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太陽が昇らない国の物語(仮) 第三部  作者: 岸田龍庵
風と水の回顧録(かいころく)
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風の民と海の王者

ジェスとグレイス、ベルタが海とハイドと出会います。

【地平線 夜明け】


【砂浜 波打ち際】

        

凪いでいる海

中天に来ている太陽を受けてキラキラ輝いている

砂浜を踏むジェス、グレイスそしてベルタ

グレイス:「すごーい、これ全部水なの?」

ジェス:「海ってデカイなー」



ブーツを脱いで素足で波打ち際へ歩くベルタ

白いすべすべした足を波が洗っていく

ベルタ:「すごい気持ちいいよ!」

キラキラ輝いているベルタの瞳



ベルタと同じくブーツを脱いで海に入るグレイス

手で海水をすくって一口飲んでみる

グレイス:「うえっ!ペッペッペッ!」

むせ返るグレイス

グレイスの肩を抱き心配するジェス

ジェス:「どうしたグレイス?大丈夫か?」

グレイス:「すごい辛い」

ジェス:「辛い?」

海水をすくって口に運ぶジェス

ジェス:「がぁっ!なんだこりゃ!」

ベルタ:「ええっ?」

ジェス:「こんなの飲めたもんじゃねえ」



声:「(大爆笑)」

男が笑っている。男は上半身裸で、全身に太い鎖を幾重にも巻き付けている。右の足首に金の土台にサファイアをあしらったアンクレットをつけている



ハイド:「なんだお前ら、海を知らねえのか?」

緊張するジェス、グレイスそしてベルタ

ハイド:「お前ら陸者(おかもの)だな?」

ジェス:「お前追っ手だな」

ハイド:「追っ手?」

問答無用にこぶしをふるうジェス

ハイ:「おっと、なにか勘違いしてんじゃねえのか?」

ジェスのこぶしをよける男

ジェス:「俺たちはもうキャンプには戻らない!」

竜巻を巻き起こすジェス

男の体が竜巻に巻き上げられて海面に叩きつけられる男の体

だが、男は不敵な笑みを湛えて平然と海の上に立っている



グレイス、ベルタ「えっ?」

ジェス:「この野郎!」

海に入るジェス

一歩一歩進む度に体が沈んでいく

足が届かない所まで進んでしまい、おぼれそうになるジェス

グレイス、ベルタ「ジェス!」

        


ジェスの手首を掴んで引き上げる男

男はまだ水面に立っている

ジェスの手首のブレスレットが目に入る

ハイド:「お前、風か?」

ジェス:「お前こそなにモンだ?」

ハイド:「オレか?オレは海の王者だ」




【浜辺】


昼下がりの浜辺

たき火を囲むジェス、グレイス、ベルタ、そしてハイドと名乗った男

丸焼きの魚をベルタに渡すハイド


ハイド:「食え、うまいぞ」

恐る恐る魚にかぶりつくベルタ

グレイス:「どう?ベルタ?」

グレイス:「おいしい」

ベルタの笑顔で場が和む


◆時間経過 凪(なぎ)の海


ハイド:「それで逃げてきたってことか」

ジェス:「俺たち風はもっと自由なはずだ。それが今じゃ権力やら勢力争いやら、つまんねーことでがんじがらめだ」



ハイド:「狭いな陸(おか)は」

ジェス:「狭い?」

ハイド:「ああ狭いな。狭い土地の奪い合いだ。なんクセつけて線引きして、ここからはオレの土地、そっちはお前の土地。地面に境界なんてないのによ。陸もんは勝手に境界作って自分のもんにしたがる」

ベルタ:「海は違うの?」

ハイド:「海に境界なんてねえよ。海はどこまで行っても海だ。どこまで行っても青い。海は誰の物でもない。海はみんなのものだ。それに広い」

グレイス:「そんなに広いの?」

ハイド:「海は陸の何倍もあるんだぜ!世界のほとんどは海なんだぜ!海の王者が世界の王者なんだぜ!お前達陸者はせいぜい、どこどこの部族とかそんなもんだろ。海は世界と同じだ。海の王者は世界の王者だ!」

グレイス:「海の王者って、あなたおもしろいのね」

ハイド:「お前達、どこも行く宛てないんだろ?」

頷くしかないジェスとグレイス

ハイド:「だったら、働いてみねえか?」

ジェスとグレイス:「働く?」




【港 桟橋(さんばし)】


停泊中のベリッシモ号

初めて船を見る風の民たち

ジェス:「なんだいこりゃ?」

ハイド:「船だ」

グレイス:「船?」

ハイド:「お前達は陸にいる時に馬に乗って移動するだろう?海では船で移動するのさ」

ベルタ:「あなたは水の上を歩けるから必要ないんじゃないの?」

ハイド:「みんながみんな、そんなことはできないからな。人は昔から船を走らせて、海とつきあってきた。さあ、乗った乗った」

ハイドに続いてタラップを登る風の民



【ベリッシモ号甲板】


乗組員が出航準備をしている

足下がおぼつかない風の民

ジェス:「揺れるぞ」

ハイド:「多少の揺れは気にするな。なんせ海の上だからな」

グレイス:「これで、海の上を走れるの?」

ハイド:「そういうこと、そしてお前達風の力でもっと速く走れるようになる」

ジェス:「どういうことだ?」



出航するベリッシモ号

沖に出ると帆を上げる




【沖合 ベリッシモ号甲板】

        

真艫(まとも)に風を受けて帆をぱんぱんにふくらませるベリッシモ号

グレイス:「風でパンパン」

ハイド:「船は風の力で進むんだ」

ベルタ:「風の力だけ?」

ハイド:「まあ、浮力だとか慣性とか色々面倒なことはあるんだが、こうやって真艫に風を受けている分にはガンガン進んでいくんだが、なかなかそううまくはいかねえ時もある」

ジェス:「俺たちに風を、望む方向に風を起こせってことか」

ハイド:「そういうこと。物わかりがいいじゃねえか」

グレイス:「あなたは、この船に乗って何をしているの?」

ハイド:「オレはトレジャーハンター(財宝探し屋)さ」

読了ありがとうございました。


今後もごひいきによろしくお願いします。

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