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太陽が昇らない国の物語(仮) 第三部  作者: 岸田龍庵
火と星の旅路
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聖者の導き(みちびき)

10日たらずですが、100アクセス頂きました。


今後もごひいきにお願いしたいと思います。

【寂れた村 長老の天幕】


天幕に少女が入ってくる。仮面の勇者だった少女



長老:「粗相(そそう)をした。この娘はリエルという」

ミラン:「なんで女の子なのに勇者なの?」

長老:「それしかないからじゃろう」

ミラン:「それしかないって?」

ハイド:「ここは見たとおり土地は痩せていて、おまけに火の力が強すぎて作物もうまく育たない。

 子を産んだところでうまく育つかどうか。育てば口が減る。

 だったら戦士を育てて帝都との来るべき決戦に備えた方が良いってことさ」

長老:「勇者は尊敬される。ここでは戦士であり、勇敢であることが美徳なのだ。他の部族がなくなってしまっても勇者が尊敬されることはかわりはない」



ミラン:「だからって」

ハイド:「こいつらも必死なんだ。生き残るためにな」

フレイ:「ミラン、君の一族で火の力が使えないと、どうなる?」

ミラン:「それは・・・」

ハっとするミラン

フレイ:「生き残るためには、それなりの術(すべ)を持たないとダメなんだよ」

ムッとするミラン

ミラン:「なによ、『自分は全部わかっている』みたいな顔して!

 もう寝る。船長、船で寝る!」

ハイド:「はいよ、お姫様」



一緒に立ち上がろうとするフレイ

ミラン:「船長に連れて行ってもらうから大丈夫。

 メタリオンに守ってもらうから大丈夫」

怒って出て行くミラン

フレイの背中をドンと叩いて出て行くハイド

やや複雑な表情のフレイ



長老:「(大笑い)大変だな若い騎士よ。お前さんの姫様はよっぽど自由に育ってきたらしいな」

苦笑するフレイ

そのフレイの傍(かたわ)らに移り座るリエル。

フレイの首筋をリエルの熱い吐息がなでる

長老:「若い騎士よ。今日は休んで頂きたい。明日、また話そう」



フレイの手を取り、うながすリエル

席を立ち長老の天幕からは(・)な(・)れ(・)に向かう2人

狭い天幕の中で向き合う男女の勇者

フレイを見つめる艶(つや)っぽい瞳のリエル

リエル:「あなたがあの姫を好いているのは分かっています。

 でも今夜だけは私を倒した私だけの勇者でいてください。あなたのために、あの姫のために、私たちのために」

フレイに背を向けるリエル

リエルの細い肩からドレスが滑り落ちる





【寂れた村 沖合 夜】

ベリッシモ号甲板

寝ころんで1人酒を飲むハイド




【寂れた村 日の出】

井戸に投げいれられる桶(おけ)。水面に到着

ロープを引き上げるリエル

フレイ:「僕がやろう」

リエル:「大変ですよ」

次第に息が上がっていくフレイ



フレイ:「こ、これは」

汗だらけになりながら、満杯の桶を引き上げる

フレイ:「大変だ」

リエル:「ここに井戸ができる前はもっと大変だったんですよ。谷底まで降りていって水をくんでいたんです」

フレイ:「谷底まで」

リエル:「結構道が険しいので、水をくみに行くのは男の仕事だったんです」

赤くこすれてしまった手のひらを見るフレイ

フレイ:「どうして君たちは、この痩(や)せた土地で暮らしているんだい?」

リエルは一瞬なじるようにフレイを睨む

フレイ:「まずいこと言ったかな」

リエル:「聞いていないんですね」

フレイ:「何をだい?」



黙って内陸の方を指さすリエル

頂上に雪を被った裾野(すその)が広い山が見える

リエル:「私たちはもともと、御山の裾野にある里山で、御山に抱かれて暮らしていました。

 しかし5年くらい前に突如私たちは里山から追い出されたのです。

 私たちは帝都セイクレッド・ガーデンの人間達に追い出されたのです」

フレイ:「帝都セイクレッド・ガーデンに・・・」

リエル:「帝都の人間は一方的に私たちを追い立て、この土地を提供すると言いました。御山の麓から追い出されるわけにはいきません。

 多くの戦士が抵抗しました。そしてほとんどの部族がなくなったのです。

 私たちは仕方なく里山を出ました。いつか里山に戻る誓いを御山に立てて」

フレイ:「そうだったのか。知らないとはいえすまない」

リエル:「あなたは何も悪くありません。これは試練なんです。御山が私たちに与えた試練なんです」

フレイ:「試練?」

リエル:「そうです。強く生きて戻れ。父であり母である御山が私たちに課した試練なんです。いつか帝都の人間を追い出して御山に戻って見せます」



フレイ:「なるほど、君たちにとって御山が『畏(おそ)れ敬うもの』なんだ」

リエル:「それ以外に何があるのです?」

フレイ:「僕は星の騎士だった。僕たちにとって星は畏れ敬うものと同時に習うべきものだった。

 星のように光り輝け、星のように常に同じであれ、星のように高くあれってね」

リエル:「いろいろな教えがあるんですね」

フレイ:「じゃあ、大変だっただろう。見知らぬ土地に無理矢理こさせられて」

フレイ:「船の作り方、魚の取り方なんかを、全部ハイド様が教えてくださったんですよ」

フレイ:「船長が?」

リエル:「この井戸もハイド様が作ってくださったんですよ」



長老:「リエルの言う通りじゃ若い勇者よ」

フレイ:「おはようございます長老」

長老:「良きめざめかな?」

赤面するフレイとリエル

フレイ:「これは船長が?」

長老:「そうだ。なにやらヘンテコな棒を持って歩き回ってな。『ここを掘れ』などというから、びっくりしたもんだ」

フレイ:「それで井戸に」

長老:「誰1人として掘ろうとせんかった。するとハイド様は1人で掘り続けてな。

 水を出してくれたのだ」

フレイ:「へえ・・・」



リエル:「谷底から地面の下へ流れている水を掘っただけだと、おっしゃいまして」

長老:「あと三つくらいは掘れると言ったが、ハイド様はそれをならさらんだ」

フレイ:「なぜです?そうしたらもっと暮らしは楽になるのに?」

リエル:「この村に井戸がたくさんあったら、村は分裂してしまう。ハイド様はそうおっしゃいました」

長老:「水が一カ所にあるから村人が一カ所に集まる。

 村人が一カ所に集まるから会話が生まれ村がひとつになる。

 これが2つも3つもあったら、どうなるかね?」

フレイ:「なるほど、理にかなってますね」

長老:「御山の教えにも共通する。

 人は多くを求めたがる。その欲望は際限がない。

 生きる必要最低限のものがあれば良い。

 ハイド様は御山から離れてしまった私たちに、御山のことを思い出させてくれたのだ」



フレイ:「船長とは長いつきあいなんですか?」

長老:「いや大して長くはないが、あのような流水の聖者がわしらに手を貸してくれたのは幸いじゃ」

フレイ:「流水の聖者?」

リエル:「聖者に見えないのがおもしろいんですけどね」

フレイ:「流水の聖者・・・」

読了ありがとうございました。

今後もごひいきによろしくお願いします。

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