~ 第二話 森に迫る、変な人間たち ~
合計で三十話目……頑張っていきましょう!
では、どうぞっ!
アルトはぁー、木を切るー。ぶぅぶぅぶうー、ぶぅぶぅぶうー。
思わず鼻歌も出るってもんよ。気分は演歌界の大御所だ。年末の予定、空いてますよ? カレンダーが無いから、年末がいつ来るのかが分からないけどな。
なぜ、俺がこんなにご機嫌なのかというと、手の中にある斧だ。素晴らしい!石を使った道具である。
これまでのオークが木を切る方法……それは、体当たりだ。
木に向かって突進! ブチかまし!弱った所をへし折る! ……切ってなくね? これ。折ってるよね? って感じだ。
かといって、同じ木で出来たこん棒を使うのは効率が悪い。こん棒って言っても、ただの持ちやすい太くて堅い枝だしな。
なぜここまで道具に対する概念が弱いのに、腰巻だけはクオリティが高いのか……オークの七不思議のひとつだ。
それはひとまず置いといて、石の斧だ。
斧と言っても、刃の部分はほとんどない。オークの技術とパワーで刃を作ろうとすれば、製作段階で石が割れてしまう。
また、運よく上手く作れたとしても、使用時にパワーに耐え切れず、一発で壊れてしまう。ほら、刃にしちゃうと薄くなるじゃん?
なので、少し形を整える程度だ。尖っている部分があれば、木に食い込むからな。
手頃なサイズの石……車のタイヤくらいのサイズを拾ってきて、他の石とこすり合わせて形を整える。それを、腰巻にも使う丈夫で太いツタを使って木の枝に固定すれば完成だ。
あとは……木に向かってそいつを叩きつける! 幹を粉砕したらミッションコンプリート。気分はいっぱしの木こりだな。
……切ってないじゃんって? 細かいことはいいんだよ! 斧っぽいものを使って木を倒す。それでいいじゃない。
………
……
…
木を伐り終え、ついでにちょっくら狩りをしてから集落に帰る。石の道具は、狩りの効率も劇的に向上させた。もはやクマ程度なら瞬殺さ。……ブラッディベアは例外な? あいつはもう嫌だ。
何を血迷ったのか襲い掛かってきた狼の頭を粉砕し、野生の割には太っている残念な鳥を投石で撃墜し、気分は絶好調だ。なにせほとんど労力がかかってないのだから。楽して儲ける……素敵やん?
ルンルン気分で集落へと戻ると、なにやら深刻なご様子。といっても、誰かがケガしたとかそういう雰囲気ではなさそうだ。おーい、どうしたんだ?
『ぶ、ぶきゅう、ぶごが』(あらアルト、おかえり)
優しく声をかけてくれたのはマイマザー。ちなみにダディはまだ帰ってないみたいだ。
会議っぽいことをしている輪の中に入れてもらうと、村豚Aが口を開いた。
『ぶごぶぎゃ、ぷがぶご』 (森の浅いところに、人間がいたんだ)
重々しく語り始めた村豚A。名前は……また今度な。この場だけでも村豚Gくらいまでいるから紹介してられないんだよ。
『ぶごぶぷぎゃ。ぶがぷがぶぅ?』 (そりゃ人間くらいいるだろ。別に珍しいことでもないべ?)
エセ方言、最初はツッコまれたんだよね。喋り方が変だって。今ではそういう奴だと認識されてるみたいだ。いいんか悪いんだか。
『ぶぶお……ぶぎゃぶがぷご! ぶがぶが!』 (それが……変な格好してたんだよ! いつもの人間じゃないんだ!)
変な格好? どんな格好だ?
……ビキニアーマーか!? ビキニアーマーなのか!?
おっと、取り乱したな。
でも、ロマンがあってもいいじゃない。魔法があるんだぜ?ビキニアーマーがあってもいいじゃない。漢のロマンだろ!
『ぶぎゃぷがぷぎゃ。ぶごぶごぶぶぅ!』 (全身がキンピカで。なんかガシャガシャしてるんだ!)
なるほど、なんとなく分かった。金色の翻訳ロボットでない限り、おそらく鎧だろうな。
でも、確かに珍しいな。全身がキンピカってことは、全身鎧だろ? 西洋風のあれでいいんだよな? 男のロマンじゃないか。……漢のロマンの方がよかったんだけどな。
森に入って来る、俺たちを見たら殺しにかかる物騒な人間は、わりと軽装備だ。だいたいは何かの皮で作られた防具をつけているし、金属を使ってたとしても身体の一部のみ、という感じだ。
そのチョイスは正解だと思う。全身金属の鎧となれば相当に重いだろうからな。
森の中で、動きが阻害される装備なんて最悪だぜ? いつどこから襲われるか分からないんだからな。何が起きても素早く反応出来る、それが森で生き残るための能力だ。
男は黙って腰巻一つ、女も黙って腰巻一つ。オークの装備、理に適ってるだろ?
『ぶごぶぎゃ?』 (何人くらいいたんだ?)
『ぶがぶ、ぶぶぷご』 (五人くらいだと思う)
五人か……少ないな。軍隊とかではないのか?
まさかコスプレ仲間ってわけじゃないだろうな?だとしたら命を懸けたコスプレだぞ?ってか、コスプレならビキニアーマー……もういいか。
楽観的に見るなら、装備のチョイスを間違ったおバカな仲間たちってところだ。放っておいたところですぐにやられてしまうだろう。
悲観的に考えるなら……なんだろう?
勇者とかか? そもそもそんな奴がいるのかすら分からんけど、この森のどこかにいる魔王を倒しに来た、とか。
……勇者よりも、近くに魔王が住んでることの方が怖いよな、それ。
とりあえず、しばらくは様子を見るということで話は落ち着きそうだ。変な人間は、今のところ森の浅いところにいるらしい。
集落の方まで来る気配が無ければ、俺たちとしては問題ない。警戒だけはするようにしようということで、話はまとまった。
何もなければいいんだけどな。




