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闇から出ずるもの  作者: まめ
ここから新作
15/21

卓兄の思いを読み解く

「ここが篁の家だ」

それを見て海は驚く。

「大きいお屋敷だね。これなら、僕が入ってもお邪魔にならないね」

「ああ、全然。それに、小さな女の子もいるよ。それに、色々な人間が入り乱れてるし、淋しいと思う時間はないと思うぞ」

「へぇ、そんなにいるんだ。それに空もいるしな」

「うん」

元気に頷く。

「その空って、名前は何だ?」

空が出て来て不機嫌そうに言う。

「海が付けた名だ。自分を青く輝かせてくれるのは空だってな。正確に言えば太陽の光なんだけどな。どうだ? 気に入っただろう? 自分の存在からお前の立場を思って付けた名だ。そう思うと、感慨もひとしおだろう?」

「ふーん」

鬼はただ、頷く。

「まぁ、イイか。いつまでも鬼じゃカッコつかないしな」

「嬉しいなら、嬉しいと正直に言え」

「別に嬉しくなんか」

「素直じゃないね。恩義ある子にもらった名だ、嬉しくない訳がないだろう」

聖が言うと舌打ちし、

「なんか、全部見透かされているようで、面白くねぇ」

鬼がそっぽを向くと茅場が怒る。

「あなたの頭首に対する態度は許せません」

それに、聖は笑う。

「では、頭を下げてればいいのか? その影で笑っていても、私は素直にそのまま出してくれている方が良い」

「あっそ」

面白くなさそうに空は言う。

反対に聖は面白そうに笑う。

「お前はそのままでいろよ」

「聖様、それでは、式達に締めしが付きません」

「それで付く締めしとは、如何ほどの物か? 私には分からん。それで付いた締めしが、その霊が持つ式の思いはどうなる? 式となったモノは式となるモノに忠誠を誓うそれだけで良いだろう? それに、空は、海を生かすためにここまで、頑張ってきたんだ。もう、これ以上いいだろ。それに、こいつはこれからも海を生かすために、これからも共存するしかないのだから。それに、海には私も頭を下げなければならない。頭を下げさせる気はないよ」

「そうですね。そうかも知れません」

パタパタと元気に走って来る足音が聞こえる。

障子が開いたと思ったら、元気に響が言う。

「お兄ちゃん、もう一人兄妹出来たって?」

「ああ、この人がお前のお兄さんだ仲良くしてくれ」

「いくつ?」

「12か11だ、お前誕生日は?」

「まだ11だよ。明後日12になる」

海はしゃがむと、響の目線になる。

「お前、それ早く言っておけよ。あ〜、もう、これからデパートに行くぞ」

「えっ。どうして?」

「お前の誕生日プレゼントを買いに行くぞ」

「えっ? 僕を生きさせてくれたのが、最高のプレゼントだよ」

嬉しそうに言う。

「それだけじゃ、ダメだ。な、響?」

「ダメだよ。せっかくのお誕生日何だからプレゼントもらわなきゃ。行こうよ、お兄ちゃん」

手を引っ張られ驚愕する海。

聖はそれに、笑う。

「えっ、え?」

「行きなよ。妹が言ってくれているんだ」

「ハァ〜」

「じゃあ、ウミの分を」

「海君の分もね。ある意味彼方は今日生まれ直したようなモノです」

「萱場、良い事言うな。そうだ、お前は誕生日を2つ持つんだ。得したな」

「えー、ずるい2回も有るなんて」

「だが、その代わり失ったモノは大きいぞ」

聖の言葉に響は黙ったあと、謝る。

「ごめんなしゃい」

そして、涙を零す。

急に泣き出した響きに驚いたように、言う。

「如何したの?」

聖が響の代わりに言う。

「お前にひどい事を言ったって思っているんだ。そんな事ないなら、慰めてやれ」

「ごめんね。君は優しいんだね。お名前は? 歳も教えてくれたら、嬉しいな」

「響。5歳です。おにいちゃんは?」

「僕は海。よろしくね響ちゃん」

「宜しくお願いします」

「5歳か、緑と同い年だ」

「緑って、誰?」

「僕の妹だった子」

過去形である事に気付き、響はその理由を聞けなくなる。

響は、悲しそうな顔をする。海は慌てた様に

「でも、大丈夫だよ。可愛い君と言う妹が出来た。君には迷惑かもしれないけど」

「迷惑なんてない。それより、嬉しい」

慌てたように響は言う。それに、海が慌てたように言うと、響は嬉しそうに笑う。

聖はそれに笑う。

「そうだな。面食いなお前には、たまらないシュチェーションだろうな。茅場に結婚を申し込んだぐらいだしな」

聖が言うと響は顔を真っ赤にしながら怒る。

「お兄ちゃん、それは秘密なの。言っちゃダメ」

「そうか、悪かったよ」

聖はそれに笑う。

「悪かったよ。許してな。その代わり、お前も行こう海の誕生日を買いに」

それで、機嫌を治した響は元気に返事をする。

「じゃあ、行こう」

「うん。行こう。海お兄ちゃん」

手を引かれなすがままの海。

それを見て聖は笑う。

「あいつにも良い気晴らしができたな」

茅場にクスリと笑う。

「ええ、実の妹と歳が近い子がいて良かったですね」

「ああ、本当に。私はあの子から家族を奪った。それを癒すのが、妹とは人の縁とは面白いな」

「ええ、本当に・・・」

茅場も笑う。

「さて、行くか?」

「ええ」

そう言って茅場はいつもの通り車を回す。

「何が見たい?」

海に聞くと、何故か響が答える。

「お人形がいいな」

聖はそれに吹き出しながら、

「響、お前の誕生日は先々月迎えたばかりだと思うが?」

「何、言っているのよ。海お兄ちゃんが家族になったお祝いをやるのよ。別にプレゼントが欲しい訳じゃないんだから」

明らかにやせ我慢とわかる事を言い聖は笑う。

「そうだな。響の言う通りだ。海を迎え入れる意味でも、響お前も選んであげなさい」

「うん」

元気良く返事をする。

海はもう何も言えなくなる。

車に乗り、近くのデパートへ行く。

「玩具屋さん」

鼻歌交じりに行く響に聖は笑う。

が、次の瞬間響は凄い早業で、響を後ろに引っ張る。

響が歩いていた道が陥没していた。

響は突然の事に泣き出す。

「卓兄、これは何の真似ですか?」

「お前のご招待を受けたまで。そんなに、怒る事でも有るまい。お前が頭首になってからも、大人しくしていたんだ」

「それは、良かったです。でも普通に会いに来れませんか?」

「だって、それじゃあ面白くないだろう?」

「面白くなくて良いのですがね」

溜め息交じりに聖は言う。

「私はただ、話がしたいと言っただけなんですがね。何も私の力量を見てくれと言ったわけじゃないんですがね」

「そうだったかい?」

「技とここの子を狙うなど、何を考えているのですか?」

「それは私のささやかな祝い。とでも言えば良いのかな?」

「何が言えば良いのかな? ですか? この子に当たっていたら如何するのですか? もし、当たっていたら、彼方が敬愛する芳父様の逆鱗に触れますよ」

「だから、お前達のいる時を狙ったろ。萱場も式持ち出し、鬼も連れている今なら、平気だろ」

その言葉に聖は驚く。

「お前も式を持っているのか?」

茅場に聞くと、

「彼方達の持つ十二天将や十二神将には遠く及びませんが、一応、十二支族を持っています」

「そうか? お前も?」

「言わなかったことに怒りますか?」

「いいや、強い見方を得たと悦んでいるよ。で、卓兄さんも聞き及んでいるかも知れませんが、篁家に喧嘩を売ってきた愚か者がおります。それに、答えねば、なりません。力をお貸し下さい」

聖が頭を下げると、卓は驚いたように言う。

「篁の人間がその様に、簡単に頭を下げるな」

「えっ?」

と、驚く聖。

「賀茂家と土御門家だな」

「やはり、知ってましたか?」

「当たり前だ。私も篁の後継者の一人、そんな人間が知らなかったなどとは、けして口が裂けても言えん」

「さすがです。私はついこの間まで気付きませんでしたよ」

「それは、仕方ないな。私がお前にちょっかいをかけていたからな」

「それは、良いんです。それよりも、手を貸して頂けますか?」

「私でよければと言いたいが、それは私に勝ってからにしてもらおう」

「えっ? 突然わけ分かりませんが、それが卓兄の条件ならお受けします」

そう言って、聖は呪符を投げる。

そして、呪印を結ぶ。

卓が言う。

「まだ、甘い。毘羯羅出て来い」

「ちっ」

聖は舌打ちする。卓は軽く笑う。

「十二天将を使わずに、私を倒せると思うな」

「玄武お前の力を貸せ」

玄武が出て来ると言う。

「御意。俺は何をすれば良い?」

「お前は、毘羯羅を足止めしろ」

「ほいよ」

そう言って、玄武は毘羯羅に向かって行く。

激しい激戦が繰り広げられる。

その間に聖は、再度呪符を投げる。今度は式は使わない。

「摩尼羅、蹴散らせ」

その瞬間弾かれる。

「卓兄、感謝しますよ。玄武と私の練習の場になります」

「俺もだ。十二神将の修行には持って来いだ」

卓も笑う。

「なかなか、玄武と対等に戦える者がいなかったので、助かりましたよ」

「お役に立てたようでそれは、良かったよ」

と、拍子抜けしたように言う。

「残念だったな。お前の従兄弟様は、お前が思っているよりも強い」

茅場も笑って言う。

「そのようだな。私の中で、お前の評価を直さねば」

「滅相も御座いません。で、手を貸して頂けますか? その代わり、私は卓兄様の願いを一つだけ叶えます」

「願いか?」

「卓兄様の願いは篁家の頭首が横道にそれる事なく、真っ直ぐ進むことでしょう?」

「なぜ?」

「卓兄様は、父様を敬愛していたわけじゃない。そうでしょう?」

「なぜ気付いた?」

「だって、兄様の中で父様はもう切り捨てられてたんだ」

「それは、如何言う意味ですか?」

「兄様の中で特別だったのは、篁家の初代頭首だ」

「初代頭首?」

「如何して気付いた?」

「気付かない方が如何かしています」

聖はクスリと笑う。

「だって、再婚後も兄様は手を出さなかった」

「それだけで気付いたか?」

「おかしいと思ったのは、兄様が私の母様が出て行き黙ってひいたことにあります。それに、兄様なら、絶対母様の素性を調査しているはずです」

それに茅場は、驚く。

「まさか、お前知っていたのか?」

「知っていたよ」

ニコリと笑い卓は言う。

「じゃあ、何故?」

「理由は簡単だ。父様はもう切り捨てられていたんだ」

聖はあっさり言う。

それに、茅場は驚く。

「切り捨てられる?」

「そう父様は、篁家を穢した。女に逃げられるなんて、篁家の頭首だから、兄様の許せなかった人は、お前の姉さんじゃない。父様の方だ? そうでしょう?」

「正解だな」

「そんな」

茅場はやり切れないように言う。

「兄様、約束しますよ。私が絶対、鷹の名を穢しません。私の名に掛けて。本当は兄様が継ぎたかったけど、彼方はただ、父様の弟の子と言うことで、彼方自身が継いではいけないと自分で決めるほどに」

「其処まで、分かっているなら言うことない。私で良ければ、力を貸そう。で、如何やる?」

「今は自分たちの式を強めましょう?」

「分かった。式の修行の場だな」

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