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張郃  作者: 涼風隼人


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13/21

第13回 張郃、官渡の戦いに参戦する

 緒戦ともいえる、白馬・延津の戦いで二将を失うという屈辱的な敗北をした袁紹軍は、大挙、南下をして黄河を渡ってきた。

 

 そこで曹操は、防衛拠点を「官渡」に定めて、対峙することにしたのである。

 

 この官渡の攻撃を命じられたのが、張郃と「高覧」であった。高覧も袁紹軍では勇猛で名を知られる武将の一人であり、張郃と高覧は作戦を共にすることが多かった。それ故、他の武将より張郃は高覧に親近感を覚え、高覧もまた、同じであった。高覧が言う。

 

 「儁乂よ、曹操はやはり侮れないな。計略が冴えわたっている。まさか、顔良殿と文醜殿を失うことなど、誰も考えていなかったのではないか。」

 

 「確かにな。曹操の戦上手という噂は、本当であったということだ。我々も、曹操軍の動きは逐一見逃さず臨まなければなるまい。」

 

 「ああ。決して油断しないこと、と互いに肝に銘じよう。」

 

 張郃と高覧は、曹操軍の動きに最大限の注意を払うことを確認しあった。

 

 そして、この官渡の戦いは長い膠着が続く。

 

 長期戦になればなるほど、力の差は出てくるというもので、少しずつ曹操軍の旗色が悪くなってきた。

 

 さすがの曹操も一時退却を検討し、許昌にいる「荀彧」に相談をしたが、「ここは耐えるべき時であり、それがまさに好機に繋がる」という助言を受けて、何とか踏みとどまった。

 

 そしてこの我慢が実ったのか、袁紹軍から投降してくる者があった。「許攸」という、袁紹軍の参謀である。

 

 この許攸が持ってきた情報が、袁紹軍の兵糧は「烏巣」という場所に集積されているが、そこの警備が非常に甘く、急襲すれば、袁紹軍の兵糧を断つことが出来るという者であった。

 

 この情報の真偽は曹操軍で吟味されたが、結果、信じて曹操自らが出陣することにしたのである。

 

 こういった、決断と行動の速さというのが、曹操の長所と言えよう。この曹操の動きは、当然、袁紹にも伝わり、軍議が行われた。

 

 ここで最初に発言をしたのが、張郃である。

 「烏巣の兵糧を失えば、我々は戦えなくなります。大至急、本軍から応援を差し向けるべきです。」

 

 袁紹は黙って考えている。そこに参謀の「郭図」が発言をした。

 「いや、張郃殿の策は下策というもの。ここは、曹操の本陣を急襲するのが一番のはず。曹操が不在という、またとない好機ですので。」

 

 袁紹はまだ黙って考えている。そして、袁紹が言った。

 「烏巣の応援には、軽騎兵を向かわせろ。そして主力は直ちに、曹操の本陣を襲え。」

 

 張郃が言う。

 「曹操軍の本陣は守りが固く、そう簡単に落とせません。これだけ、長期の戦いになっているのも、それが理由です。」

 

 高覧も張郃の意見を後押ししたが、結局、却下された。

 

 そして、この軍議を行っている間に、烏巣から火の手が上がったとの急報が入ってきた。張郃は呟く。

 

 「これで、終わりだな。」

 

 高覧が反応する。

 

 「ああ。この大軍を維持できなくなった以上、即時撤退するしかあるまいよ。」

 

 「・・・。高覧よ、俺は決めたぞ。」

 

 「儁乂、どうした。」

 

 「俺は、曹操に降ることにする。」

 

 「何を言っているかわかっているのか。そんなことをしたら、故郷に残るお前の親父さんとか、ただでは済まないぞ。」

 

 「父上なら、何とか凌ぐであろう。それに、袁紹もそんなことをしている暇はなくなるだろう。今回の件は、それほどのことなのだ。」

 

 張郃は続ける。

 

 「このまま袁紹の下にいても、どうせ取り巻きの参謀どもの話しか聞くまい。遅かれ、早かれ、曹操にやられるであろう。」

 

 「・・・。それは、確かに、だな。」

 

 「ならば、早いにこしたことはない。俺は、曹操に降る。」


 「・・・。わかった。俺もお前と行動を共にしよう。」

 

こうして、張郃は高覧を伴って、曹操に降伏を申し出たのである。

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