母親と言う恋人【26】
同時にこれは、少し前に小人ウルズが私へとヘンテコな魔法を発動させた時に生まれた効果だったのだろう。
それなら、直接本人に聞いた方が良い……そう思ったのだが、どう言う訳か? 小人ウルズの姿は何処にも見当たらない。
……いつの間にか、何処ぞへと消えてしまった模様だ。
本当に神出鬼没なヤツだ……そして、聞きたい事がある時に限って姿をみせない。
私は、地味に役立たずな過去の女神が、いつの間にか煙の様に消え去っていた事に気付いて、軽く胸中で舌打ちしていた。
……まぁ、良いさ。
この鎧に、どんな効果があるのかは知らないが……女神が用意した特殊な鎧だと言う事だけは簡単に予測する事が出来る。
そして、その程度の解釈であっても、特段困る事だってない筈だ。
もっと言うのなら、今の私が考えなくてはならないのは、小人ウルズが容易したんだろう、特殊な鎧なんかじゃない。
「こんな、私でも……愛してくれるかな? お母さん?」
「い、いやぁぁぁぁっっっっ!」
軽く可愛い女の子っぽい、ぶりっ子ポーズを取りながら答えた私を見て間もなく、キリは泣きながら叫び……そして、走り去ってしまった。
……少しやり過ぎたか。
けれど、このぐらいはやらないと、キリも納得してくれなかったんじゃないかな……?
なんとなく、そう思う。
走り去って行くキリの姿を、私はゆっくり見送るかの様に見据えた。
……そして、言う。
「母さん……ありがとう」
短く、一言だけ呟いた。
お礼を言ったのは、他でもない。
アナタが生きた。
アナタが恋をした。
そして、結婚をして……愛を育んだ結果、俺と言う息子が生まれた。
私を産んでくれて……ありがとう。
残念ながら、母親に育てられていた頃の記憶はない。
恐らく、二歳になる少し前までは、俺も母親の愛情をしっかりと受けていた筈なんだ。
だけど、流石にそんな小さい時の記憶なんてなくて。
だから、記憶がない部分は、本当に本当に申し訳なく思う。
……でも、それであっても、だ?
今と言う自分が居る事。
現代に戻れば、愛する妻がいる事。
……未来になれば、可愛い娘や息子が生まれる事。
それら全ての原点は……キリにあるんだ。
やっぱり、お礼を言わない訳にはいかないだろう。
ドォォォォォォォォォンッッッ!
………っ⁉︎
自分の母親に対しての感慨に浸っていた……その時、ニイガ城の方角からかなりの規模の爆発音が発生していた。
しかし、それでも目を覚さない見張り番!
ちょっと、強く叩き過ぎたか!
……って言うか、これ……本当に大丈夫だよな?
実は、結構な致命傷で、昏倒ではなく意識不明の重体とかないよな?
………。
まぁ、あれだ、あれだよ、あれ!
こう言うのを、致命的なかすり傷と言うんだよ!
うんうん、そう言う事にして置こう!
致命的なのに、かすり傷ってなんだよ? って言うツッコミを喰らいそうだけど、世の中にはそう言う特別なかすり傷があるんじゃないの……かなぁ? 多分、きっと……そんな気がするぜっ!
……って事で、急ごうか!
魔力的な規模から予測するに、巨大爆破魔法辺りじゃないだろうか?
エナジー量的にも、魔導的な技術力的にも、かなり高度な魔導師が発動した物だと推測される。
……私からすれば、単なる爆竹程度の威力にしか見えないがな!
そして、この爆発を生み出している渦中に立っているヤツもまた……爆竹に気が生えた程度の感覚しか持たなかったんじゃないのかと、自分なりに予想していた。
その答えも簡単だった。
その渦中にいるヤツのエナジーが、全く減っていない。
ダメージと言うダメージなんぞ受けて居なかったに違いないのだ!
そして、その渦中の存在こそ……今回のターゲットである事もまた、間違いない!
「よし、今行くぞ、こんにゃろめ!」
意気軒昂に、高々と声を張り上げた私は、勝手口と思われるドアを開けて、ニイガ城の敷地内へと入って行く。
その途中で、
『ちょっと、イリ! 遅いじゃない! もう、戦闘が始まってるよ!』
今頃になって、いきなり出て来た小人ウルズ。
相変わらず、必要な時はいないクセに、不必要な時になると、何処からともなく現れる。
本当に面倒な女神だぞ……ったく!
「ああ、分かってる……今直ぐ行く!」
『ちょっと待って!』
「……って、そこで止めるのかよっ!」
意気込み勇んで、前へと一歩ばかり足を向けた直後……何故か小人ウルズに待ったを喰らった。
お前は、何がしたいんだよっっ!
マジで意味不明な事をして来る小人ウルズに、私は地味にイライラした顔になっていると、
『イリが、この時代を頑張った報酬として、私なりのプレゼントを用意してたんだよね?』
小人ウルズは、笑みのままトンチンカンな台詞をほざいて来た!
それを、今言うかっ!
TPOってのを考えて物を言えよっっ!




