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ビューティー・オーク  ~ オークになった美容外科医、世界を変える ~  作者: 香坂 蓮
ホームステイ先のファミリーが、全員ブタだったら焦るよな……?
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~ 第四話  アルトの探し物 ~

よろしくお願いします!


では、どうぞっ!

 夜の森は危険だ。


 オークは夜行性ではないので、夜目はそんなにきかない。全く見えないわけではないが、それでも昼間に比べると視野は狭い。良い豚は、早めに寝るんだよ。


 それでも、今回は行き先が森の浅い方だから問題はない。これが深い方に向かうのなら、かなり危険なところだからな。……魑魅魍魎がいるとの噂だぜ? 肝試しだけは勘弁してほしいところだな。


 場所はだいたい聞いてある。多分この辺りだ。


 ……おっ、あった。


 さすがに時間が経ちすぎてたか。まぁ、こればかりは仕方ないな。


………

……


『ぶごぶが』 (ただいまー)


『ぶふ、ぷぎゅう。ぶぎゃぶごー』 (あっ、アルト。おかえりー)


 すまんなアルミン。眠たいところをよく頑張ってくれた。……ナディア、爆睡じゃねぇか。ってか、家主はどこに行ったんだ、グレゴール! ……まぁ普通に考えたらアルミンの家にいるか。


――すこし、いいかな?


 サリーちゃんに呼びかけて、家の外に出てもらう。そこには、俺の先ほどのお出かけの成果が並んでいた。


「……っ! これはっ!」


 剣やマント、そして防具。全て、彼女の仲間の遺品だ。残念ながら、ほとんどの品が壊れてしまっている。


 魔法を使うための道具っぽい物もあったんだけど、下手に触って爆発とかしたら怖いから触れなかった。……許してくだせぇ。


 ちなみに、遺体は回収していない。


 オークのパワーで吹き飛ばされたうえに、森に長時間放置されていたんだ。あとは想像してくれ。一応埋めておいたから、成仏してくれるといいな。


「ハロルド! ルーシー! ジャック! ステファン! ……ごめんな。俺だけ生き残って……ゴメンな!」


 仲間の遺品と対面するサリーちゃん。悲劇的な場面を邪魔するかのように、その身体はツタで縛られている。この無粋なツタこそが、今のオークと人間との距離感を表しているように、俺には思える。


 サリーちゃんの叫び声を聞いて何事かと出て来た何人かのオークが、状況を察して静かに自分の家へと帰っていく。小さな黙礼と共に。


 仲間が死ぬということ。その悲しみに、種族なんて関係ない。俺も、亡くなった四人の人間に対して黙祷を捧げた。



「アルト、さん……でいいのか?」


――よびすてでいいよ。


 この子に丁寧な言葉遣いは似合わない。無理して使ってるのが丸わかりだ。


「助かる。それから……ありがとう。本当に、感謝します」


 縛られたまま、サリーちゃんは深々と頭を下げた。その感謝を俺は受け取った。


「それから……オークを殺そうとして、すまなかった。言い訳になるけど、知らなかったんだ。オークがこんな……俺たちみたいに言葉を使えるなんて」


 リリーちゃんと交流を深めながら、徐々にオークが人間と共存出来るということを浸透させていく。それは、逆に言えば、オークに理性があるという事実が浸透するまでに時間がかかるということだ。急に言って、信じて貰えるような話でもないしな。


 仕方のない事だ。だけど、仕方ないで済ませてはいけないことでもある。現に命が失われているのだから。


 だから俺は、「知らなかったんだから、仕方ないよ」という慰めの文を書くことをしない。してはいけないと言い聞かせた。


――おーくは、にんげんをおそわない。


――たたかうのは、おそわれたときだけ。


――かえったら、それをひろめてほしい。


 俺の書く文字を読んだサリーちゃんが、驚いたような顔を浮かべる。


「俺を……帰してくれるのか? ほんとに殺さないのか?」


『ぶひょぶが』 (そりゃそうでしょ)


 思わず声が出ちゃったよ! なんでこの状況で、こっから殺しちゃうんだよ! 殺すならとっくに殺してるわ! 


 だいたい残酷すぎるだろ! わざわざ遺品を取りに行って、希望を持たせてから殺すなんて、俺は鬼畜か? せめて家畜にしてくれ!


 まぁでも、タダで帰すわけにはいかない。俺は悪い豚さんだからな。


――さんしゅうかん。ここにいてもらう。


「……三週間?」


 そう、三週間。


 なぜ、三週間なのかって? 簡単だ。だいたい三週間後、またリリーちゃんに会うからだ。


 別にこのまま帰しちゃってもいいかなって気もするんだけどさ? やっぱり、報告・連絡・相談は大事だなって思うわけよ、元日本人として。……まぁ、リリーちゃんは上司じゃないけどな。


 あと、保険を掛けているという面も正直ある。


 この様子だと、人里に帰ってから好き勝手なことを言うとも思えないけど、万が一ということもある。野蛮なオークから、命からがら逃げてきました、とかな。人間と仲良くしようとしている今、そんなことをされるのはキツイ。


 だけど、貴族の娘であるリリーちゃんに直接引き合わせて、事情を説明すれば、変な事をする可能性はより一層少なくなるだろう。……やれやれ、人を疑うって、しんどいね。


――にげないとやくそくしてほしい。


――そうすれば、なわをほどく。


――にげようとしたら、つかまえる。


 三週間、ずっと縛りっぱなしってのもかわいそうだ。トイレとかご飯、困るだろうし。


 しっかり見張っておけば、逃げられることもないはず。……ただ、小回りは人間の方がきくから、森には逃げ込まれたくないところだな。うーん…三週間、気が休まらねぇな、これは。


 その後、絶対に逃げないことを約束したサリーちゃんの縄をほどいてあげた。


 自己申告でジャケットの内側に隠してあった何本ものナイフを提出してくれたくらいだから、危険度はそんなに高くはないと思う。


 まぁでも、一応明日からは交代制での見張りだな。……とりあえず、今日はまた完徹だよ。俺は豚だぜ? 二十四時間は戦えねぇっての。


>俺は鬼畜か? せめて家畜にしてくれ!


本編のこの言い回しが、個人的に気に入っています(笑)


さて、ここから山場を迎える拙作。ベースがシリアスなお話になってきます。アルト君のコメディチックな部分でシリアスさを上手く緩和しつつも、緊張感を消し過ぎないようにできれば、と考えています。


是非、次話以降もお付き合いください。


香坂連でしたー。

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