表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/109

~ 第一話  イケメンオーク、夢をみる ~

お待たせしました。更新再開です!


それでは、どうぞっ!

 リリーちゃんの治療を終えて、村に帰った俺を待っていたのは、大量の豚による突撃だった。


『ぶ、ぶきゅうーっ!ぶごぷぎゃぶぎゃ!』 (アルトー! 生きててよかったよーっ!)


『ぷごふぎゃ、ぶがぷぎゃあ』 (帰ってこないから、死んじゃったかと思ったよ!)


『ぶぎゃぶごぶご、ぶぎゃふごぶご』 (人間達がすげぇピリピリしてるからさぁ、絶対やられたと思ったよ)


 砂煙を上げて迫りくる豚。……腰が抜けそうになっちまったよ。 

 いや、心配かけた俺が悪いよ? それに、みんな心配してくれてたんだ。すげぇ嬉しいよ?


 けどな?


 大量の、それも巨大な豚が、一斉に俺に向かって突進してくるんだぜ?


 ……この世の終わりかと思ったよ。マジで。

 

 その後、同年代のオーク達に抱きしめられ、親父にぶっ飛ばされ、年長組からは散々説教をされて、ようやく俺の集落への帰還は終了した。


……いやいや! 終わってる場合じゃねぇよ! ちゃんと、人間達が帰ったことを伝えないとな。


『ぶごー、ぶぎゃ!ぷぎゃ!』 (おーい、みんな! ちゅうもーくっ!)


 一斉に向けられる、つぶらな瞳。疑いを知らない、純粋な瞳。……オークってさ、よく見るとかわいいんだぜ? 肌は緑だけどな。


『ぶぎゃぷぎゃ?ぶご、ふぎゃぶがぶご』 (人間なんだけどさ?多分、森から引き揚げていくと思うぜ?)


 俺のその発言に、みんな一斉にブヒブヒと騒ぎ出した。そりゃそうだ。急に帰ったって言われても信用できないだろうしな。何があったんだー、ってな話よ。


『ぶごご、ぶぎゃぷごぶが? ぶがぶがぶご! ぷぎょぶおぶぎゃぶご』 

(森の中でさ、困ってた人間を助けたんだよね? そしたらその人間、なんと俺と喋れてさ! お願いしたら、森から帰ってくれるって)


 嘘は言ってない。

 現に、リリーちゃんもメアリーちゃんも、俺と喋れたもん。


 さて……こんな信じられないようなお話に対する、オークの皆さまのリアクションやいかに?


『ぶぎょが!? ぶきゅう、ぶごふご!』 (マジかよ!? アルト、よくやった!)


『ぶがぶ! ぶぎょぶごぷがふご!』 (すげぇ! 俺たちと喋れる人間がいるんだ!)


『ぶぎゃぷごぶこぶぎゃ!?』 (これで集落を捨てずに済むね!?)


 ……何も言うな。ピュアなんだよ、みんな。

 あと、俺が信頼されてるんだ。そういうことにしといてくれ。


 とりあえず、実は人間はみんなオークと喋れる、なんて変な勘違いをされないように、たまたま会った人間が特別な人だったんだと念を押しておく。


 ちなみに、唯一スキルの存在をしるアルミンなら、何かに気付くかもしれないと思ったんだが……。


『ぶがぶきゅう! ふがぶぎょぷきょ!』 (すごいねアルト! やっぱり頼りになるなぁ!)


 うん。お前はそのままでいてくれよ、アルミン。



 何日かして、森から人間が完全に帰ったことを確認して、今回の騒動はようやく終息した。色々あったけどさ?とりあえず無事に解決してよかったよ。


 ほっと一息をつく俺の目に、左指の真珠が映る。

 人間用のネックレスが指にしっかりとフィットしている状況だ。そして、留め金は当然、人間サイズだ。


 何が言いたいかって?


 外せないんだよ、オークの太い指じゃ! 外してどっかにしまっとこうと思ったのに! 気付かないうちに切れて、なくしちゃわないか、不安で不安で仕方ないんだよ。


 ただこの鎖、ちょっとやそっとじゃ切れそうにない。なにせオークの力で引っ張ってもちぎれなかったからな。きっと高い金属でも使ってるんだろ。


 ……左手の薬指に輝く真珠を見つめる豚。我ながら、ツッコミどころが多すぎるぜ。一応言っとくけど、俺は真珠の価値が分かる豚だからな!?


 でもさ、この真珠を見ると色々考えちまうな。


 ひとまずは教えてもらったこの世界の文字の復習でもするか。


 さすがにあの短期間で完璧にマスターは出来なかったけど、日本語で言うところの平仮名は全部覚えたんだぜ? あと、使えそうな単語をいくつか。例えばこんな文章だって書けちまう。


「オークは、人を襲いません」


「帰ってください」


 どうだ! この二つの文章が書ければ、人間にお帰り願うことも出来るだろ? 一発ぶん殴って戦意を喪失させたところで、ゆっくりと丁寧に地面に文字を書く。字が汚かったら読んでもらえないからな。


………

……


「まぁっ! オークって、字が書けたのね!? しかも丁寧な字! イケメン!」


『ぶごふご、ふぎゃぷぎゅ』 (当たり前ですよ、お嬢さん)


「素敵! 私、オークのこと、絶対殺さないって約束する!」


………

……


 ……完璧だ。これほどスマートな交渉術があるだろうか。


 この一歩は、人間にとっては小さな一歩かもしれないが、オークにとっては大きな一歩だ。コミュニケーションを取れる可能性が産まれたんだからな。


 先は長いけど、いつかは人と豚とが手を取り合って生きていける世界に繋がっていく……かもしれない。


 いいじゃねぇか。それくらいの夢を見たって。


 そりゃさ?俺だって現実は分かってるよ?


 リリーちゃんは、また会いに来ると言ってくれた。それは、すごく嬉しい。


 だけど、もう一度彼女に会うことは、おそらくないだろう。彼女は貴族の娘さんだ。そんな偉い人が、わざわざ危険なオークに会いに来ることを、周りが許すわけない。


 そしてそれは、別に貴族に限ったことじゃない。


 人間が人間で、オークがオークである以上、交わることは難しいんだよ。それは今まで生きて来た時間の中で嫌と言うほど思い知らされてきた。


 けどな? この指に真珠がついてる間は、少し夢を見ようと思ってるんだよ。今よりも良い未来っていう、夢をさ。


 ロマンがあっていいじゃねぇか。豚だって、夢を見るんだぜ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ