春先の女神は微睡む
うららかな陽気に包まれて、花々が楽しげに咲く光の庭園に、彼女の宿木はある。
現世と幽世の間に横たわる、唯一の支え、世界樹。この木が軸となって光の庭園に存在するからこそ、この世界は確立されている。
世界樹の太く大きな根に座り、木漏れ日を浴びて彼女は目を閉じる。
とても大きな幹に青々と枝葉は茂り、風が吹く度に心地よい音を奏でた。
「今日も平和、良きかな、良きかな。」
二つの空間を繋ぎ、光の庭園を維持する管理者である私は、名がない。
いつだかの人間には女神と呼ばれていたようで、姿を現す羽目になった大きな戦の時に知った。アレは本当に大変だった。
何処ぞの頭沸いた馬鹿どもが、今まで世界樹で間接的にしか繋がらないはずであった二つの空間を直接繋ごうとしたのだ。おかげでいらない苦労させられたうえに、無理矢理繋いだ為に離せなくなってしまい、一部だけ繋がったままなのだ。
…ああ、いけない、口が悪くなった。
そのせいで永く争いが絶えなかった二つの空間も、今は扉一枚ぶんの空間しか繋がっていない。その扉も、とある2人が管理してくれていた。
重要機密である為に知る者は少ない。
夫婦となった2人の間に娘が生まれたと聞く。もうすぐその役目も娘に引き継がれるはずだ。
楽しみにしていた娘の成長も、夢の中で見れるだろうか。
「ふふ、あれらの娘だ、面白い娘に育ったであろう。
さあ寝よう、少し力を蓄えねば。」
春眠は暁を覚えないものであろう。
夏の暑い陽射しまで、一眠りさせてもらおうか。




