47話 強奪
遅れて申し訳ない(/ω\)
「ははっ・・・・・・!」
自室で笑い声を漏らす。
必死にこらえていたが、今日の戦果を見て無意識に口が緩んだ。
戦闘系のアーティファクトが二つと、悪魔教の二人が脱出用に用意していたであろう転移用の札が一つ。もう一枚もあったが、そちらは騎士団が手掛かりとして必要になるだろうと置いてきた。
このどれもが、本来はこんな序盤では入手が困難なものだ。
胸糞の悪い連中を潰して、同時にこんな有用な物まで強奪しても罪に問われないなんて、とんだボーナスだ。わざわざ超長い大便をしてきた奴だと誤解されたかいがあったというもの。「少し道に迷った」と別の言い訳もしたが、班員の連中は若干目線を逸らしていた。悪ガキぶってる奴が腹を下してたと思って内心爆笑していたのかもしれない。
閑話休題。
取り敢えず、三つの中から転移の札を手に取る。
札には特定の場所の名前が書かれていて、この記された場所に転移ができる。おそらく今この札を使えば、悪魔教の連中とエンカウントできるだろう。
同時にそのままあの世に行くことになるだろうが。
(悪魔教の連中も、帰ってこないことを察してもう退散してる可能性の方が高いか)
ちなみに、札に使用されている物は一般的に売られているような代物で特別な要素はない。
札に転移能力をもたらしているのは、文字の方だ。
移動したい場所を記すことで転移ができる【旅綴り】という筆の形をしたアーティファクトの能力である。
俺も既に移動系のアーティファクトである【虚空鍵】を保持しているが、あれは七日に一度しか使用できないため、少々勝手が悪い。
対して【旅綴り】にはそのようなクールタイムはない。
唯一のマイナス要素としては、文字を書くのに莫大な魔力を消費することぐらいだ。一つ製作したら、魔力の回復に丸一日は必要となる。
まあそれを加味しても、札を作製していけば貯蓄していくことが可能なため、時間の経過と共にデメリットも感じなくなるだろう。そもそも人員が増えたとしたらいくらでも作り放題だ。
間違いなくアーティファクトの中でも上位の能力。
転移系というだけでも希少な中、こちら側のデメリットも魔力だけしかない。
本当に、悪魔教が持っていて良かった。
「じゃ、貰うか」
なにせ、奪うのに躊躇がいらない。
使うのは、リュリア教員に貸して貰っているモルドニカ家保有のアーティファクト。
形は手のひらほどの黒い香炉。四本の短い脚があり、表面には枝分かれしているような線の模様がある。
一見して、ちょっと高級感のあるアンティーク品ぐらいにしか見えないが、もしも壊しでもしたら、一生かけても清算できないレベルの代物だ。
国宝に指定されてもおかしくないこのアーティファクトの能力は【痕跡からその主たる源を引き寄せる】というものだ。
これだけを言われたら一瞬疑問符を浮かべるかもしれない。
では簡単に例を出そう。
俺が前世にいた時の事件。
未解決のものも多い中で、犯人の血痕と思われるものが現場に残されている場合がある。
その時、血痕にこのアーティファクトを使用したとすると、その場に犯人が召喚される。
犯人逮捕。事件解決である。
この無法っぷり。おそらく犯人はずっと宇宙猫状態のまま連行されるに違いない。
騎士団が喉から手が出る程欲したのは想像に難くないだろう。
あまりの性能に逆に不信感を抱いて手を出さなかったプレイヤーも多い。
軽い制約としては、使用者の体重か魔力量を上回るものを召喚することはできないということぐらい。
(そしてこれを札に書かれた文字に対して使用すれば・・・・・・)
媒介物である札の上に香炉を置き、魔力を流す。
表面の模様が淡く輝き、上部の一点へと光が収束していく。
そして、ポンっという軽い音と共に、一本の筆が現れる。
その見た目は【旅綴り】で間違いないもので、一応悪魔教がなにか防止措置を入れていないかを確認する。
「本当に軽い感じで発動するな・・・・・・さて、あっちは大慌てになるだろうが、勝手に疑心暗鬼して内部崩壊してくれたらなお良しなんだがどうだろうか」
まあ既に筆で書いたものはある程度確保しているだろう。
今さら俺が強奪した所で、奴等の計画が大きく変更することはないかもしれない。
それでも、ある程度動きを抑制できることには間違いないだろうが。
そんなことよりも、だ。
俺は早速手持ちのメモ帳に【旅綴り】を使って文字を書いていく。
文字、というより数字だが。
このアーティファクトは文字を記すことで、その場所にいける訳だが、より詳細な場所を記載すれば、転移の精度にも影響する。
〇〇迷宮〇階層という具合にすれば、今回の奴等のような動きが可能になる訳だ。
そこで、場所の詳細を示す方法で非常に精度が高くなる方法に関してだが、文字以外にも数字で表す事ができる。
それが座標だ。
それぞれXYZ軸で書くだけ。
地図レベルになるため、コンマ以下の桁数も書く必要はあるが、有用な場所であれば一応記憶している。大きく植生が変化していない限り想定通りの場所に転移できるはずだ。
これも余談だが、正確な座標が不明な特異領域も存在する。
そういう場所には【虚空鍵】を使うのが有効である。
手軽さの【旅綴り】と、正確性の【虚空鍵】として二つを使い分けていけばいいだろう。
「くっくっく!」
三下のような笑い声をあげながら、今後に出会いたい生物たちを思い浮かべる。
金銭的な問題は、あと三週間もすれば確実な目途に変わるはずだ。土台はもう整ったと考えて言い。
その上で、便利な移動手段もできたとなればもう迷う必要はない。
会いに行く。すぐに。なにを置いたとしても。
「美麗系、飛行系、生存に特化しているトリッキーな奴等も捨てがたい! くはっ、はっはっは――」
「クリス様、ご夕飯の時間です」
椅子に背もたれにもたれ掛かりながら笑い声をあげていれば、すぐ隣から冷静な女性の声が聞こえてきた。
視線を向ければ、シルと彼女の肩に乗っている母アイオーンがなんだか呆れているような目で見ている。目は口程に物を言うとはよく言ったものだ。
よく泥まみれになりながら声を上げて喜んでるケルンに、も遠くからあの目で見ているのを見かけるが、まさか俺も同じように見られる日が来るとは・・・・・・
「・・・・・・ナーラは」
いたたまれないような視線から顔を背け、俺の専属になったはずのメイドの名を出して話題を逸らそうと試みる。
「何度も扉から声を掛けたようですが、反応がなかったと。それに中から恐ろしい笑い声が聞こえてくるとのことでしたので、異常事態と判断しました」
「だ、大丈夫ですか・・・・・・?」
よく見れば、部屋の扉の奥から顔だけだしてこちらを覗いている三つ編みがいる。
肩のサラマンダーも、心なしか不明なものに対する威嚇体制に入っているような気がしなくもない。
「分かった、すぐに行こう」
人間にどう思われようが関係ないが、アイオーンやサラマンダーに警戒されるのは許されない。
未来に馳せる想いを一旦しまい込み、取り敢えず表情だけ戦場の戦士のように整えて食卓へと向かった。
第二章金策編 了
土台が整った、という所で一旦休載します。
面白い・続きが読みたいと思った方はブクマ・評価をして頂ければ・・・・・・おそらく休載期間が短くなるかと思います。他の作業との兼ね合いを見ながらですが。
ということで、一旦はお疲れ様でした(≧▽≦) そのうち人物まとめも出しときますね~




