修業開始
聖達は修業を開始した。
取り敢えず、茅場と卓でまずやった。
それは、茅場の申しでだった。
どうやら、思うところがあるらしく、受ける卓もまた、思いがあるらしい。
それに、聖は笑う。
「いつまでも、ヤダね。子供かよ」
玄武がバカにしたように言う。
「そう言うな。あの二人にしか分からないことがあるんだろう。きっと」
「分からないことだな」
聖は「ああ」と頷く。
「これは、長年の付き合いならではでな」
「人間って面倒だな。短い人生の癖に、そんな思いが深いとは?」
呆れたように、白虎が出てきて言う。
「そうだな。お前たちにして見れば、瞬きする時間みたいなものだな。でも、人は短い人生だからこそ、面白いんだ」
「そう言うものかね?」
分からないと言うように、白虎は言う。
「これは限られた命を持つ者にしか分からないな。限られているからこそっと言うわけだ」
面白そうに、聖は笑う。
「俺には分からねぇ」
「分からなくて良い。逆に人もお前たちの苦しみを完全に理解することが出来ないんだから」
「そうかもな」
白虎が納得すると、消える。
「波夷羅、来い」
卓は呼ぶ。
「午武将、お前の力を貸せ」
「御意」
そう言って、頭を下げた後、波夷羅」に向かって行く。
だが、十二神将を前にしては、傷一つ、かすり傷一つ付けられなかった。だが、茅場にはそれも予測済みだったようで、呪縛を掛け、攻撃させる。
「お前には言いたいことが、たくさんある。お前に取っては先代こそが認めるに足る陰陽師だったのかもしれない。でも、それはもう亡くなった人だ。生きている者には所詮叶わない。そうだろ?」
「それは如何かな?」
含み笑いをして卓は言う。
「所詮死んだ者だ。例え名を穢すようなことをしても、その人個人は穢せはしない」
茅場の言葉に卓は驚く。
「ザレイ、マカザレイ、ウキモキアレイ、アラバテイ、チリタハテイを牛武将」
牛武将に霊力補助を願う。それは、卓をも驚かせ、本気になって、
「波夷羅よ、式を操っている者を攻撃せよ」
茅場に当たり気を失う。
「耳が痛いな。確かにこいつの言う通りだ」
「卓兄も耳が痛かったんじゃないですか? 茅場はこれを彼方に伝えるためだけに、彼方と始めに対戦した。自分の持つ式じゃ彼方に叶わないことを知っていながら」
「それだけじゃない。多分、償いもあったんじゃないか?」
「償い?」
「ああ」
卓はその時の事を思い出し笑う。
「知っているか。こいつ、俺が出て行った時、殴ったんだ」
「えっ?」
「今出て行けばお前がおかれる状況が悪くなるのが分からないのかって、お前の事も考えろってな」
それに、聖は笑う。
「如何した?」
「私も殴られました」
「何故?」
「卓兄の帰りを夜遅くまで、外にいて雨に打たれていたから」
「そうか? 二人揃って、彼奴にな」
卓はそれに、笑う。
そして、卓は思った事を言う。
「私も良い加減考えを改めねばな。確かに、こいつの言うように、誰1人として先代は、穢せないな」
それに、聖も頷く。
「極端な話、例え犯罪者が一族から出ても先代の名が穢されることはありません」
「そうだな。そう言った意味でも、私のして来たことの方が篁の名を穢しているな」
卓はその考えに至り、反省する。
「私がこれまでして来たことはなんだったんだろうな」
「今は落ち込んでいる時間はありませんよ、卓兄。式だけでなく、我々は呪法をもっと上手く操れなければなりません」
「そうだな。叔父様はそれが、うまかった」
「ええ、でも父さんには響ちゃん達を守らねばならない」
「それなんだが、交代で変わって教えを受けないか?」
「叔父様が守りたいのは分かる。でも、そうも言ってられないだろう?」
「そうですね」
聖も頷く。
「時間がないんだ。私たちには」
「ええ。急がなくては。悠長に、構えている分けには、行かない」




