おわり
「お前にはもう、付き合いきれない……。婚約は破棄させてもらおう!」
「そ、そんな! 殿下! 私が何をしたというのですか!」
「とぼけるな! 彼女にした仕打ち、とてもではないが許せるものではない! お前にはこの……あ……」
「…………」
「…………」
「そこのセリフ間違えるの何回目ですか殿下。ないわー。学年一位の天才が聞いて呆れるわー」
「うぐう……!」
私たちは無事に最終学年になりました。で、卒業前に何か面白いことをしたいとアホ……、シャーリーが言い出して、それなら演劇でもしてみたいですわ、とバカ……、エリザ様が言い出して、あれよあれよと卒業式に披露することになりました。
言わせてほしい。この国大丈夫? 頭のねじどころか部品足りてなくない? いや、私も大概だと思うけどさ。
で、今は謁見の間で、しかも王様の前で練習を披露しています。意味わからん。
「く、くく……。団長はシャルなのかな?」
「そうですよ、王様。何故か私がこのへんてこ劇団の団長です。貴族の皆様の前でこうして立つことに胃がきりきりしてます。助けて」
「諦めろ」
「ひどい」
もっと構ってくれてもいいと思うんです。
「ねえ、義父様」
「…………」
「まずい! 陛下が息をしておられない! 誰か! 誰かおらぬか!」
「陛下あああ!」
「え、なにこれ、私のせい?」
なぜ義父を義父様と呼んだだけでこんなことになるのか。何があったの。
うん、まあ、そういうことで。一応は殿下の側室になる予定です。いや、なんか、王家に雇われることが決まってから、急にいろいろうるさくなってね。お見合いとかなんとか、興味ねーです。なので、一時避難として王子にもらわれることになりました。
ちなみに、いい人が見つかったら婚約を破棄してもらう予定です。
「つまり、この劇は、未来の私の予定……」
「殿下。死ね」
「罵倒がストレートすぎて反応に困るよシャーロット……。私はまだ何もしてないからね?」
「そうでしたね。では、近いうちに必ず」
「必ずなにするつもりかな!?」
二人は相変わらず息の合ったコンビです。王様や貴族の皆様も苦笑い。シャーリーの口の悪さはもう気にしないことにしたみたいだね。
そう。なんと謁見の間には他の上級貴族の皆様もいるのです! 胃が痛い! ぽんぽんいたい!
学生側は私たちの学年全員と、特別ゲストに殿下。ちなみに殿下は婚約破棄を言い渡すバカ王子の役です。
「シャル。この台本、やっぱり変えられないかな。一応王子だからさ。演劇とはいえ婚約破棄っていうのは、どうかと思うんだ」
「えー。だって、台本自由に書いていいって言ったじゃないですか。だから嫌がらせ……けふん、がんばったのに!」
「今嫌がらせって言わなかったかな?」
「気のせいです」
「いや、言ったよね?」
「言ってねーです」
そんな失礼なことするはずがないのである。
「そんなことより殿下、さっさと始めましょう。さあ、婚約破棄を言い渡すところからです!」
「あ、ああ、分かったよ、シャーロット。……こほん。婚約を破棄させてもらおう!」
「喜んで!」
「シャーリーはどさくさに紛れて何やろうとしてるのかな!?」
相変わらずシャーリーが自由奔放すぎるような気もするけど、とっても楽しいです。はい。
ただこのぐだぐだな練習どうすればいいの。王様たちにこんなの見せてあとでどう言い訳すればいいの。
助けを求めてエリザ様たちへと振り返れば、みんなで揃って目を逸らされた。いい友達だよちくしょう。
「なんてことも、あったよねえ」
もぐもぐと。クッキーをかじりながら私が言えば、向かい側に座るシャーリーは小さく笑って頷いてくれる。
「そうですね。ありました」
ふっと、シャーリーの表情が陰ってしまう。
「まさか、あれからたった三年で、国が傾くことになるなんて。明日にはもう、私は断頭台にいるのでしょう」
「うん……。さすがに、想像もしてなかったよ……。私の魔法、もっと友好的に使えば良かったね……」
「はい……」
「ところでシャーリー。窓から見える街並みはとっても明るいいつもの街並みだけど、いつ傾いたの?」
「これからです」
「ところでシャーリー。断頭台って、この国にはなかったと思うんだけど、作るの?」
「作ってもらいます?」
「やめなさい」
学園を卒業した後も、シャーリーとはいい友達でいてもらってる。私は魔導師として、シャーリーは次期王妃としてそれなりに忙しいので毎日会うことはできないんだけどね。
……できない、はずなんだけどね……。
「ではシャル、明日もいつもの時間に呼び出しますね」
「職権乱用って言葉知ってる?」
「なんですかそれ?」
「んにゃ。なんでもない」
まあこの子には今更だよね。分かってるさ。
でも想像してほしい。国のトップに近い人から毎日呼び出される、というのを。まあ、いいんだけどね。すでに職場の人は慣れて、なんなら同情の視線をいただけるし。
殿下と正式にご結婚されたにもかかわらず、変わらない親友を諫めるべきか嘆くべきか、殿下と同じように達観するべきか、私にはわからんですよ。
楽しいからいいけども。
「明日は何のパンがいい?」
「ジャムをたっぷり塗ったトーストが食べたいです!」
「あいあい。がんばるよー」
まだまだしばらくは、こうした関係が続くと思う。いつかは落ち着いてくるんだろうけど、まだまだしばらくは振り回されて。
それでもまあ、楽しいからいいんだけどね。
了
壁|w・)おわり。
以下、あとがき兼、とっても見苦しい言い訳みたいなもの。
興味ない方はブラウザバックするのだ。
その、なんだ、あれだ。
言い訳はしない。あえて言うなら、すまぬ、飽きた。
飽きたっていうかね。書いていて楽しくなくなったの。
ひたすら更新のための義務感にとらわれて書くようになると末期だと思うのです。
そうなるともう私の中で終わってしまうので、無理矢理終わらせました。
いや、本当に、すみません。もう少しちゃんとプロットを立てればよかったですね……。
……同じこといつも言ってないか……?
本来は二年生以降にちょろちょろ恋愛を入れていこうと思ったのですが、シャルとシャーリー二人セットの癖が強すぎて、どうイメージしても恋愛できなかったですよ。
友情メインに据えると恋愛がとても難しい。取り憑かれた~で分かっていたはずなのに、私は何度同じことを繰り返すのだろう。
ちなみに一度だけ出てきたカイル君がヒーロー役のはずでした。影も形もないけどな!
まあ、それでも、プロットも作らずに本当に何も考えずに、好きな子たちに自由に動いてもらっていたので、書いてる側としてはとても楽しかったです。
次はVRMMOなもふもふの予定。もふもふが! もふもふが足りない!
もふー!
ではでは、ここまでお読みいただいた皆様、ありがとうございました。
またどこかでお会いできることを壁の後ろで願っております。
壁|w・)ノシ




