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第36話:パーティバトル

 パーティバトル。

 それは、四対四を基本としたvP方式(対人戦)の基本形態を指す。


 ギルド同士で行われることが多く、平たく言ってしまえば冒険者同士の決闘。諍いを収めるための一つの解決手段である。


「まずはお前たちの素性を名乗ってもらおうか」


 黒いローブの暗殺者(アサシン)の近くに潜んでいたらしい。板金鎧(プレートメイル)を着た騎士(ナイト)が先頭に立って荒々しく吐き捨てる。


「えと。ステータスってそう簡単に明かしていいものなの?」


 戦場で悠長に名前を名乗るのは何だか少し間抜けに見えるかもしれないが、名乗り口上と言って、アジア・ヨーロッパ圏にかかわらず古くから行われている決闘・戦争前の様式美のようなものだ。

 戦争に携わった人間が誰で、誰に討ち取られて誰が死んだのかを証言する目撃者を増やす意図や、これによって誰と誰が戦っているのかを敵味方に分かりやすくする意味合いもあるという。


 どうやらこの異世界にも名乗り口上の文化はあるようなので、右腕に嵌めた魔証石(ましょうせき)に触れてステータスウインドウを中空に表示させる。



●名前……エリカ

●性別……女

●年齢……25歳

●種族……人間

●所属……なし

●役職……魔法使い(マジシャン)

●スキル……【マジックマスター】(LSランク)、【テイム・神】(LSランク)

●レベル……100(LSランク)

●最大HP……13,875(LSランク)

●最大MP……5,616(LSランク)

●物理攻撃力……2,933(LSランク)

●魔法攻撃力……2,881(LSランク)

●物理防御力……2,892(LSランク)

●魔法防御力……2,916(LSランク)

●敏捷……1,755(LSランク)

●幸運……714(LSランク)

◇OP――――――――――――

 なし

◇バフ―――――――――――

 なし

◇デバフ――――――――――

 なし

◇状態異常―――――――――

 なし



「れ、LS(レジェンドエス)ランクだと…………?!」


 普通、LSランクの冒険者となると国のお抱え組織みたいな意味合いが強く、表の社会に出てくることは滅多にない幻のような存在であるため、前衛に立つ騎士が息を吞む。


「おいセロイ。随分と身の丈に合わない女を選んでくれたな?」

「ふっ。ステータスをよく見ろ」


 虚勢なのか何なのかは分からないが、口角を歪めながらセロイと呼ばれた暗殺者は言葉を続ける。


「あの女は何処にも所属していないじゃないか。つまり、他の二人も恐らく無所属。FF(フレンドリーファイア)による自滅も期待できるのではないか?」

「なるほど。一理あるな」


 納得するかのように言葉を漏らす。


 フレンドリーファイアとは、前衛に立つ味方に後衛の攻撃が当たることによる被弾を指す。

 同じギルドに入っているメンバー同士であれば発生しない現象なのだが、絵理華たちはまだパーティが組めていない(公的には)無所属の集まり。互いの攻撃が互いを巻き込む危険な状態なのだ。


「ねえ。こっちが名乗ったんならそっちも名乗んないと不公平じゃない?まさか、こっちの手札だけ明かしたままでバトル開始!なんていう卑怯な真似はしないよね?」


 先述の通り、名乗り口上とは目撃者を増やすための形式美。周囲には争いを見物しようと足を止めた通行人が出現し、ことの成り行きを見守っている。


「いいだろう。相手が格上であっても倒せばいいだけの話」


 右耳にだけ吊るされた魔証石のイアリングを指で抓むようにして触れると、騎士(ナイト)のステータスが浮かび上がる。



●名前……ゾーゴン

●性別……男

●年齢……27歳

●種族……人間

●所属……『荒涼』

●役職……騎士(ナイト)

●スキル……【大地の剣技・真】(Sランク)・【騎士の誇り・極】(SSランク)

●レベル……58(Sランク)

●最大HP……8,018(SSランク)

●最大MP……1,715(Bランク)

●物理攻撃力……913(Bランク)

●魔法攻撃力……377(Cランク)

●物理防御力……1,756(Sランク)

●魔法防御力……1,782(Sランク)

●敏捷……430(Bランク)

●幸運……131(Bランク)

◇OP――――――――――――

●最大HP+15%

●最大HP+15%

●クリティカル耐性+150

●クリティカル耐性+150

◇バフ―――――――――――

 なし

◇デバフ――――――――――

 なし

◇状態異常―――――――――

 なし



「Sランクなんだあ…………」


 相手は2ランク格下。

 てっきりもっと強い相手かと思って身構えてしまったが、どうやらそうでもないらしい。


「約束通り名乗ったぞ。さて、始めようじゃないか」


 ゾーゴンから目を離さないまま状況を整理する。


 まず、相手は前衛2人・後衛2人のちゃんとしたパーティのようで、後ろには魔法使い(マジシャン)っぽい見た目をした女性と、神官(プリースト)のような見た目をした女性もいる。MMORPGのようなゲームをやったことがない絵理華には知る由もないが、もし役職(クラス)通りに暗殺者(アサシン)がサブディーラー|(バッファー・デバッファーなどの味方の補助・相手の妨害するポジションの総称)で魔法使い(マジシャン)DD(ダメージディーラー)とするならば、タンク1・DD1・サブディーラー1・ヒーラー1という、最もバランスが取れたパーティ構成となっている。


 そして、一番の問題となるのは戦力の差。

 相手はSランクの冒険者四人のパーティであるのに対し、こちらはLSランク二人とCランクのセレン。実質2VS4なうえにセレンを庇いながら戦わなければならない。


 さらに問題となるのがFF。

 正式にギルドを立ち上げて加入したわけではないので、味方を魔法で巻き込んでしまったり、敵を倒そうとして背中を撃ってしまう危険があるため、魔法を使うのであれば細心の注意を払わなければならない。


(どうすればいい……?)


 最悪ルナティに回復を一任して物理攻撃で押し切る手もあるのだが、物理に特化したスキルを使えないため、本当に単純な物理火力のみで攻めることになる。果たしてそれが可能か否か。



 試合運びが一切読めないままPvPが幕を下ろす。

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