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天使のほほえみ  作者: L
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※リュドヴィック、初等部2年生になりました




 ついにーーー初等部2年生の新学期だ。



 オレは、いつもよりも早起きをして、いつもよりも気合いを入れて、いつもよりも早すぎる時間に学園へと向かった。


 そして、いまか今かと教室の扉から廊下を窺うオレの後ろには、ダミエレが控えている。


 オレに合わせて、というか、オレの考えが筒抜けの如く、ダミエレも朝早くに王宮へ迎えにきたのだ。


 オレの考えが筒抜けなことが恥ずかい気持ち半分と、オレのことを理解してくれているという嬉しい気持ち半分と、ごちゃまぜの状態である。


 そうこう考えているうちに、ついにあの子が廊下を歩いてきたではないか!


 そうなのだ。


 オレは自分に誓った通り、あの子に話しかけようと廊下を窺っていたのである。いつ話しかけようかとドキドキしていると、あの子はワグナー嬢と話しながら近づいてくる。


 ・・・と、思ったら、窓から中庭の花壇を眺めているのか立ち止まってしまった。



『今だ!今しかない!頑張れオレ!!』

「殿下、ファイトです」


 オレの心の声と、ダミエレの冷静な声援は同時だった。



 オレの心臓は、さらにドキドキが強くなっていく。


 今まで、たくさんの貴族の大人たちと言葉を交わしても緊張などしたことがないのに、オレは人生で最高潮の緊張を味わっている感覚だった。まぁ、まだ約8年間しか生きてないのだが。


 あの子とワグナー嬢の後ろへと近づき、オレは一度だけ大きな深呼吸をする。



 そして、


「お、おはよう」



 『!?緊張しているせいか、噛んでしまった!!』



 オレの心が大騒ぎしていると、あの子が数秒後にゆっくりと振り向いたのだ。



ーーーーオレとあの子の目が、初めて合った瞬間だった。



 あの子は、オレが急に話しかけたためか驚いたような顔をしていたが、あの子と目が合っただけで心に歓喜の渦が巻き起こり、オレの表情筋は勝手に緩まってしまう。


「ロバート嬢、いきなり話しかけてごめんね。ボクは、リュドヴィック・コフィアだ。同学年で挨拶を交わしていないのはロバート嬢だけだったから、ぜひ挨拶をさせてもらいたくてね」



 そうしたら、あの子が笑いかけてくれて、カーテシーをしながら挨拶をしてくれた。


 そのカーテシーは、初等部2年生でありながらも綺麗で見事だった。付け焼き刃ではなく一生懸命に練習してきたことは、容易に想像できた。


 それから、あの子と二言三言の言葉を交わすが、オレの顔はどんどん熱くなってくる。



 『急に熱でも出てきたのか!?』



 顔は熱いし、心臓も相変わらずドキドキとうるさくて、次の言葉を見つけられないでいると後ろから「ゴホッ」っと、わざとらしい咳払いが聞こえてきた。


 ダミエレである。


 ダミエレが、あの子に挨拶をしてもいいかと聞いてきた。そういえば、ダミエレもまだあの子とは話していなかったか。けれど、正直に言えば嫌である。あの子と他の男が話すところなど見たくもない。しかし、心が狭い男だとあの子に思われたくはない。せっかく、あの子と話せたのに・・・。


 少し考えてから「いいよ」と言うと、あの子とダミエレが挨拶を交わす。


 すると、あの子が不思議そうにしながらダミエレを見つめているではないか。



 『まさか、ダミエレが好みなのか!?』



 オレのことは、こんなに見てはくれなかったのに・・・。


 これ以上、あの子にダミエレを見てほしくはなくて、ダミエレに「そろそろ教室に戻ろう」と声をかけてしまっていた。


 やはり、ダミエレにはオレの考えが筒抜けの如く笑われてしまったが。


 あの子とワグナー嬢に「またね」と声をかけてから教室へ戻ろうとすると、ダミエレがワグナー嬢のほうへ軽く手を上げているではないか。


 ワグナー嬢も、恥ずかしそうにしながら軽く手を振り返しているし。



 『えっ!?この2人、いつの間に手を振り合うほど仲良くなっていたんだ!?』



 オレは、少しだけダミエレを羨ましく思ったのである。




 その後も、あの子と仲良くなるために、いっしょにお昼ご飯を食べたりしている。


 まさか、あの子ことを名前で呼べる日がくるなんて・・・。


 それにしても、あの子は凄いな。


 初めていっしょにお昼ご飯を食べた時、いつもあの子たちが座っている席へオレも座ろうとしたら、「王宮からの伝令の方がお困りになりませんか?」と心配してくれたのだ。


 オレがいつも座っていた席は、食堂の入口から一番手前の一番左側の席である。なぜ、その席にしていたのかというと、王宮からの至急の連絡を受ける時に伝令役が見つけやすいこと、小声で話さなければならない内容を他者に聞かれにくいこと、そして生徒に囲まれてしまった時にすぐ退出しやすいからだった。


 あの子は、もともとオレが座っていた席を知っていて、理由まで理解していたとは聡明すぎるだろう。


 オレは、ますますあの子と仲良くなりたいと思った。


 あの子が心配しないように、「王宮の伝令役には、この席になることは伝えてあるから大丈夫」と答えた。


 それに、今は食堂の入口から一番右側の一番奥の席だ。オープンキッチン側で人通りは多いが、逆にガヤガヤと話し声がしていて賑やかなため、他者の会話は聞き取りにくい。また、オレといっしょにいるのがロバート公爵家、グスタフソン侯爵家を筆頭とした彼女たちであれば、無意味に話しかけてくる生徒もいないだろう。




 そうして、オレは順調(?)にあの子と仲を深められている・・・のではないかと思う。 


 みんなとお昼ご飯を食べるのが当たり前になってきた頃ーーー。


 ある日、スカーレット嬢が「天使殿にお掃除しに行くんだぞい!!」と言い出した。


 そして、また別の日にスカーレット嬢が「リュー陛下の妃だった天使族の姫の名前、知ってるぞいか!?」と聞いてきた。


 天使殿については、このコフィア王国にはアンヘルに大天使殿、王都に天使殿があることは王子教育で習っていた。


 リュー陛下の妃の名前も、もちろん王族に関することのため王子教育で習っている。


 しかし、民たちの間では当たり前に知られていないことをオレは初めて知った。


 たしかに、王都にある天使殿の場所を知ってはいるが行ったことはない。オレの曾祖父でもあり賢王とも呼ばれたリュバン王がよく訪れていた場所とも習ったのに、だ。


 リュー陛下の妃であるハニエル様についても、民たちが読む本にすら名前が記載されていないなど考えもしなかった。


 オレは民たちが知らないことを不思議に思い、夕食の席で父上に聞いてみた。


 父上は、天使殿のこともハニエル様のことも「うん、僕も最近まで忘れていたことが不思議だったんだよね~。民はやっぱり知らないのか~。とりあえず、天使殿に行ってみよっか」と、軽い調子で言うではないか。


 話を聞いていた弟のリュシルも好奇心旺盛に「ボクも行きたいです!」と言い出したため、学園が休日の早朝に天使殿へ行くことになったのである。


 早朝であれば、人通りが少ないため出歩くのにいいと父上が慣れている様子で言っていた。


 母上も行きたがっていたが、その日は午前中から公務が入っているから行けないと残念がっていたが「今度、いっしょに行こうね~」と、父上が言うと笑顔で頷いていたから息子として安心したのだった。




ーーーーー天使殿へ行く当日。


 まだ藍色の空が残る時間に、オレと父上、リュシルは王宮を出発した。



 天使殿に着いて、父上が扉を開いた瞬間。


 後ろから強い風が吹き抜けていく。3人とも驚いたが、強い風なのに暖かくて優しい風だと感じたのは何故だろう。


 すると、緑色の鳥が3人の頭上を飛んで天使殿へと入っていく。


 オレは緑色の鳥を目で追うと、鳥は()()に止まった。



「あっ。あれが天使像?」


 ちょうど太陽が昇ってきたためか、ステンドグラスから陽光が降り注ぎ天使像を照らし出す。


 緑色の鳥は天使像の肩に止まって、こちらを見ているようだ。


「あれが天使像だね。行こうか」


 父上が歩き出したため、オレとリュシルは父上の後ろについていく。


「わ~!すごいです!!」


 リュシルは、天井に描かれている天使の絵画やステンドグラスを見て興奮した声を出す。


 オレも、あの子たちから聞いていた通りの天使殿の内装に興奮していたが、リュシルの兄として平静を装う。


 天使像の前で立ち止まり、天使像を見上げると予想より大きいのだなというのが最初の感想だった。


 天使像の肩に止まった緑色の鳥は、今もおとなしく止まったままである。


 ずっと無言のまま天使像を見つめていた父上だったが、


「あっ......思い出した」


 と、呟いた。


「何を思い出したのですか?」

「幼い頃に......今のリュシルくらいの年齢の時に、僕も父上にここへ連れてきてもらったことをね」

「父上の父上......ボクのお祖父様でもあり前国王のことですか?」

「そうだよ。グレイソンといっしょに父上が連れてきてくれたんだ」


 父上は、懐かしむように目を細めて天使像を見つめ続ける。


 お祖父様は、オレが生まれる前に亡くなってしまっているため会ったことがない。もともと体が弱かったらしいが、「とても優しい人だった」と父上から聞いたことがある。


 父上もお祖父様に連れてきてもらい、そして時を経て、オレも父上に連れてきてもらったことが嬉しいような、不思議な感覚になった。


 しかも!ロバート公爵も来ていたってことは、あの子と話題にできるではないか!ナイスです!父上!



「天使像は女の人ではないのですか?」


 リュシルが素朴な質問をする。


「こちらは”ラファエル様”という名前で、大天使アーリエル様の旦那様なんだよ」

「へぇ~!アーリエル様は結婚していたのですね!」


 父上がリュシルに説明をしていると、


「あっ、だんだん色々と思い出してきた」


 と、また父上が呟いた。



 『どれだけ忘れっぽいんだよ・・・』



 と、オレは心の中でツッコミを入れる。あっ、今のツッコミ、少しモアナ嬢っぽいな。


 オレは心が少し脱線してしまったため、小さく咳払いをして心を整えたあと、



「父上、ラファエル様について王子教育で教わっていないのですが、どうしてなのでしょうか?」

「・・・なんでだろうね。僕もラファエル様のことは、父上から教わったことを思い出したよ」

「あっ!アーリエル様とラファエル様が夫婦ということは、ハニエル様はお二人の子供なのですか!?」


 リュシルが「謎は解けた!」と言わんばかりに目をキラキラとさせながら、素朴な質問をぶつける。


「たしかに初代王妃のハニエル様は”天使族の姫”と言われているけど、お二人の子供ではないはずだよ。お二人に子供はいなかったらしいし。ただ、お二人とハニエル様は深い関係ではあったそうだよ、って父上に教わった気がするな」

「父上、お祖父様にいろいろ教わっているではないですか!?」

「ごめん、ごめん。リュドから話を聞いた時は忘れていたんだけど、ここに来てから思い出すことがたくさんあってね~」

「でしたら、ぜひボクにも教えてください。ただでさえ、天使殿のことも天使族のことも情報が少ないのですから」

「ボクも!ボクも教わりたいです!!」

「いいよ~」


 父上が飄々としながら了承するものだから、「本当に教えてくれるんだろうな?」と心配してしまう。


「さてさて。そしたら天使像への正式な祈り方を、リュドとリュシルに教えようかな。2人とも、いずれは大天使殿に祈りを捧げに行くだろうし。王族のみの祈り方だから、お友達にも教えたらダメだよ?」

「「はい!!」」



♦♦♦♦♦♦♦



 父上に正式な祈り方を教わったけど、「オレも本当に王族なんだな」と改めて実感した。


 なぜなら、オレもリュシルも手のひらからポワンと光が出たからだ。これが”天使力”と言われるものなのだろう。しかし、この光で何ができるのかは分からなかった。父上には「天使力は人によって使える力が違うからね~。そのうち分かってくるよ~」と、飄々と言われてしまったが。


 それにしても、父上の手のひらから出される光の大きさは凄かった。


 ボクとリュシルが”ポワン”なら、父上は”溢れ出ている”という表現が合っているだろう。天使殿の室内全体が光に包まれたようだった。リュシルなんて、驚きすぎて腰を抜かしちゃってたもの。


 天使力については王族以外の者からは教わることはできないため、父上から天使力の使い方は教わるしかないか。



 すると、それまでおとなしく天使像の肩に止まっていた緑色の鳥が、満足そうに頷くような仕草をしたあとに、天井を何周か大きく旋回したあと扉のほうへと飛んでいく。


 緑色の鳥が扉をあけてほしそうにしており、


「そろそろ、管理の者が来るかもしれないからね。城に戻ろうか」


 父上の言葉にオレとリュシルは頷いて、来た時と同じように父上の後ろについていく。


 父上が扉をあけると、緑色の鳥は青空へと羽ばたいていった。


 外は、すっかり朝になっていたようだ。



 『不思議な鳥だったな・・・』



 そう思いながら、緑色の鳥が羽ばたいていった青空を眺めていると、ふと違和感に気づく。



 『なんだ......あれは?』



 青空の下方向に、まるで王都を包み込むように黒いモヤが見えるのだ。


 その黒いモヤは、オレたちのほうに近づいてきているようにも見える。


 オレが固まって動かなかったからだろうか。


「リュド?どうした?」

「兄上、大丈夫ですか?」


 父上とリュシルが心配そうにして窺ってきた。


 どうやら、あの黒いモヤは2人には見えていないようだ。


 オレだけに見えている。


「すみません、大丈夫です!さぁ、早く戻りましょう!」


 2人は不思議そうにして顔を見合わせていたが、オレはつないでいた馬へと駆け寄った。



 王宮へ戻る途中も、黒いモヤはオレについてくる。というか、オレの体に吸い込まれてないか!?


 あぁ、頭が痛くなってきた気がする。気持ちも悪い。



 次の日になっても、頭痛も気持ち悪さも改善されていなかった。


 朝食を少ししか食べなかったオレを母上は心配して、「体調が良くないなら学園は休んで侍医に診てもらいましょう?」と言ってくれたが、オレは学園へ行ってあの子に会いたいのだ。


 母上には申し訳ないけど「大丈夫です」と言い張って、学園へと向かった。




 学園へと着き馬車から降りると、


「リュドヴィック殿下、おはようございます」


 後ろから、まさに会いたかった子の声がする。


 振り向くと、あの子がほほえんで立っていた。


 あの子のほほえんだ顔を見たら、頭痛も気持ち悪さも消えてしまった気がする。


 あの黒いモヤが消滅したかのように清々しい。



 ほらね、あの子を見ると元気になれるんだ。


 オレは嬉しくて、自然と笑顔になっていることだろう。



「おはよう、いっしょに教室に行こう」

「はい!」


「行こうかーーーーー()()()()()()()








 


新学期、初めてリュドヴィックとクリスティナが会話をしたあと。

「ダミエレ、見つめられていたよな?」

「はい?」

「あ、あの子に・・・」

「・・・殿下、何を勘違いされているのですか。あの目線は、”好意”とかそういうものではなく、珍しいものを見た時の観察の目線でしたよ。ボクの何かが不思議だったのでしょう」

「観察?ダミエレの何が不思議なんだ?」

「知りませんよ。それこそ、ロバート嬢にお聞きになったらいかがですか?お話できるようになったわけですし」

「そ、そうだな。好意ではなかったのか・・・よかった」


なんとも単純なリュドヴィックなのでした。


そして、初めてお昼ご飯をいっしょに食べたあとも・・・。

「殿下、”王宮の伝令役には、この席になることは伝えてあるから大丈夫”とお伝えしていましたが、それではあの席で食べることを事前に計画していたと言っているようなものではありませんか?」

「あっ......たしかに(;゜Д゜)」


 クリスティナといっしょに食べれることに浮かれすぎてて、致命的なミスをしてしまったリュドヴィックであった。

まぁ、クリスティナも全く気づいていないのですがね(笑)

気づいていたのはモアナくらいでしょう!

リュドヴィックには冷静なダミエレの存在が今後も必要ですね(^O^)




それにしても、筆者は花粉症がひどいです。。。スギとヒノキのアレルギーがあるのですが、去年あたりから薬が効かなくなっているような?

花粉が強くなっているのか、それとも年齢を重ねているのが原因なのか・・・。

今日も鼻水&くしゃみと戦っています(>_<)





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