第51話:内政追放ざまあ悪役令嬢マヨネーズ石鹸ガチャ獣人奴隷デイリーミッション攻略本
「ねえ絵理華さん」
「ん?」
朝の動物の世話を終えて一段落。
全員で朝食を摂っている間に天界の元女神様がこんなことを仰る。
「折角異世界にいるというのに、わたしたちまだまだ異世界っぽいことを全然やってないと思いませんか?」
「?……例えば??」
「内政追放ざまあ悪役令嬢マヨネーズ石鹸獣人奴隷攻略本」
「何だって?!」
英語をベースとしている魔法の方が聞き取りやすいくらいだ。細切れにされた山羊肉の入ったスープを飲みながら聞き返す。
「いやほら、異世界と言ったら内政して国を造ったり、パーティを追放された後にスキルが開花して「もう遅い!」したり、死亡フラグが立っている悪役令嬢に転生したり、マヨネーズや石鹸作ったり、何度もガチャを引いたら最強の英雄を召喚できたり、最強種の獣人奴隷を奴隷市で買ったり、デイリーミッションを達成していくと何故か強くなったり、自分にしか読めない文字で書かれた世界の理について書かれている攻略本をそこら辺の市場で買ったりしますよね?どれ一つやってないことですし、そろそろ異世界っぽいことをやってもいいんじゃないですかね?」
「そ、そういうもんなの……?」
「さては絵理華さん、異世界ものの作品とかあまり読んだことがありませんね?」
「むしろセレンが詳しすぎるんじゃないの?!」
転移前は動物園で働いていたわけだが、動物園のスタッフとて暇ではない。
朝は8時頃には動物園に到着し、主な仕事は清掃・餌やり・ショーに備えた芸の仕込み・動物たちが遊ぶおもちゃ作り・イベント企画のための書類作成・展示用のポップ作り・健康観察など多岐に渡る。
家に着いた頃には20時を過ぎていることなどざらなので、平日は帰ってから寝るまでの準備を整えるだけでも手一杯。本やマンガを読んでいる暇や余裕などなかった。
スマートフォンを操作してマンガが無料で読めるサイトをぼんやりと閲覧してみる。
「ほんとだ……。何処も彼処もマヨネーズとか石鹸作ってる……。どうして異世界に来ると石鹸とかマヨネーズとかラーメンを作ったり、食堂開いたりしたくなるんだろ?というか、私がいた世界の感覚で料理ってできるもんなの?」
ついでにインターネットであれこれ調べてみると、中世ヨーロッパ並みの生活水準となると、大航海時代を迎えていないのでトウモロコシ・サツマイモ・カボチャ・トマト・唐辛子などは存在しないし、海外のスイーツの定番であるシュークリームやプリンが今の形に完成したのも近世。砂糖に至っては高級食材なため、それらのお菓子ですら素材が集まるかどうか怪しい。
「というわけで、ガルシャさんの料理のレパートリーを増やす意味も兼ねて、今日はマヨネーズを作りましょう!!」
「おお、何だかよく分かんないけど面白そう!!」と乗り気なルナティと静かに頷くタイガに置いていかれる形で話が進んでいく。
「まずは肝心となるマヨネーズの作り方を調べましょう!はい絵理華さん!!「マヨネーズ 作り方」で検索検索う!!」
偶にはみんなでわいわい何かをするというのもいいだろう。スマートフォンを操作して検索すると、キューピーの公式ホームページにマヨネーズの作り方が掲載されているので読んでみる。
「えっと……、お酢、塩、植物油」
「ガルシャさん!お酢と塩と植物油ってありますか?」
「あん?あることにはあるけど何に使うんだ?」
「秘密です!続きをお楽しみに!!」
ばたばたと裸足で走っていくと小さな壺の中に入れられた酢と塩、菜種などを絞って作った植物油を持ってきて机に置く。
「あとは生卵だね」
「なっ!生卵?!」
……あれ?マヨネーズの主成分といえば卵のはずなのに、どうしてそんなに驚かれなければならないのか。がっくりと肩を落とすセレンの肩を軽く叩いてみると、
「……終わりました。これ以上はマヨネーズを作れません」
まさかの終了宣言が飛び出る。
「ど、どうしてここで打ち止めなの?卵が高級食品過ぎて手に入らないから、とか?」
「絵理華さん。目玉焼きの焼き方に「サニーサイドアップ」っていうのがあるのを知っていますか?海外では結構メジャーな焼き方で、白身の裏側を焼いた後にひっくり返して、黄身がある面までしっかりと焼く焼き方なんですけど、何故海外ではそれが主流か分かりますか?」
考えても分かりそうにないので静かに首を横に振る。
「答えは日本の厳しい衛星基準と比べると海外の方が少し緩いからです。例えば日本で検査された卵を生で食べた際、サルモネラ菌による食当たりを起こす確率は僅か0.003%くらいと言われていますが、海外では卵の生食による食中毒は結構起こっているんです。サルモネラ菌は75℃の熱で1分以上加熱すると死滅すると言われているので、しっかりと熱を通さないと食中毒を起こしてしまうんですよ」
『衛生基準』という概念がない世界で生卵を食べる。
それが如何に危険なことであるかが分かってしまう。
「そんな時はルナティちゃんにお任せ☆。回復系の魔法の中には食中毒を治す魔法もあるよっ!お腹が痛くなったらルナティちゃんにお任せあれ!!」
「でも、店で食中毒を起こすたびに魔法を使うのも大変だよね。ボクたちは依頼を受けなければいけない都合上、ずっとここにいるわけにもいかないんだし」
「今のところ悪い噂もなく順調にやってるから食中毒は御免だぜ」
「それもそうだよねー。あっ、見つけた見つけた」
スマートフォンを見ながら呟く。
「サルモネラ菌って酢を使えば死滅するらしいよ。酢を多めに使えば大丈夫なんじゃないかな?」
自家製マヨネーズを作ったことによる食中毒の主な原因は、酢を使った殺菌処理の不十分さと、製品版と違ってマヨネーズそのもののph濃度を菌類が繁殖できないレベルまで下げられていないことによるものらしい。つまり、規定量よりも多めに酢を使ってマヨネーズを作れば、サルモネラ菌による食中毒のリスクも減らせるはず。
――細菌学などを齧っていない素人の考え方なので、何処まで的を射た考え方かは分からないが。
「じゃああれですか?酢をどぱどぱに使えば何とかなるってことですか!?よっしゃマヨネーズ作り再開しますよ絵理華さん!!」
おー、と他三人が拳を振り上げる中、マヨネーズの作り方に目を通す。
「えーっと、用意するのは塩小さじ4分の1、お酢大さじ2分の1、黄身と白身を分けた生卵の黄身の部分、植物油80ml……」
「ほらよ。黄身と白身は分けておいたぜ」
「ありがとうガルシャ」
「で、何を作ろうってんだ?」
「セレンが内緒だって言うから内緒だよ」
さっきからマヨネーズマヨネーズと連呼していて秘密も何もあったものかと思いつつも、お椀に入った黄身を受け取って調理スタート。
「まずは、黄身と酢と塩を一緒に入れてしっかり混ぜるっと。そういえば|クリームとかを混ぜる時に使うアレ《泡立て器》ってこの時代にあるの?」
「卵を混ぜる時にはこれを使ってるぜ?ちゃんとしっかり洗っているから安心しな」
と、差し出されたのは小枝を何本も束ねて均一の長さに揃えた、茶道で使う茶筅のような形状のもの。『泡立てるための道具』という考え方そのものは14世紀(中世後期)にはあったようだが、今のような形の泡立て器になるのは近世に入ってからで、比較的丈夫な小枝を束ねたものを使っていたそうだ。
「ここからは力がいる作業になるよね?ボクが混ぜよう」
原始的な泡立て器を受け取ると、かしゃかしゃと小気味好い音を立てながら丁寧に混ぜる。潰れた卵黄は形を失うと黄色い液体へと姿を変えた。
「次に、掻き混ぜながらゆっくりと植物油を加える、と」
「はいはーい!!ルナティちゃんがやりたいでーす!!」
「一気に植物油を入れると失敗の原因となるので、ゆっくり入れることを心掛けましょう」
「……ということなので、ここはわたしがやりますねー。ルナティさんには味見をさせてあげますので、少し待っていてください」
「分かったよ。ここは譲ってしんぜよう。じゅるり」
マヨネーズを作るのにおいて最も重要な作業は、仲の悪い者同士を例える表現にも用いられる「水と油」を混ぜ合わせることにある。マヨネーズ作りにおいては「水」が酢で「油」が植物油だ。この二つを卵黄を使って混ぜ合わせることで乳化させ、白色のマヨネーズへと変化させる。
「凄い……っ!黄色かった液体がドロっとした白色に変化した!何だかちょっとエッチだねえ♡」
手作りのマヨネーズは市販のものとは違い、少しドロっとした感じになる。勿論、混ぜる材料や量によって違ってくるため、一概に全てがそうとは言えないが。
「植物油を全て混ぜ終わったら完成、っと」
最後の植物油がボウルの中へと滴下。白い液体と混ざり合って、遂にマヨネーズが完成した。
「なろう」にてブックマークが一件増えました!!ブックマークしてくださった方ありがとうございます!!
最近急に涼しくなりました!
藤井は極端に暑いか極端に寒くないと眠れないので、「ちょっと涼しい」とか「ちょっと温かい」くらいの気温が一番苦手だったりします。
と、いうのも、藤井は寝ている間に全く動かないのか、布団を着て寝ると一度もどけないまま朝を迎えます。「ちょっと涼しい」だと暑くなり、「ちょっと暑い」だと暑くなります。
そして、抱き枕を抱いて寝ているので、布団を被らないと「ちょっと涼しい」だと背中側だけ寒く、「ちょっと暑い」だと暑くなります。厄介ですね!寒暖差のせいで上手く眠れなくて、とっても眠いです!!
ではまた!これからもよろしくお願いします!!




