33、私は行く気が失せます
引き続き胸の話ですが、成長しないと不安を感じるものです。同性に羨まれたり恨まれたりするほどの大きさではなくても構わないのですが、やはりいつかのことを考えると多少は欲しいと言いますか。他の部位は成長し少しずつ女性らしい体に変化しつつあるのになぜここだけ変わらないのでしょう。
全くもって腹立たしいですわ。この話をすると、無駄に大きいリーデアからは困ったような顔を向けられますし、ミラに話せば同士よ仲良くしようと言ってくるしで面倒この上ないですわ。なんですか、胸の大きさはそんなに人権ですか。はいはい、どうせ妹よりも成長が遅いですわよ。
未来を知っているシユウ様に一回尋ねたところ、ポカンとした顔で一回首を傾げ、すぐに納得した顔で今は気になくていい、例えどうだろうと何も変わらないんだからと、相変わらず何の役にも立たない答えが返ってきました。あの時ばかりは流石に私の表情も歪みましたわね。
まあ確かに十歳に求婚してくるシユウ様なら胸の大きさなど気にしないのかもしれませんが、どうも徹底的に未来の情報を秘匿している節がありますわね。未来がおかしな方向に捻じ曲がることを避けているからなのでしょうが、それくらいは教えても特に問題はないのでは。
もうやめましょうこの話は。私が自分の発育にコンプレックスを感じているかのようではありませんか。そんなことはないのです。大きかろうが小さかろうが生きていく上では何ら関わりがないのですから、そんなに気にすることではないのです。
確かにシユウ様にいい音のビンタを一発お見舞いしたことは事実ですが、あれももう半年近く前の話。今の私はもう色々と他に考えることがあるのでそんなどうでもいいことを気にしている暇などないのです。
「今回の参加者、具体的に分かりました?」
「そりゃもう、本部からきっちり連絡入ってるよ。貴族はまあ、特別気にしなくちゃいけない所は参加してこない。ただ、王族に関して言うなら七か国全部から集合することが決まってる。前回の懇親会が集まり悪かったからねえ。確か三か国からしか来なかったらしいから」
「ええ、話だけは聞いています。ロデウロ第一王子、ハージセッテ第一王女、ディレッタ第一王女だけしか集まらなかったとか。そこ以外はまだ年齢が適していなかったのでしたか?」
「そうそう。最低でも十一歳を超えてることが参加の最低条件だからね。その上で懇親会参加を望んだのがその三人しかいなかった。機関も少し焦ったらしいよ。歴史上初の少なさだったんだってさ」
「……なぜ十二歳じゃないのでしょうか?」
「憂鬱そうだねえ。妹ちゃんが参加するかもなんだっけ?」
「ええ。面白そうだから是非とも行きたいと、ここ最近その話しかしません。お母様が同日に他の用事を捻じ込もうとしていますが、それも成功するかどうか……。唯一の救いは、その年齢制限で弟は参加不可というところです」
「第一王子っていう泥船を信じ切ってる愚弟か。実際どうなんだろうね。同性から見ると王子って魅力的に見えるものなのかな? 自由と言うか奔放と言うか、そういう生き方を羨ましく思ったりするのかな」
「さあ? アレクが何を考えているのかなんてどうでもいいですわ。興味もありませんし」
どうも弟も騒いでいるらしいですわ。私は基本、弟と会う可能性のある日は何らかの都合をつけて会わないように動いているのでここ最近のあの子を全く知りませんが、王子が行くなら僕も行くなどと喚いて両親を困らせているらしいのです。もっと困らせてやりなさい。
どうせ規則で参加は出来ないのです。だったら好きなだけ騒いで両親を困らせてやりなさいと思ってしまうあたり、私自身相当追い詰められていますわね。どうしたら王子の醜態を晒さずに済むかと考えている時間がここ最近多すぎます。いっそのこともう参加しないでくれないでしょうか。誰も得しないんですから。
「特に気を付けた方がいい王族とかいます? 流石に私では、個人の具体的な性格までは知ることが出来ないので貴女に聞くしかないのですよね。まあ、うちの王子以上に厄介なものなどいるとは思えませんが」
「いや、いないこともないよ」
「は?」
「私も実際に遭ったことはないから全部人伝に聞いた情報でしかないんだけど、機関本部からの情報だし、それなりの信憑性はあるはず。それによると、個性的な王族の中でとびきりに厄介なのが今年は一人いる」
「やっぱりいいです。訊いておいてなんですが聞きたくありません」
「なるべく近付かないようにしようとか考えてるかもだけど、多分無理だよ。だって前代未聞のナンパ男だって話だし、アンナくらい美人で将来性がある容姿してたら絶対声かけられるから」
「……どこの国の屑ですの?」
「屑て。まあ、髪の色が目立つからきっとすぐに分かるよ。セルムの王子。赤色の髪を持つセルムの第二王子は、初対面の少女にプロポーズをするんだってさ。運命の出会いだ、とか言ってね」
初対面の少女にプロポーズ。そんなことをした第二王子を、不運にも私はもう一人知っていました。




