表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/21

出てきたものは。


 2人して狭い荷台を走り、コロコロ転がる小さなものをようやく捕まえたのは、私だった。

 床にバチンっと手で叩き潰すような形で捕まえたのだが、手は痛いしオーリケットさんの何とも言えない表情で見られるし・・・。

 何とも言い難い雰囲気の中、そっと手元に視線を戻した私は、それには気が付かなかったことにした。

 私と一緒に転がる物体を追いかけていたアッリオは、手の中の物が気になるのか、私の手をちょんちょんと前足で突くように叩いてくる。

 それが普通にかわいいと思うと同時に、ささくれかけた私の心を癒してくれた。


 いつまでもその体勢でいるわけにもいかないので、押さえつけた物をまた転がさないようにそっと手をどける。

 押さえつける前に見たのは、キラッと光る銀色の丸い輪っか。押さえつけたときに感じたのは、なんだか大きめの固い感触。

 後、ちょっと冷たいような?

 それも私の体温が移ったのか、すぐにわからなくなって、硬い感触のみが残っている。


 あれだ、指輪みたいなもの。


 というか、多分指輪だ。間違いない、はず?



 その予想は見事に当たり、私が手をどけた先にあったのは、銀色の指輪だった。

 拾ってみれば、本来石が付いているだろう所に、なんだか凝った模様のような、紋章みたいなものが彫られているゴツイ指輪。

 「これは・・・」

 いつの間にか、私の隣にいたオーリケットさんが、とても驚いた表情で私の手元を覗き込みながらつぶやいた。

 その様子からすると、ただの指輪ではなさそうである。

 こうやって思うが何度目か分からないけど、「どうしよう、捨てたい」という気持ちがむくむく育ってきた。

 だが、その思いは別の形で叶えられる。

 なんだか、人の事を安全装置とか坑道のカナリア的扱いをしていたオーリケットさんが、その私の手から問題の指輪を持っていったからだ。

 これにはちょっと、ほっとした半面、安全性が確認できたからかもしれないと言うカナリア説的な疑心もこみ上げる。

 大人って汚い。

 むしろ、オーリケットさんがちゃっかりしているのかもしれないけど。

 「ただの指輪に見えますが?」

 違うのでしょうか?と含ませて訊ねてみます。答えられなかったり、誤魔化したりすれば間違いなく厄介ごとなのでスルーする方向で逃げ道を確保しときます。

 これは汚くないです。身の安全を確保するのは人として当然・・・であると、おもう。うん。

 私の問いかけに、オーリケットさんは手の中の指輪・・・というか、紋章の方を食い入るように見ていた視線を上げて私を見る。

 「・・・これは、“モンショウイン”だ」

 「モンショーイン?」

 こうやって、時々わからない言葉が出てくる。その都度、ここが知らない世界だということを実感させられる。周りの景色は緑が多くて、テレビでもよく見る光景ではあるから、そこまで強く思わないけど。

 でも、言葉が通じてるのに、その意味が分からなくて、でも周りでは当たり前の事として取られると、どうしていいか分からなくなる。


 とても、寂しい?



 ちがう。


 これは、疎外感。




 【私】と【彼ら(せかい)】との




 【見えない壁(きょうかいせん)






 とまぁ、シリアスは置いといて。


 「モンショーインってなんですか?」


 驚愕っというような表情をしているので、素直に聞く事にした。

 だって、当たり前の事だったらここまで驚かないだろうし?




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ