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ビューティー・オーク  ~ オークになった美容外科医、世界を変える ~  作者: 香坂 蓮
リリーさん……あなたの護衛の犬について、話があるのです。
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~ 第七話  異種族混合座談会 ~

連休も終わっちゃいますね(´・ω・`)この小説で少しでも楽しんでいただけたら幸いです。


では、どうぞ!

 さて、俺たちの現在地なんだが、おそらく村のはずれにあたるところだと思う。一番森に近いような場所だしな。


 ただ、村の大きさとしては……かなり小さいんじゃなかろうか。まぁ、森のすぐ側にそんな大きな都市みたいなのは作らないか。なので、村の外れって感じはあまりしない。


 さて、そんな村の人達は今、何をしているか。……ものすごーく遠巻きに、俺たちのことを見ている。


 うん、ビビられてるよね。おばあちゃんとか、なにかに祈ってるじゃん。日本で言うところの『くわばら、くわばら』みたいな感じだろ、あれ。獲って食やしねぇよ。年寄りは大事にするぜ? なんなら席譲ろうか? 


 うーむ……下手に近寄ったら間違いなく怖がられるし。そうなったら、俺の奥義である『文字を書く』が使えないわけで……。詰んだな! ここはリリーちゃん達に丸投げしよう。


「村長さん! 少しよろしいですか?」


 そんな俺の雰囲気を察してくれたのか、リリーちゃんが村長を呼ぶ。呼ばれた村長は、「マジかよ!? なんで儂なんじゃぁ!?」みたいな断末魔の表情をしている。


 ……じいさん。なんでってそりゃ、あんたがこの村の村長だからだろうよ。諦めろ。南無ー。……いや、俺たちは殺さないよ?


「村長さん。こちら、アルトさんとグレゴールさんです」


「ははぁ……。儂はこの村で村長をやらせてもらっている者ですじゃ。どうか、どうか穏便に頼みますじゃ」


 じいさん……そこまで怯えを前面に出しちゃ、低姿勢の意味が無いぜ? 相手によっちゃ却って怒るぞ、その態度じゃ。俺はな、敬老精神はあるが、言うべきことは言う豚なんだ。言葉通じないけどな。


「それで、村長さん。……やはり、村の中に招待することは難しいですか?」


「リリー様……どうか、ご勘弁ください。儂らのような愚かな民どもにとっては、やはりオークは恐ろしいのです」


 なんと!? じいさん、ノーが言えるじいさんだったのか! 絶対にイエスマンだと思ってたよ。見直したぜ、村長!


「分かりました。それでは、今いるこの場所をお借りして、アルトさん達とお話をすることは可能ですか?」


「はい。このような外れた場所で申し訳ありませんが、ここならお好きに使ってくだせぇ」


 深々と、それはもう深々と頭を下げる村長。村人のため、貴族の娘にすらノーを言えるその精神。漢だぜ、村長。



 青空の下、異種族による座談会が始まった。


 参加する種族は、人、犬、そして豚。


 といっても、犬であるジョンさんはハリソンさん同様リリーちゃんの後ろに控えている形だから、あまり喋ることは無いんだろうなぁって感じだ。現に、今のところは一言も発していない。


「そうだ! アルトさん。お約束のモノをお持ちしました」


 そう言ってリリーちゃんが、ボインなメイドのアガサちゃんから受け取ったのは、数冊のやたらと大きな本。ありがたく頂戴する。


 おぉっ、割としっかりしている。紙の質も良い。さすがにカラーではないけれど、充分すぎるクオリティーだ。


「そちらが、この国で使われている言葉を学ぶための教本です。その……子供向けの内容で大変申し訳ないんですが」


 無・問・題!


 むしろ、これくらい簡単なやつから始めないと出来る気がしない。何事も、基礎が一番大事なのだよ! なっ!グレゴール! ……悪かったよ、急に見てゴメンって。そんなにビックリするなよ。


 パラパラっと見た感じ、一冊目は、図鑑みたいな感じだな。リンゴの絵の横に、『リンゴ』って書いてあるような感じだ。単語を覚えるにはちょうどいい感じ。


 にしてもこの本……人間が読むにしてはデカすぎないか? 完全にオークサイズだぞ? 


 ってなわけで、質問タイムだ。


 まずは本を指で示し、それからリリーちゃんを指す。人を指さすのは良くないので、「どうぞどうぞ」って言う時のあの手の形だ。


 それから俺は、いそいそと地面に文字を書いていく。俺の頭の中にある、数少ない単語が火を噴くぜ!


――おおきい。


 あっ、ちなみに「小さい」も書けます。先生、僕、頑張ったでしょ?


 しばらく悩んだ後、リリーちゃんは俺が何を聞きたいのかにたどり着いた。


「あぁっ! この本の大きさですね? はい。この本は、本来のモノよりも大きいです。オークであるアルトさんが読みやすいように、大きなサイズのモノを急いで作っていただきました」


 ……ブルジョアジー。さすがは貴族様。だけど、その気遣いが嬉しいです。人間サイズだと、ページめくるのが大変だっただろうしね。


 とりあえず、お礼を言っておこう。胡坐をかいたまま、上半身だけ土下座の体勢をとる俺。


「頭をお上げください! アルトさん! この本は、私の顔を治してくれたことへのお礼の品なのです。なので気になさらないでください」


 その言葉に促されて頭を上げる俺。


 リリーちゃんは困ったような笑顔を浮かべている。


 そして、その後ろではハリソンさんとジョンさんの護衛コンビが、ビックリしたような顔をしていた。そりゃそうか、オークが急に頭を下げたらビックリもするよね。


 しばらくは、この本を使って言葉を勉強しよう。これで、新しい単語が覚えられるな! 希望者には、アルト先生が教えちゃうぜ? 一緒に勉強しようよ、森の仲間たち!


「ふふっ。喜んでもらえたみたいで、嬉しいです」


『ぶごぶぎゃ! ふがぶごぷぎょ、ぐごぶ』 (めっちゃ嬉しいよ! ありがとう、リリーちゃん)


 久々の本だから今すぐ読みたいところだけど、ここは我慢だ。今は、みんなとお話することが大事だよな!


………

……


 嬉しいことに、座談会はかなり盛り上がった。


 例えば、メアリーちゃんがにんまりしながら出してきた紙の束。こちらは人間サイズで小さかったが、そこに描かれていたものを見て俺はビックリした。


『ぶぎゃぁ!? ぶごふぎゃ!』 (すげぇ!? うまいじゃん!)


 言葉と一緒に、拍手を贈る。メアリーちゃんは照れくさそうだ。自慢したかったんだろうな、きっと。


 描かれていたのは、かつてメアリーちゃんがドはまりした、アメリカのアニメに登場する主人公のネコとネズミだった。再現率は高いし、アレンジが利いているような絵もある。


 この世界の文化レベルはまだよく分からないけど、どうやら紙は割と普及してるみたいだ。


 この紙だって、さっき貰った教科書に比べれば質は悪いけど、それでも紙としての機能は十分に果たしている。日本で言うところの、わらばん紙に近いかな。


 ……えっ? わらばん紙って今の若い子知らないの? 俺……おっさんなの? ……ぐすん。


 さっ、気を取り直していきましょう!


 紙が普通に使えて、絵がこんなに上手いんだったらさ、メアリーちゃん、絵本とか漫画が描けるんじゃね? ってなわけで、再びのジェスチャータイムだ。


 さっき貰った教科書を指す、メアリーちゃんを指す、そして何かを書いているジェスチャーをする。


「……っ!? 私が、本を書く、ということですか?」


 そうそう! 正解だよ、メアリーちゃん。


 前にメアリーちゃんがアニメを観ている時にさ、「娯楽が少ないのかなぁ」って感じたんだよね。メアリーちゃん、食い入るように観てたもん。


 そこで発想の転換だ。娯楽が無いなら、メアリーちゃんがその娯楽を作る立場になればいいんだよ。


「それはいいですね、メアリー。私も貴女が書いた本が読みたいです」


 そんなリリーちゃんの言葉にまんざらでもない表情を浮かべるメアリーちゃん。……これは、書くな。もしかすると、この世界に二次元の革命を起こしてしまうかもしれんぞ。


 とまぁ、こんな感じで盛り上がった座談会。最後に爆弾が待ってたんだよね。


 まだ先の事だってリリーちゃんは言ってたけど、それは衝撃的な提案だった。……リリーちゃん側の人達も驚いてたしな。


 それこそ、集落に持ち帰って皆に相談しなければいけないような、リリーちゃんからの提案。


「いつか……森に家を建てて、そこに一緒に住みませんか?」


 な? ビックリだろ?


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