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太陽が昇らない国の物語(仮) 第三部  作者: 岸田龍庵
火と星の旅路
19/34

空飛ぶ都市

【帝都セイクレッド・ガーデン 司教庁前】



ミランを出迎える物々しい一行

対峙するミラン


司教:「これはこれはミラン様」

ミラン:「司教様、ご機嫌はいかが」

司教:「すべては神のお導きのままに。

 なんでも森林開拓部隊を襲撃した(ぞく)をとらえていただいたと聞きましたが」

ミラン:「2人は賊じゃないわ。私の友人。帝都を見せて回っていたの」

司教:「なるほど、ご友人ですか」

ミラン:「司教庁も見学させたいから、丁重にもてなしてくれる?」

司教:「なるほど、承知いたしました」



フレイ:「おいミラン、どうするつもりだ」

ミラン:「ちょっと私は用事があるから、司教様に案内してもらってくれる。

 違った文化を見るのも悪くないかもよ」



司教庁の中に入っていくミラン

すぐに警備兵に囲まれるフレイとリエル

電撃ムチをふるう警備兵

頭から倒れるフレイ




【帝都セイクレッド・ガーデン 地下牢】


フレイの声:「うう・・・」

リエル:「気がつきましたか?」

フレイを覗き込むリエル

フレイ:「リエル、ここは?」

リエル:「牢獄(ろうごく)ですね」

鉄格子の扉の向こうに、同じような牢獄が見える



フレイ:「牢獄だって?」

リエル:「私たちは森の開発を妨害(ぼうがい)した下手人(げしゅにん)だそうです」

フレイ:「下手人?俺たちが?ミランは?」

リエル:「わかりません。ですが、ここにはいません」

フレイ:「いったい、どういうことなんだ?」

リエル:「分かりませんが、私たち(だま)されたのですよ。あの炎の娘に。

 協力するといって、私たちをとらえる口実だったんです」

フレイ:「そんな馬鹿なこと、ミランはしないよ」

リエル:「私たちが帝都を妨害したことを口実にして、村に攻め込むつもりんなんです、きっと」

フレイ:「リエル・・・」



リエル:「目を覚ましてください。

 結局、あの炎の娘は帝都の回し者で、この世を焼き尽くす火の化身なんですよ」

フレイ:「ウソだ。そんなこと」

リエル:「じゃあ、この状況をどう説明するんですか?」

フレイ:「オレとキミを捕らえるって、それだけでなんにもならない。

 それにミランは亡くなったお母さんに誓ったんだ。大きくなった火はいらない。火を消すって」

リエル:「これが現実なんですよ。あなたがあの子に、好意を持っていても、あの子はすべてを、あなたのことも焼き尽くしてしまうんです」

フレイ:「リエル・・・」

リエル:「わたしは、あなたを守りたい・・・」

フレイに身を寄せるリエル




【司教庁 研究室】

        

 丈の長い赤い法衣(ほうい)に身を包んだ性別も年齢も様々な、火の民が、多くの機器に囲まれて議論をしている

 中央のテーブルで、巨大な空飛ぶ都市の設計図を前にあれこれ議論をしている

勢いよく扉が開く



ミラン:「みんな!」

一同:「ミラン!」

一同:「どこへ行ってたのミラン?」

ミラン:「へへへ、ちょっとね」

設計図を覗き込むミラン



ミラン:「何をみているの、みんな」

ハッとするミラン

ミラン:「何コレ?」

バツが悪そうに顔を見合わせる一同

研究者男:「空飛ぶ都市のメインフレームの動力回路図だ」

ミラン:「空飛ぶ都市って、本気で言っているのみんな?」

研究者男:「本気じゃなかったのはミランだけだ。単に空飛ぶだけのものじゃない」

ミラン:「こんなもので、帝都を空に飛ばしてどうするの?」

研究者男:「決まっているじゃないか。僕たち火の民を迫害(はくがい)した連中の鼻をあかしてやるんだ」



ミラン:「そんなの間違っているわ。ちゃんと話し合えばわかってくれる」

研究者男:「そうかも知れない。でも僕たち一族が迫害されてきたのは間違いない」

ミラン:「今まではそうだったかもしれないけど、これからは私たちで、誰も差別しないような新しい時代が築けるはずよ。それを確かめに行ってきたんだから」

研究者男:「その新しい時代を築くために、この空飛ぶ都市が必要なんじゃないか。

 古い価値観を払拭して新しい秩序を作るんだ」



ミラン:「待ってよ。みんなおかしいよ。私たちの力って、そんなことのために使うためにあるんじゃないでしょ?力でねじ伏せたってなんにもならないよ」    

研究者男:「もう遅いよミラン」

ミラン:「遅いって?」

研究者女:「あとは中央の反応炉に火を入れるだけで、完成するの。そうしたらすぐにでも攻め込みにいけるの」

ミラン:「攻め込むって誰がそんなこと決めたの?」

研究者男:「神のご意志だ」

ミラン:「神の意志って・・・」



対立するミランと一同

研究者男:「中央の炉に火を入れるのは、ミラン、キミの役目なんだ。火の探求者であるキミのね」

ミラン:「アレックスはどこにいるの?」

研究者女:「どこにいるって、預言者(よげんしゃ)に会ってどうするの?」

ミラン:「やめさせるように言ってくる」

読了ありがとうございました。


今後もごひいきによろしくお願いします。

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