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太陽が昇らない国の物語(仮) 第三部  作者: 岸田龍庵
火と星の旅路
13/34

手荒い歓迎

目的地とは反対側に連れられてきたミランたち


そこで一行を待ち受けていたものは・・・

【寂れた村 夜】


【広場】

        


村の広場にいくつものかがり火が焚かれ、歓迎の(うたげ)が開かれている。

ただ歓迎というわりにはいささか地味な宴

表面上は楽しんでいるミランとフレイ

2人からやや外れた場所で酒を飲んでいるハイド

ハイド:「どうしたお前達、随分おとなしいじゃないか」

ミラン:「ハハハ・・・そうかしら」

長老:「ここに客人を迎えるのは久しぶりだ」



フレイ:「あのう、ここから帝都までどれくらいあるんですか?」

長老:「まあそう急ぐな客人よ」

フレイ:「しかし・・・」

宴に割って入る若者達

貧弱な武装をしている



若者:「長老、こいつが誰か知っているんですか?」

長老:「もちろんだとも」

若者:「ではなぜ客人として扱っているんです?」

緊張するフレイ

フレイにぴったりと体を寄せるミラン

長老:「我らの土地に来た者はみな平等に客人だ。それはお前達も知っていよう」

若者:「ここは俺たちの土地じゃない。あいつら帝都の人間が俺たちの土地を奪ったんじゃないか。

 そんなやつらを歓迎しているようだから我々はこの痩せた土地から前に進むことができないんだ!」



ミラン:「じゃあどうするの?」

ムッと来てつっかかろうとするミラン

フレイ:「ミラン、やめろよ」

ミランの足下にお世辞にも整えられてない剣が放り投げられる

若者:「剣を取れ、勝負しろ」



扱えもしない剣を取ろうとするミラン

割って入るフレイの手

フレイ:「僕が受けよう」

ミラン:「フレイ、ケンカを売られたのは私よ!」

フレイ:「君はこんなところでケンカをするよりも、もっと大事な役目があるはずだろ」

ミラン:「フレイ・・・」

みすぼらしい剣を手に取るフレイ

フレイ:「さあ、誰が相手だ」



フレイの前に立ったのは仮面のつけたやはり貧相な武装の兵士

しかし体つきはどうみても女性、それもミランと大して年は変わらない

若者:「我らが戦士は弱い者に見せる顔を持たない。ゆえに勇者は仮面を被る。戦いに感情を持ち込まぬ、男であろうと女であろうと関係がない」

長老:「やれやれ仕方ないが、大いに戦え勇者達」





ミラン:「ねえフレイ、あのお面の人って女の子よ。ねえ分かるでしょう、手加減してあげて」

ハイド:「決闘だなこれは。勇者と勇者の、手加減無しの戦いだ」



◆仮面の勇者の攻撃を、こともなげに受け流し

 致命傷にならない攻撃を与えて行くフレイ



仮面の勇者:「クソ!」

砂浜に転がる仮面の勇者

ミラン:「フ、フレイ・・・?」

フレイ:「それで終わりか勇者よ!」

今までに聞いたことがないフレイの恫喝

起き上がり、フレイにつかみかかる仮面の勇者

仮面の勇者の両手首をつかみ、相手の内すねを蹴り上げるフレイ

バランスを崩し砂浜にうつぶせに倒れる仮面の勇者

離れて相手が起き上がって来るのを待つフレイ

なおも起き上がってタックルを仕掛ける仮面の勇者

タックルには倒れないフレイ

仮面の勇者の細い腰を(つか)むとそり投げの要領で砂浜に叩きつけた




フレイ:「まだまだ!」

ヘロヘロになりながらも体を浴びせてくる仮面の勇者

反対に浴びせ倒すフレイ

先に立ち上がるフレイ

息も絶え絶えで起き上がれない仮面の勇者

ミラン:「ちょっとフレイなにやってんのよ、さっきと話がちがうじゃない」

フレイに食ってかかるミラン

ふらふらになっても立ち上がり向かってくる仮面の勇者

フレイは左手でミランを巻き取るように自分の背後に隠して、右手で仮面を鷲掴みにすると、そのままぶん投げた

叩きつけられる仮面の勇者

フレイの手の中にもぎ取られた仮面が残る



フレイ:「君の負けだ」

振り返る素顔の仮面の勇者

ミランと大して変わらない年頃の少女が肩で息を付いている

ミラン:「フ、フレイ?」

フレイ:「君はまだ弱い。でも君は私が戦ったどの騎士よりも勇敢だった」

勇者の手を取り立ち上がらせるフレイ

フレイ:「みんな、ここに新しい勇者が生まれた。大いなる祝福を!」

わき上がる歓声

予想外の成り行きにびっくりするミラン

酒を片手にニヤリと笑うハイド





【寂れた村 長老の天幕】


長老の天幕に招かれているフレイ、ミラン、それにハイド

ハイド:「さすがは調停者だな、星の騎士殿」

ミラン:「え?・・・」

ハイド:「なんで騎士殿が、弱っちい勇者をこてんぱんにのしたのか、わからねえだろうお嬢ちゃん?」

頷くミラン

ハイド:「戦って勝ったのは勇者で負けたのは敗者だ。だが戦うことを選んだ者は全て勇者だ。

 騎士殿は全力で戦うことで、相手を勇者って認めたってことだ。強いとか弱いとかは関係はない。騎士殿はそれを知っている。

 同時に騎士殿も村のみんなに勇者と認めてもらえたってことだ」

ミラン:「フレイったらスゴイじゃない」

フレイの背中をバシバシ叩くミラン

フレイ:「なんだよ、手加減しろとか言ってさ」



天幕に少女が入ってくる。粗末ながらもドレスにうっすらと化粧をしたようやく咲いたばかりの花のような少女

長老の斜め後ろに控えめに座る

仮面の勇者だった少女

読了ありがとうございました。


今後もごひいきによろしくお願いします。

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