第28話:超癒し系少女ルナティちゃん☆
「男はいないのか男はっ!!」
丈の短い黒のコルセットスカートに、ピンク色に染められて袖の部分がばっさりと切られた絹製の男性用上衣という、奇抜なスタイルをしたウサ耳少女は腕を振り上げると怒りを顕わにする。
「男がいないなら興味はねぇ!ルナティちゃんのことは見なかったことにして、さっさと何処かへ行きやがれい!!」
「なっ?!倒れているあなたを助けようとしたんじゃないですか!?」
「この通りルナティちゃんはピンピンしているし、女の子を愛する気はないのだ!ほら行った行った」
助けようとしていたのに何故煙たがられているのか。獣人少女が疎ましそうに眼を細める。
「……男性に会いたいの?」
「そう!ルナティちゃんは助けてくれる男性を求めて世界各地のダンジョンで行き倒れを装って倒れているのだけれど、一向にいい男性に出逢えないのだよー!ダンジョンで出逢いを求めるのは間違っているのだろうか!?」
「会わせてあげられなくもないけど?」
ぴしり。
大仰な演技めいた動きをしていた獣人少女の動きが急に止まる。
「……今なんて?」
「『アルミラージの集会所』っていう宿に仲間と一緒に住んでいるんだけど、そこに男が六人ほど」
「詳しく聞かせていただこう!!」
一瞬のうちに近づくと、右手をがっしりと握る。
「国と都市名を教えていただければそこまで一人で向かいます!!ぜひ詳細を教えていただきたく存じます!!」
「一つだけ条件を提示してもいい?」
「「死ね」と「女同士で結婚しろ」以外なら何なりと!!」
「私の仲間になってくれないかな?」
うーん、と腕を組んで独り言ちる。
「ルナティちゃんはみんなの歌姫であって誰かが独占していいものじゃないんだよねえ。でも、この娘についていけば男が六人。ルナティちゃんが理想とする、ちょっと頼りないけどピンチの時には身体を張って助けてくれる系男子がいるかもしれないし……」
屈強な北欧神話系男子(+ガルシャ)には、そんなタイプの男は存在しないのだが、ここは黙っておこう。静かに獣人少女の判断を見守る二人。
誰も通らないことをいいことに道の真ん中でうんうん唸りながら考え抜いた結果、
「分っかりました!!このルナティちゃん、あなたとコンビにファミリアメイトになっちゃうぞ☆」
「familiar」には「馴れ馴れしい」、「mate」には「仲間」という意味があるのだが、知ってか知らずか握った手を上下にぶんぶん振り回す。
「みんなの歌姫・超癒し系少女ルナティちゃんだよ☆。今後もよろしくねっ!!」
「私が絵理華であっちの娘がセレン。よろしく」
「さて、仲間になったということは、エリポンがファン2号で、セレセレがファン3号だね!!いやあ、ファンができてルナティちゃん嬉しいな!!」
「えっ?!わたしたちがファン2号と3号なんですか?!じゃあ1号は?」
「ルナティ本人だよね?」
「おっ?!詳しいね?」
ウサ耳獣人が驚いた顔をする。
「私が住んでいた世界にも同じような文化があったからね」
「ほほう。別の世界からやって来た住民ですかー。なかなか凝った設定ですなー!」
言葉の通りなのだが、別世界からの転移者であることを大っぴらにする意味もないので、『そういうキャラクター』ということにして話を進める。
「それで、仲間になったことだし、早速ルナティのステータスを知りたいんだけど」
「いゃん♡。ステータスって年齢が表示されちゃうじゃん?ルナティちゃんの年齢が分かっちゃうじゃん?!もしかしてルナティちゃんピンチ!?」
少し大きめの胸を抱き寄せるようにして恥ずかしそうに言い淀む。
「破られてしまうのか!?ルナティちゃんの永遠の17歳の秘密が今、破られてしまうのかっ!?」
「……見せたくないなら別にいいんだけど?他を当たるから」
「ごめんなさいごめんなさい今すぐ表示しますう!!」
右手の中指に嵌められた指輪状の魔証石に優しく触れると、空中にステータスが表示される。
●名前……ルナティ
●性別……女
●年齢……非公開
●種族……獣人(兎型)
●所属……なし
●役職……なし
●スキル……【爆炎の才・真】(SSランク)、【女神の天啓・神】(LSランク)
●レベル……92(LSランク)
●最大HP……12,235(LSランク)
●最大MP……5,436(LSランク)
●物理攻撃力……1,009(Aランク)
●魔法攻撃力……2,271(SSランク)
●物理防御力……2,356(SSランク)
●魔法防御力……2,318(SSランク)
●敏捷……1,055(Sランク)
●幸運……140(Bランク)
◇OP――――――――――――
●自動HP回復+2%
●自動HP回復+2%
●自動MP回復+2%
●自動MP回復+2%
◇バフ―――――――――――
なし
◇デバフ――――――――――
なし
◇状態異常―――――――――
なし
「年齢が非公開になっているじゃないですか?!あんなに逡巡していた意味は何だったんですか?!」
「ふふふのふー。だから前置きしておいたでしょ?「永遠の17歳の秘密が破られるのか」って!これでこそエンターテイメントだよ☆。キュルン☆」
「くっ!わたしに圧倒的な攻撃力があれば一発くらい殴ってやるのにっ!己の非力さが惜しい!!」
「LSランクなんだね……」
「よくぞお気づきで!!」
ぴょんぴょんと兎のように跳ね回る。
「ダンジョンで出逢いを求めて単騎で潜り続けるうちに、いつの間にかレベル92のLSランクまで到達してしまっていたのだよ!いやあまさか、理想の男性よりもモンスターの方が多く出逢うとはねー」
「出逢いを求める場所を変えた方がいいんじゃないですかね……」
「否っ!!ルナティちゃんは背中を向けて守ってくれる系男子に遭遇するまでは、ダンジョンに潜り続けなければならないのだーっ!!」
理想の男性を探すのであれば、ダンジョンに潜るよりも各地を旅して周った方が効率がいい気がするが、確かに身を挺して守ってくれるような男はダンジョンにしかいないのかもしれない。しかし、LSランクのヒーラーを守れるような男など、本当に存在するのだろうか。
とにかく、一行は新しい仲間を加えてグリフォンに占拠された坑道へと向かうのだった。




