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母親と言う恋人【6】

 例え、自分の都合に合わせた結果、キリと恋人になっていたとしても。

 生活の為に、仕方なくそうしていたとしても。


 それでも、今は私の恋人だ!


「昔の女なんて、私が忘れさせれば良いんじゃないか!……うん! そうだよ!」


 まずは、今のアドバンテージを『私が』利用しよう!


 きっと、この程度の事なら……おあいこだと思う。

 だから……逆に、今の立場を利用してやるんだ。


 けど、そうだね……用済みにならない様にだけ注意しないとね……。


 前向きに、まだ希望があると思いたい気持ちと、イリに捨てられるかも知れない不安と恐怖が交錯する中……それでも、私はイリへとアプローチを掛ける努力をする所から始めようと考えるのだった。




           □イリ□




 キリのアタックが激化している……気がする。

 否、これは気のせいなんかじゃないな。

 なんとなく、鬼気迫る勢いだ。

 

 なんてか、出会ったばかりのキイロと見ているかの様だ。

 思えばキイロのヤツも、押し掛け女房よろしく状態で、俺の家に住み着いてしまったからなぁ……そこらの関係もあってか? 最初はかなり俺に猛アピールしてたっけ。


 ふふ……懐かしいな。


 思えば……俺は、こんな風にグイグイ引っ張って来るタイプに弱いのかも知れないな。


 結局、押しの強さに流されてしまう形で、俺はキイロと付き合う事になってしまった。

 そこから以降は……まぁ、苦闘の始まりだったよ。


 ちょっとでも浮気紛いな出来事があれば、その時点で丸焼きだ。

 日々……嫁のドラゴンブレスと戦っていた気がする。

 そして、時間の経過と共に……嫁の精神疾患は日に日にエスカレートして行ったなぁ……うーん、懐かしいぜ!


 ………。


 俺……なんでキイロと結婚したんだろうな……?


 内心でのみ、珍妙な疑心に囚われ……これまた珍妙な自問をしてしまう俺がいたのだが……まぁ、余談だ。

 こんな事を考えていたら、キイロと付き合う事なんざ出来ないからな!


 そう言う事にしとけ!


 ……っと、そこはそれで良い。


 今ある問題は、キイロが重度の精神疾患を患っている事実ではない。

 そう言う悩みは、未来に戻ってから考えても、全然遅くはないだろう。

 ……つか、悩みたくないんだが? 本音は!


 どちらにせよ、今の俺が考えないと行けない事は、キイロの事ではない。


 自分の母親……キリの事だ。


 俺なりに色々考えた。

 もう、いっその事……正直に全てをぶちまけてやろうか?

 こんな事も考える。


 けれど、そんな事をしてしまった日には、未来の俺がいる時代へと戻る事は不可能に近くなってしまうだろう。


 何故ならば、キリが逆恨みを受ける事で事件に巻き込まれたからこそ、俺はスラム暮らしをする羽目になり……そして、賞金稼ぎなんて言う、ヤクザな商売をする事になって行くからだ。


 そして、この『賞金稼ぎになる』と言う部分こそが、俺と黄色の二人を結び付ける、出会いのきっかけになっていた。

 つまるに、キイロと出会う為には、俺は賞金稼ぎになってないと行けないんだ。


 そうなれば、スラム暮らしをしないと行けない事になる。


 だけど……もし、ここで『これから起こる出来事』を、全てキリに話してしまったら……どうなるか?


 答えは簡単だよな?

 どう考えても、ちゃんと対抗策を取ってしまう。

 自分から好きこのんで死にたいとは思わないだろうし……自分の息子が歩むその後が、スラム街で惨めに生きると言う話しなんぞまで聞かされてしまえば、絶対に悲劇を回避しようと考えるに違いない。


 その結果……未来は大きく変わってしまい、俺がいた時代へと戻ったとしても、俺の知る現在に戻る事が出来なくなる。


 現代に戻っても……結局、キイロと言う奥さんが俺の隣で微笑んでくれる……なんて事はなくなる訳だ。


 もちろん、その末に生まれて来るだろうミドリだって以下同文。


 元来、そこにあったであろう時間の流れが変わってしまった事で、多くの存在が消滅してしまう。

 そして、その要因を作ったのは……俺なりに持っていた、つまらないプライドのせいだ。


 何もかも……俺が招いた事だと思っている。

 ちゃんと割り切った行動を取っていれば、今の様な状態になんて発展していなかった。

 キイロとミドリ……可愛い嫁と娘を失う事だってなかったに違いない。


 そして、それを絶対に後悔しないと誓っていた。

 ……そう、誓った。


 あの時の俺は、ああするしか無かった。

 これは決して、自分に言い聞かせている訳ではない。

 今でも思っている。


 人間として、最低限の心構えを……筋の通らない物に対して、自分なりに見せた細やかな反発をした。


 だから、これで良いんだと思えてならないんだ。

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