第17話「これは一狩りって事でいいのかな?」
ゴブリン討伐依頼を受けた俺はさっそく門へ向かう。夜にはモンスターが活発化するので閉門していまうためだ。
「すみません門番さん。通ります」
門番は驚く、それもその筈……まだ俺がこの町に来てから一、二時間しかたっていないのだから。
「観光はもういいのかい?それに、また一人で出歩くのは感心しないな。運が良いだけで生きていくのは無理なんだよ?」
そんな門番の忠言に俺はポーチから自慢気にギルドカードを差し出す。
ギルドカードは実力を示すのに何よりの証拠であり、そらを見た門番は分かりやすく驚く。
「えっ!!Gランク!?この歳でか!?。普通なら15歳でやっと見習い冒険者なのに君は凄いね」
何度もギルドカードを見た後でカードを返した門番が俺の頭を撫でる。
見知らぬ男に撫でられても余り嬉しくなかったのは内緒だ。
「僕はゴブリン討伐に行って参りますのでそれでは」
「君みたいな子供にギルドカードが発行されるのは異例だが、実力は本物と言う証明なんだろうな……。だとしても気をつけてな」
「はいっ!!」
こうして俺門をくぐり眼前に広がる草原へ飛び出すのであった。
門を抜け、周りを改めて見渡すと辺り一帯の草原が広がっている。
そこには平和が広がっており、町の近くであるためか盗賊はおろかゴブリンすら見つからない。
依頼書によれば近くに森があるそうなのでその森に向かう。
ただ街道が整備されていて森への道も歩いていくだけなので迷いようがない。
「取り敢えず森にはついたな。」
まずはホッと一息つく。
あくまでも目的はゴブリンだ。
きっとマヌケな個体がすぐに出てくるであろうモンスターなので入り口付近を探索する。
迷ったり強力なモンスターに遭遇したり複数のモンスターに囲まれたりしたら一人では危険だからだチート無双が出来ない以上は慎重に行かなければ。
その点逃げを重視する入り口待ち構え作戦は実に合理的と言える。
「ゴギャガギャギャァ」
「ギャギャギャ」
「ギャ!!」
作戦通り……。
何故か入り口付近を徘徊するゴブリンだが、すぐに骸を晒す愚物を気に掛ける必要は無い。
取り敢えず3匹か……1匹ずつが理想的なんだけどな……この肉体じゃ一発貰ったらヤバいしね。
ただゴブリンの集落とかになると新人冒険者は大抵返り討ちになってたなぁととある漫画を思い出す。
俺の切り札である中級魔法は選択肢に無い。
なぜなら火力が高過ぎるから……討伐証明の為の素材を吹き飛ばしたら意味無いしね。
「唸れ大地、アース……」
ドゴォン!
初級土魔法がゴブリンの体を貫く。
まずはゴブリン1匹を仕留める事に成功する。
よしっ、と心の中でガッツポーズ。
「ゴギャギャ!!!!」
「ゴギャギャ??」
馬鹿なのか?俺の不意打ちに対してゴブリンは何が起こっているのかわかっていない様子だ。
それにしても詠唱は小声で良かったわ。
いやわりかしマジで、やっぱりチキンとしては遠距離封殺が一番だよね!!?。
「吹き荒べ風!!ウィンド!!」
二体目のゴブリンの体をあっさり切り裂く。
ここまでくれば後は容易い。
「はっ!!!」
残りは投合の短剣で止めだ!!!。
余裕があるならちょっとかっこ付けたい年頃である。
そしてゴブリンの脳天に短剣が突き刺さる。
いや。村で投合はめっちゃ練習したからね?動き回ってんならともかく全然動いてなかったしいい的でしたわ。
「ふぅ。なんとかなった……」
一人での初戦闘であるゴブリン達との戦闘に勝利した。
ただ、この後の剥ぎ取りが問題なのだ。
魔物狩りは幾度も無くしてきたが、剥ぎ取りは村の漁師に任せっきりだったし。
なので剥ぎ取りは初めてで正直眼前のグロテスクなゴブリンの死体をまじまじと見る羽目になってしまったのでめっちゃ吐き気がする。
血の匂いも凄く酷いしモンスターとは言え、人型殺すってのも精神的にダメージだ。
ここでナイフが無いのに気付く、物忘れが激しいので今更だが。
仕方ないので短剣を使う。やりづらい……。
こうして初めての剥ぎ取りに苦戦しつつも三匹分のゴブリンの耳をゲットした。
「うぇ……気持ち悪ぅ……」
目的を達したのはいいが、ゴブリンの耳から緑の血が流れている……気持ち悪い。
兎に角不快感が凄い、村に居た頃は肉が有益である魔物しか触らなかったからなぁ……。
だが、打開策が無い訳では無いのだ、こんな時に『あの』初歩魔法が有効だ。
「水よ。アクア」
簡単な詠唱で発動した魔法でゴブリンの耳を洗い流す。
初歩魔法は威力こそ実戦には不向きではあるがこうした身近な使い道があるのだ。
耳を別に用意した小袋にいれる。
いやさ、腰のポーチに直接いれたくないしね。
俺はそういう所は結構神経質なんだよね。
転生しても日本人らしい所残ってるのだ。
ポーチには所持金、やっすいポーション(小さめ)、地図(村から町の周辺なので実質もうゴミ)デュアルボアの干し肉、筆記用具、ミルのネックレスがはいっている短剣と剣、杖は標準装備だ。
装備は装備しなきゃ使えないってのはこういう事だね。
……と、本当に実感するよ。
本当……ゲームだとなーにいってんだ?コイツ。ゆとり仕様かよ。
そんな風に思ってました、マジですんません。
格好は普通なのだが一応ローブ?をつけている。
羽織えるよ、母のお手製だ。
「さーてと。残りは2体か……歩き回りたくねぇしかといえここで時間潰すのはなぁ待っててきてくれるもんかねぇ。そうしたら待ち伏せ出来るんだけど夜になる前に帰りたいし」
もう夕方になりそうだ、夜更けは魔物が凶暴になるので危険だし帰りたくなってきた。
門番もゴブリン如きに時間を使いすぎるとは思っておらずそれ故に俺は止められなかったのだ。
「歩き回るか。但し入り口付近だ。これで会えれば一石二鳥だし迷わずに行けるね。入り口なら運悪く大型モンスターにあったりもしないだろうしね」
フラグを無駄に建てつつも入り口に引き返す。
とは言え、それほど森の奥に入り込んだ訳では無いのだけれども。
「ゴギャギャ?」
「ゴギャャ!!!」
気の抜けた顔で入り口に向かっているとこちらを視認したかの様な声を上げるゴブリン達。
やべぇわ!!、まさかの正面エンカウント!!。
「吹き荒べ風!!ウィンド!!」
さっくり詠唱をする、先手必勝だね。
それに片方のゴブリンはランダムエンカウントの為、威嚇してたしね。
サンダーとファイアは証明素材すら焼きつくしかねないので今回はお留守番だね。
「ギャ!!」
あっさりとゴブリンの命の灯火が消える。
「ふっ!!!」
仲間のゴブリンが瞬殺された事に動揺を隠せず、隙だらけのゴブリンに投合の短剣を脳天に投げて突き刺しあっさりと2匹目のゴブリンを仕留める。
これはパターンはいってきました。
血の匂いとグロテスクな死体にまだ慣れず不快な気分でさっさと剥ぎ取りを終える俺であった。