~ 第三話 進撃の人間 ~
最初の数行、アルト君が何を言っているのか分からない人は、前の話から続けて読んでみてねっ(^_-)-☆
……はい、すいません。ちゃんとします(´・ω・`)
では、どうぞ!
俺としたことが……やってしまった。心の声とはいえ、なぜあんな事を言ってしまったんだ。
――何もなければいいんだけどな。
全身鎧を着てるっぽい、変な人間が現れた日。オーク防衛会議(仮称)の最後に、俺は確かに心の中で言ってしまったんだ。この、フラグ丸出しなセリフを!フラグ万能主義の信者である俺にとって、あるまじき失態だ。
そう、ここまで言えば分かるよな? 『何もない』とはいかなかったんだよ。
鎧を着た人間の数は十数人に増え、魔法使いも同行するという戦力の充実っぷり。しかも、鎧の人間ってば超強い! 遠目から見た限りだが、今まで見た人間の中では圧倒的な武力を持っている感じだ。
そんな奴らが、どんどんと森の奥に進撃して来てるんだ。これは非常にまずい。まだ集落まで距離はあるものの、このままのペースで森を探索されればいつかは集落の場所がバレる。集落を移動するか否か……まさに今がその瀬戸際なんだ。
集落を移動する。デメリットは大きい。せっかく開拓した場所を捨てて、一からやり直すのだ。それはそれは労力がかかる。他の動物との縄張りの兼ね合いだってある。
しかも今回の場合、人間から逃げなければいけないため、移動するとすれば森の奥へと引っ越さなければいけない。それも、人間が足を踏み入れられないほど、奥までだ。
森の奥は……ヤバい。奥に行けば行くほど、とんでもない獣がいっぱい潜んでやがる。
オークを一噛みで殺すような毒を持つ虫。オークの肌すらも余裕で溶かす唾液を飛ばしてくる蛇。動くツタで動物を捕食してしまう植物。
はっきり言って、俺たちオークが住むには適さない場所だ。下手すりゃ集落を整える前に全滅も有り得る。
とはいえ、このままだと人間に集落の場所がバレる。大量の人間が一気に集落に襲って来れば、滅ぼされるのは俺たちだ。集落を焼き払われる可能性だって高い。
非常にまずい。詰んでるといってもいいかもしれない。
手段として考えつくのは、まだ人数が少ない今のうちに奇襲を仕掛けて、集落の位置がバレる前に殺してしまうことだ。
問題は、それをいつまで続けるのか。
どんどんと武装した人間を送り込まれ続けたら、かなり厳しい。しかもその場合、仲間を殺された人間は復讐心を持って森へやってくるだろう。
どちらかが滅びるまでの総力戦……そうなった場合、おそらく負けるのは俺たちだ。数が少ないからな。
はぁ……せめて文字が欲しい。人間が使っている文字、誰か教えてくれないかな? 文字さえ分かれば、木とかに彫っておくのに。『オークは無害ですよー』って。
万が一の可能性に賭けて日本語で! ……だめだよな、唯一の知り合いのメアリーちゃん、どう見ても日本人じゃなかったし。
あぁ、平和が恋しい。
野蛮な人間に狙われる、心優しきオーク。……絵面に説得力が全くないな、これ。
※
今日の俺の仕事は、森の浅い所での警戒だ。といっても、もはや『浅い』とは言えないところまで人間が侵食してきている。森の中に拠点まで構えるなんて、反則だろうよ?
さすがに人間の拠点の近くまでは寄れないが、遠くから実際に見たオークが言うには、かなりの数の人間がそこに居て、火を焚いて居座っていたらしい。
そんなことしてりゃあ、獣達からすりゃあ恰好の目印だ。それでも十分対処出来ると、人間たちは踏んでるんだろう。
にしても……おかしい点があるんだよな。……俺、名探偵っぽかったよな、今!? かっこよくない!?
……分かったよ、そんな目で見るなよ。
そのおかしい点っていうのは、今のところオークの犠牲者が一人もいないってことなんだ。それどころか、人間と戦闘になったオークすらいない。
鎧で武装した人間が森に現れてから、もうだいぶ日数が立つ。戦力的にも、戦えばタダでは済まないだろう。にもかかわらず、人間は俺たちを攻撃してこない。
もちろん、隠れてはいるぜ? だけど、俺たちオークは隠密には向かない種族だ。隠れているつもりでも、バレることの方が多い。実際、警戒中に人間に見つかったオークだって何人もいる。
だけど、攻撃してこないんだ。
普段なら、どれだけオークが遠くに居ようとも、矢なり魔法なりを撃って来る人間が、妙におとなしい。はっきり言って、不気味だ。
これが、他の動物に対してもこういう対応ならば、気持ちは悪いけどまだ納得が出来る。出来るだけ命を奪いたくないということなのだろう。……だったら森に入るなって話だけどな。
だが、あいつらは他の動物には容赦がない。オオカミ、クマ、ゴブリン……この手の動物は、見かけた瞬間に襲い掛かっているらしい。
狩りなのか? 食料調達とか?
でも、ゴブリンも狩ってるしな。さすがにゴブリンは喰わねえだろ。ってか、もしゴブリンを喰ってるなら、オークも喰うだろ。自分で言うのもなんだけど、豚肉じゃん。
まぁ、なんにせよ、襲われないってことはありがたい。とはいえこのまま放っておくわけにもいかない。困った。実に困った。
オークになって初めてだよ、ストレス社会を生きるのは。やっぱりあれだな。ストレスって、人間がもたらすものなんだな。




