第22話:カミサマTV
「随分とあっさり通っちゃいましたね……」
「私も予想外だったよ……」
のしのしと歩くフェンリルの背中に揺られながら、隣に乗るセレンと会話する。
狭い小路を通ってドリード村に到着。『動物園』そのものを解説するところからスタートして様々な説明を行った結果、一瞬も迷う素振りを見せることなくあっさりと領主から許可が出た。
領主が税収を手にする主な方法は、人頭税|(赤子から老人まで一人一人にかかる税金)、土地税|(土地にかかる税金。その土地で取れた農作物かお金で一定の額を支払う)、死亡税|(領民が死ぬと発生。主に死亡者が所有していた家畜などの動産を徴収)、通行税なのだが、住民が少ないことから人頭税による収入は少なく、誰も村に来ないことから通行税はほぼ徴収できない。死亡税はロバなどが献上されることにより金銭になることが少ないため、税収が少なくて困っていたのだという。
さらに、領主とゴロド国王の間には忠誠と保護の関係があるはずなのだが、国王は村にモンスターが出没しても冒険者を派遣して村を守ってくれず、上下関係が事実上破綻。金銭的な援助も軍事的な援助も行われず、ゴロド王国からは『守るような価値もない』という烙印を押され、実質的に切り離された集落なのだそうだ。
「もし動物園が大盛況になれば、その動物園を目指して人の流入が増えて、通行税の税収が増えたり、市場にお金を落としてくれるようになりますからね。領主さんは動物園の設営による経済効果を狙っているのでしょう」
「村の人々が何人か動物園に来てくれるみたいだし、いよいよ準備が忙しくなりそうだね」
何となしに空を見上げる。
ナグナロクを完全に終わらせてスコルとハティから太陽と月を吐き出させたため、上空には燦々と太陽が輝いているが、前後の道を除く全てが背の高い森林に覆われているため陽光が差し込まず、昼でも薄暗くなっている。
「……この路も整備した方がいいのかな?」
「その方がいいと思いますが、こういうのは魔法を使ってやるよりも、ちゃんとした業者に任せた方が早いような気がします。ある程度の収入と来園者数が見込めるようになってから、きっちりお金を払ってやるのがいいのではないでしょうか?」
動物との豊かなスローライフをテーマにしたゲームをやりこんでいた癖か、こういう路を見ると煉瓦で通路を敷きたくなってしまう。あのゲームではヘルメットを被ってペイント感覚で塗ったり剝がしたりできたものだが、この世界はゲームっぽさはあるけどゲームではないのだ。
「こう、煉瓦を簡単に敷設できる魔法とかないの?『レンガシケール』みたいな」
「青い猫型ロボットがポケットから出しそうな名前ですね?!残念ながら、そんな都合のいい魔法はありませんっ!」
「……そういえば、セレンって日本の漫画やアニメにやたら詳しいよね?私がアルミラージにルミ子って名前を付けた時にも、「漫画家みたいな名前」って言ってたし」
「ぎくっ!」
何かやましいことでもあるのか目線を逸らす。
「……人間の営みを天界から観察するのも神様の仕事ですからね!?人間の文化についての知識があってもおかしくないですよね!?」
「イスガワさんは普段はトラック運転手として人間界で働いているんだっけ?人間界の情報はイスガワさんから聞いてたってこと?」
「そうです!!」
イスガワとは、絵理華をトラックで轢き殺そうとしていた男だ。
天界の命令でトラックを使って対象を殺し、異世界に転生・転移させる仕事を請け負っている。
ちなみに、主人公がトラックに轢かれて死ぬ作品のほとんどは、この男が運転するトラックなのだそうだ。異世界転生・転移する作品のほとんどで主人公を殺した後にトラックの運転手がどうなったのかが描かれないのは、イスガワが関わっていることが天界のトップシークレットだからだということらしい。
「イスガワさんは人間界の流行り廃れに詳しいので、天界に戻ったイスガワさんからよく聞いていたんですよ!!」
若干焦った様子で取り繕おうとするセレンに対して、
「えっ?『カミサマTV』を観てたからじゃねぇの?」
ドリード村から『アルミラージの集会所』までそれほど離れていないため『ワープ』を使ってまで戻る必要はないと思ったのか、フェンリルの銀色の体毛に背中を預けながらトールが鮸膠もなく言い放つ。
「『カミサマTV』?」
「オレ様やアース神族の連中は馴染まなかったから全然使ってなかったけど、『カミサマTV』って言って、カミサマパワーを使うと人間界の様子が観られるようになる『てれび』とかいうやつがあるんだぜ」
「あれ?だったらゼロストが管理するこの異世界の事情について、もう少し詳しくてもいいはずだよね?にしては何だか疎くない?」
異世界の到着直後にラグナロクが起こるのだと知っていたら、何らかの準備や覚悟をしたり、ラグナロクが起こる時間軸よりもさらに前や後の時代に転生することだってできたはずだ。そこら辺の事情を詰問してみると、
「だって、剣や魔法を使う中世ヨーロッパ風の世界観って、ゲームの世界みたいじゃないですか?それよりも遥かに文明が発達した絵理華さんの世界の様子を覗いていた方が面白いですし……」
こう反論した。
「……一応聞いておくけど、セレンってこの世界を管理しているゼロスト様の補佐をしている女神様なんだよね?」
「その通りです!『ゼロストの右腕』と呼ばれるほどに優秀な女神なんですよ?自分で言うのも何ですけど!」
「じゃあさ、どうしてこの世界の事情が分からなかったわけ?」
「それはラグナロクが起きるってことが、わたしにも分かんなかったからですよ!!」
眉根を吊り上げる。
「こちらの世界にわたしたちを送ったのはゼロスト様なんですから、これ以上はゼロスト様の過失です!わたしに文句を言うのはお門違いですよ!!」
「じゃあ、どうしてこんなタイミングで私たちを送り込んだんだろ?」
「神様ってのは案外気まぐれだからな。そこら辺の都合は本人にしか分かんねぇよ」
樹々に覆われた暗い空を見ながらトールは言葉を発する。
例えばギリシア神話に登場する火の神・プロメテウスは、主神ゼウスが止めるのを振り切って人間界へと降り、人間たちに火を使った技術を伝授している。
これによって人間は火を使った武器などを開発して戦争をするようになり、ゼウスの怒りを買った不死身のプロメテウスは、生きたまま何度も内臓を食われる磔刑に三万年間処されるのだが、プロメテウスの反逆とも言える行動がなければ、人間は地上を襲う猛吹雪によって絶滅していたとされている。
「もしかしたら、本当にただの気まぐれなのかもしれないよ」
何処かお道化た言い方をしながら茶化すロキ。
敵の勢力でありながらトールを助けたロキと、ゼウスに逆らって人類に炎を与えたプロメテウスは、神話の進行を大きく変える人物であることから『トリックスター』という名称で呼ばれることもあるようだが、そのことを本人は知らないようだ。
それほどの時間も要しないうちに『アルミラージの集会所』に到着する。
「なろう」の方にてブックマークが2件増え、昨日のpv数は228件!累計pv数が2,000を超えて順調?(ここまでpvが増えたことがなかったので、凄いという現実味がない)であります!!
発想力がクソザコなのか、最近ネタが尽きそう……。もう少しいろいろな作品を観て研鑽を重ねる時間が必要なんだろうな、と思いつつ、つい義務感に背中を押されて執筆を続けてしまうので、なかなか時間が確保できないという悪循環にいる気がします。
とにかく、応援してくださる皆様には感謝を!!




