって「ウマ娘」のアニメ(一期)を観ているのですが、めちゃくちゃ面白いですね!!


「競走馬の名前を多少は知っている」くらいの知識で観始めたのですが、毎話ごとにキャラクターの名前が出てくるのでキャラの名前を覚えやすいように工夫されていますし、誰が勝つのか分からない臨場感やキャラクターの場面場面の切り取り方・見せ方が上手で、演出が丁寧に行き届いているなー。と思いました。制作人やスタッフの作品への愛を感じるいい作品です。


 今の所「このキャラクター好きだな」と感じたのが何人かいますが、某作品では推しがラスボスと妊娠・出産し、某作品では久しぶりに覗いてみたら、推しが「ライバルのファン!」と言っていたのに主人公と結婚・出産して二児の母親になっていたので、作品を完走するまでは信用できません。


 かつては「二次元の推しはいなくなったりしないから安全!!」みたいな絶対神話がありましたが、最近の作品はそうでもないようです。

 ……それとも、そういう例外的な作品ばかりに触れてきただけ?



 ではまた!これからもよろしくお願いします!!

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