海と風と自由と笑顔があふれる日々
引き続き、ジェスとグレイス、ベルタとハイドの青春です
【海上 環礁入り口】
ぽっかり口を開けている環礁の入り口
ベルタ:「なあにあれ」
ハイド:「小島だ。あの入り口から奥に入れそうだな。ちょっと寄ってみるか。帆を下ろせ、減速だ」
【環礁 入り口】
減速して環礁に進入するベリッシモ号
マストから天井までの距離は5メートルないくらい
ジェス:「こんな所入ったら、向き変えられないだろ。どうすんだ?」
ハイド:「そのために、お前達がいるんじゃないか。風を吹かせるのはお手の物だろ?」
ジェス:「へへ、仰せの通りに」
トンネルを抜けると、砂浜がある入り江が見える
【環礁 入り江】
環礁奥の穏やかな入り江に到着するベリッシモ号
船が自然と停止する
舷側から身を乗り出すハイド
恐ろしく透明度の高く、砂浜が見える
ハイド:「錨を降ろす必要はないみたいだな。船を用意してくれ」
浜に降りるために小舟を用意させるハイド
船乗り:「お頭、あっしらはどうしましょう」
ハイド:「おう、ここで待っていてくれ。降りて様子を見てくる。うまくするとお宝を隠す場所につかえるかもしれん。行こうぜベルタ」
ベルタ:「うん」
小舟に乗って砂浜に向かうベルタとハイド
ジェス:「おやおや、いつのまにベルタはあいつの手下になったんだ?」
グレイス:「まあ、いいんじゃない」
ジェス:「いいのか?」
グレイス:「あの子だって、いつまでも子供じゃないんだから。
ねえ、あなたたちのボスって最初からあんな感じなの?」
乗組員に聞くベルタ
船乗り:「俺たちが雇われた時には、もう船持ちでしたね。それより前のことはなんにも知らないんです」
船乗り:「船長の船は絶対に沈みませんね。なんせ『流水の聖者』ですから」
ジェス:「ということは、水を司る者ってことか」
グレイス:「聖者には見えないけどね」
【環礁 砂浜】
浜辺のど真ん中に立っているベルタとハイド
ベルタ:「不思議な所ね」
丸く切り取られたような空を見上げるベルタ
ベルタ:「それにキレイ」
ハイド:「隠れ家に使えそうだな」
ベルタ:「隠れ家?」
ハイド:「海には身を隠す場所がないからな。隠れ家くらいあっても損はねえな。
よし、決めた!ここを俺たちベリッシモ号の隠れ家にしよう」
ベルタ:「海は誰の物でもなかったんじゃないの?」
ハイド:「ここはちょっとした陸だからいいのさ、お前達だって陸には線引きするだろ?」
波打ち際に走るハイド
ハイド:「おーい、ここを俺たちの隠れ家にしよう!」
船に向かって叫ぶハイド
【環礁 浜辺】
船から財宝を降ろすベリッシモ号の乗組員
空洞から日没の光りが差し込んでくる
夕餉の支度をするグレイスとベルタ
全員浜に降りて火を囲んで食事を摂るベリッシモ号の乗組員
笑顔だけがあふれている
ジェス(声):「あの頃は楽しかったな。毎日毎日、見るモノ聞くこと新しい物ばっかりで」
グレイス(声)「財宝なんてどうでもよかった。ただ自由を満喫しているだけで良かったわね」
たき火の側で雑魚寝しているジェスとグレイス
【夜 ベリッシモ号 甲板】
ベリッシモ号の頭上にまん丸の月が浮かんでいる
甲板に寝転がって月を見上げているベルタとハイド
ハイド:「どうだ?船の暮らしは」
ベルタ:「楽しいよ、とても」
ハイド:「そうか、そりゃ良かった」
ベルタ:「ねえ」
ハイド:「うん?」
ベルタ:「海ってどこまで続いているの?」
ハイド:「海の終わりは世界の果てだ。どこまでもどこまでも青い海が広がっているんだぜ」
ベルタ:「どこまでも青い海」
ハイドを見つめるベルタ
ハイド:「いつまでもどこまでも、青い海を守っていく。それが俺たち流水の聖者の役目だ」
ベルタ:「(微笑)」
ハイド:「何がおかしい?」
ベルタ:「俺たちって、流水の聖者はあなただけよハイド。私は風の民なんだから」
ハイド:「そ、そうだな」
まん丸の月が2人を見下ろしている
【海上 ベリッシモ号甲板】
灰色の天地を割って太陽が生まれる
海の朝焼けを、舳先で見ているハイド
ハイドに近づくベルタの背中
ベルタ:「早いね起きるの」
ハイド:「ああ、ベルタか」
ハイドの隣に座るベルタ
黒い大理石のような波間から青く輝く海が変わる
ベルタ:「すごくキレイ・・・・」
ハイド:「オレは、この時間が一番好きだ」
ハイドの横顔を見つめるベルタ
ハイド:「海が青く生まれる・・・・どこまでもどこまでも青い海・・・」
ベルタ:「どこまでも・・・」
ハイド:「そう・・・どこまでも続く青い海さ」
ベルタ:「海はどこまで広がっているの?」
ハイド:「どこまでもだよ」
ベルタ:「どこまでも?」
ハイド:「そうさ、海の終わりは世界の果てだ。ずーっとずーっとどこまでも青い海が続いているのさ」
ベルタ:「行ってみたいな・・・」
ハイド:「うん?」
ベルタ:「海の終わり、世界の果てまで。ハイドの船で」
編み込んだ髪をほどくベルタ
朝日を浴びてキラキラ輝く金髪の巻き毛が風に躍る
ハイド:「行けるさ」
ベルタ:「本当?」
ハイド:「そうさ。オレとお前で、青い海を突っ切って海の、世界の果てまで」
ベルタ:「姉さんとジェスは?」
ハイド:「うーん、あいつらは、そうだなオマケかな?」
くすくすと笑うベルタとハイド
2人の様子をほほえましく見ているジェスとグレイス
読了ありがとうございました。
今後もごひいきによろしくお願いします。




