~ 第一話 アルト、二年分の成長 ~
久しぶりの主人公です。いやぁ……書きやすい。筆が進んで、すこしはっちゃけちゃいました。
では、どうぞ!
久しぶりだなっ! 俺だよ、俺!
えっ? ……その手の詐欺には引っかからない?
オレオレ詐欺じゃねーよ! 振り込めるもんなら振り込んでみろ! 銀行に口座なんかつくれねーよ! 豚だからなっ!
冗談はおいといて……どうも! イケメンのアルトだ!
ん? なんで自分がイケメンだって分かったかって? こないだ言われたんだよ、女の子から。
――アルトって、イケメンなのにどうしてモテないんだろうね?
完璧だ。パーフェクトだ。イケメンでモテない……今の俺の理想だね。
負け惜しみじゃねーかって? バカ野郎、考えてみろ! 今、俺がモテるってことはな、豚から求婚されるってことなんだぞ?
そりゃあいい女だっているさ。前世では絶滅危惧種と言われていた、大和撫子のような心を持つ乙女だって普通に存在する。オーク女子の貞操観念、なめんなよ?
だけど……やっぱり俺は、オークは抱けないんだよっ!前世が……前世が俺の邪魔をする。
人は見た目じゃないと思ってきたさ。見た目なんか手術でいくらでも変えられるし、なにより俺自身が元ブサイクだ。見た目だけで全てを拒絶する哀しさを、俺は知っている。
だけど……やっぱり、種族の壁は越えられねぇよ。俺は……豚を愛することが出来ない豚なんだ。笑いたきゃ笑え!
……暗い話は性に合わないな、明るい話をしよう!
アルミンとナディア……無事に結婚できました!そして、とっても幸せな新婚生活を送っています。
いやぁ、めでたい、そして微笑ましい。子供はまだだけど、時間の問題だろうな。
どうやらオークは、人間に比べると子供が出来にくいらしい。
勝手な予想だが、排卵日の周期が長いんだろうな。精子の量が人間より少ないってことはなさそうだし。あと、生理中の雌オークを見たことが無い。生理用品も見たことないし。
ある意味、神様から与えられたハンデが大きい種族だよ、オークって。
妊娠しにくい。子供は多くても三人までで、四人目以降は妊娠しない。豚。人間からは憎まれる。……なんか恨みでもあんのか? それとも豚の神様……神様社会の中で立場が弱いのか?
とか言いながらも、生活自体には満足してるんだけどな。相変わらずのスローライフ。温度も常に適温で、冷房も暖房もいらない。
そうそう! 思い出した。この世界、ちゃんと季節があったんだよね。体感温度が変わらないから、なかなか気付かなかったんだよ。
どうやらオークは、気温の変化に対してすこぶる鈍いみたいだ。じゃなきゃ、年がら年中ずっと腰巻一丁で生活なんか出来ないよな。
でも、森の中を歩いていると、時期によって獲れるものが変わってくる。特に、木の実やキノコなんかはそれが顕著だ。
元人間として、もっと早くに気付けたはずなんだがな。……大雑把なオークの社会に、俺も染まってしまったのかもしれない。
いやさ……日本にいた時みたいに、『松茸』とか『しめじ』とか名前がついてれば、特別感も出るじゃん? でもオークの場合、『美味しいキノコ』、『紫のキノコ』、『大きいキノコ』、『食べたらダメなキノコ』ってなもんだ。ちなみに『紫のキノコ』はめっちゃ美味い。
アルミン達が結婚してからは、季節が二回りしている。
これを二年と言ってしまっていいのかは分からないが、体感的にもそこまで大きく外れてはいない……はずだ。時計もカレンダーも無いって不便だよな。慣れたとはいえ、自分が何歳なのかくらいは知っておきたかった。
この二年の成果としては……そうだな……。
あっ! そうそう、オークの性教育について衝撃の事実がっ!
……えっ? それはもう知ってる?
なんだよ、つまんねぇ。アルミンから聞かされた時、俺、腰抜かしたぜ?
知らない人のために説明すると、オークは、『子供の作り方 (物理)』を、子供の前で実践教育するんだ。
ん? オブラートの包み方が下手過ぎて、何を言ってるか分からない?
面倒くせぇな……。えっと、あれだ!
要は、子供の前で両親がSEXをして、子供の作り方を次世代へと繋げていくんだな。
ネットも学校もないこの世界において、性教育なんてもんは存在しない。そして、オークは超がつくほどの大雑把。わざわざ口で説明するなら、ヤッちまった方が早いってことだ。
効率的と言えば効率的だよ……第三者の目線で言えばなっ!
問題は……俺もオークだってことだ!
なんやかんやで、オークの生活にも愛着は湧いてるし、パピーもマミーも愛している。そんな両親の、愛の営みを間近で見せられるんだ……本人の解説付きで。
ブタの交尾の資料映像と思えばワンチャン……ねぇよ! ノーチャンスだよっ!
そこはなんて言うかさ、『本能的に子孫の残し方を知っている』とかでいいじゃねぇか。なんで中途半端に理性的なんだよ。
アルミン曰く、性行為の伝承が行われるのは、結婚が決まってからのことらしい。
俺がオークと結婚出来るかどうかは置いといて、その時ははっきりと断ろう。『ヤリ方は知ってます』って。理由は適当にでっち上げればいいだろ?
あとは……そうだっ! 簡単な武器を作れるようになったんだよね!
今までは、全て木製のこん棒だったのが、石を使った斧……みたいな何かを作れるようになったんだ。究極に不器用なオークでも、石同士を削り合わせるくらいのことは出来たんだよ。気分はまさに弥生時代だ。
ん? なんだって? 相変わらず、話があっちこっちに飛ぶ?
すまんな……子供の頃から治らないんだ。小学校の通信簿に書かれたんだよ。
――水川君は、自分の好奇心に忠実過ぎる所があります。
ってな。
水川って誰? ……忘れてくれるなよ。オークに生まれ変わる前の、イケメン美容整形外科医時代の俺の名前だよ。
そういえば、アルミンのオペを最後にスキルは使ってないんだよな。
おかげで、イケメンな顔を若干忘れつつある俺。自分の顔なのに忘れることってあるんだな。まぁ……いつかスキルを使う日が来れば顔を見れるわけだし、問題ないだろ?