神が統べる街
船長ハイドの導きで、霧の向こうに行くミランたち
【海上 ベリッシモ号 賓客室】
ボードゲームを楽しむミランとフレイ
ドアが開き顔を出すハイド
ハイド:「これから霧の中につっこむぞ。おれがいいっていうまで外に出るんじゃねえぞ」
ミラン:「船長もやらない?ハントボード」
ハイド:「オレは外にいるよ。船長だからな。ところであの銀色の仁は外に出たままでいいのか?」
ミラン:「メタリオンのこと?彼は強いから大丈夫よ」
ハイド:「なるほど。じゃ出るんじゃねえぞ」
ドアを閉めるハイド
ミラン:「船の上が好きなんだね船長」
フレイ:「ミラン、聞いてもいいかい?」
ミラン:「なあにフレイ?」
フレイ:「船乗りも恐れる霧の向こうっていったい何があるんだ?ミランはどこへ行くつもりなんだい?」
ミラン:「そういえば何にも話してなかったね。気になる?」
フレイ:「心の準備くらいはしなきゃね」
ミラン:「霧の向こうには、神が統べる街があるの」
フレイ:「神が統べる街?」
【海上 ベリッシモ号】
濃霧の海を行くベリッシモ号
【帝都セイクレッド・ガーデン 上空】
霧の向こうに中央に巨大なドームがある都市の威容が見える
【帝都セイクレッド・ガーデン 司教庁舎】
【最上階 執務室】
執務机に向かう神官風の男、預言者アレキサンダー
卓上には記号が刻まれた粘土板と巻紙とペンがある
部下の報告風景
預言者:「火の探求者が戻る・・・か」
黙っている部下
預言者:「ミランだけか?」
部下:「護衛の騎士が1人おりますが、星の守護者ではありません」
預言者:「船だろうな、もちろん」
部下:「流水の聖者があやつる船で向かっています」
預言者:「流水の聖者の船?」
目を閉じて物思いにふける預言者
部下:「いかがいたしましょう?」
預言者:「とは?」
部下:「やっかいなことになる前に手を打ちましょうか」
預言者:「いや、それには及ばない。
大事な報告をありがとう。父なる神には私から報告をしておこう」
退出する部下の神官
新しい巻紙を取り出して筆を走らせる預言者
預言者のペン先:(父なる神よ、ご神託を賜りたく存じます。父なる神の息子より)
ペンを手放す預言者
勝手に起き上がり勝手に走っていくペン
預言者のペン先:(案ずることはない神の子よ。すべてを受け入れ全てを包み込むことだ。神の国はやがて到来する。確実に)
預言者:「全てを包み込め・・・か」
【海上 ベリッシモ号賓客室】
フレイ:「神?神ってなんだい?」
ミラン:「畏れ敬うもの、すべてを創造した唯一の存在」
フレイ:「畏れ敬うって、それは太陽とか星とか水とかじゃないの?」
ミラン:「神様は全てを創ったの。太陽も星も風も水も、イヌや猫や牛や馬、魚も鳥も、全部神様が創ったんだって」
フレイ:「全てを創った?」
ミラン:「私が言っているんじゃないのよ、神の都に住む人たちはみんなそう信じているわ」
フレイ:「そんな話きいことないなあ」
ミラン:「神様は言うの。神の前には全ては平等なんですって」
フレイ:「平等?」
ミラン:「そう。男の人も女の人も子供も大人も」
フレイ:「みんな平等?」
ミラン:「そう、火の民もね」
【海上 ベリッシモ号】
陸地を望む
神の都がある陸地
【海上 ベリッシモ号】
寂れた浜辺に舳先を向けているベリッシモ号
ミラン:「え?ちょっと船長?どこへ向かっているの?」
ハイド:「悪いな、本当は帝都セイクレッド・ガーデンの港にバアーンと入港してえ所なんだが、オレはお尋ね者でな、そりゃ出来ねえんだ」
フレイ:「お尋ね者?」
ミラン:「それで、ここはどこなの?」
ハイド:「帝都のド反対。寂れた砂浜さ」
【寂れた砂浜】
桟橋もない、砂浜につけられる連絡小舟
その小舟をみすぼらしい服装の一団が出迎える
砂浜に降り立つミランの一行
ハイド:「ようみんな、客人だ。もてなしてくれ」
ミラン:「船長、ここどこ?」
ハイド:「ミラン、お前は帝都から来たんだろ」
ミラン:「知ってたの?」
ハイド:「光りは影を産む。お前が暮らしていた帝都セイクレッド・ガーデンが光りだとすればここは影だ。
真っ白なやわらかいパンもなければ、脂たっぷりの肉もない。みずみずしい野菜もない痩せた土地だ」
長老:「そうじゃ客人よ。ここは乾いた土地だ。この地は火の力が強すぎる。
故に土地は乾いてしまい水は消え去ってしまう。
だが、そんな私たちでも客人をもてなす術は持っている。さあ、こちらへ」
顔を見合わせるミランとフレイ
先を切って歩き出すハイド
黄金の土台にサファイアをあしらったアンクレットをつけた、ハイドの右足が砂浜を歩いてゆく
読了ありがとうございました。
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