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人狼と少女  作者: 冬忍 金銀花
最終章 エストニア市民独立運動

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第36部 北欧 エストニア完全独立と 人狼兵消滅  終章


 1917年(大正6年)6月23日 エストニア地方


*)エストニアの戦線


 2度のロシア革命でロシア帝国は崩壊した。地方で労働運動が勃発して東欧地方では労働運動がロシアからの独立運動へと発展する。第一次世界大戦も1914年から始まっている。


 エストニア地方も自治権獲得の動きが高まり独立運動へと続く。ロシアは領土を失いたく無いのだろう、しきりに侵攻を続ける。ドイツも侵攻してくるが、エストニアは、軍事介入を撃退して独立してしまう。



 ロシア軍はエストニアを奪還したく人狼兵を先頭に侵攻を開始した。ロシア軍の人狼兵の活躍となる筈だった。


 私たちは、黒の宝石の封印解除とダイヤの封印解除を行い、ロシア軍人狼兵を相手に戦闘を続けた。

  

 巫女の力は、それはもう素晴らしい!の一言に尽きる。軍隊では無い約2万人が参加する民間防衛組織の援護も出来た。まだ2人の巫女が不在で完全勝利には程遠いが。

 



 1917年8月30日 エストニア



*)阿部家族


 阿部家族が合流した。


 父、母、嫁、と、ピンクのキャス、濃緑のアヴローラの5人。阿部教授は意味不明の再会をはたす。死別したはずの3人が当時の姿のままである。ユキオとホロは別行動をしていて不在である。


 私たちは阿部教授から、ご家族の紹介を受けた。阿部教授のご両親は息子の勇がとても老けているのに驚いている。両親からしたら、あの飛行船の事故もつい先日なのだ。ましてや、今はあの事故からは10年前に遡っているのかも、理解できない。


 三浦・阿部の両教授からは、並行世界の説明を受けるも、時間の無駄だった。


「サワ! 生きていてくれて嬉しいよ!」

「もう、あなた! ご冗談はお止め下さい。こんなご老人はお断りいたします。一生未亡人で構いませんわ」


 阿部教授は、奥様から拒否されて、一人泣き出す。


「阿部教授! 阿部教授のご家族とは向こうで、再会を祝ってください」


 隣室に、小さなテーブルに少しの食べ物と酒が用意された。



*)人狼の巫女の集合


 この日、奇跡が起きたといえよう。7人の人狼の巫女が集合したのだ。私が待ち望んだ日が訪れた。


 最後の2人と合流し、私を含め8人が揃った。私は、みんなを一室に集める。簡単な顔合わせのような、自己紹介をしただけで、覚醒を始めてた。


「ピンクと濃緑の封印を解除するわ。この後に8人全ての宝石の能力解放をします」


 私こと、桜子は英雄気取り! 先にアヴローラ。次いでキャス。


「アヴローラは、汝に命ず。ボガトィリの唄を讃えよ、ヴォルフェンリード」

「キャスは、汝に命ず。ボガトィリの唄を讃えよ、ヴォルフェンリード」


 これで全員のダイヤによる宝石の能力解放が出来た。


 次は、8個の宝飾の武器を手に持ち重ね合わせる。麻美は2本を持つ。


「ニキータさん!ダイヤを持って能力解放の呪文を唱えて」


ニキータは唱えた。


「我は汝の力を司る。我は汝の真名を唱える、アクス・ファティーマ」


 ダイヤと黒の宝石で7個の宝飾の力を吸収させ8個の力とし、7個の宝飾に再度黒の宝飾に宿った力を与える。みなの能力が全宝石の力と変化する。アヴローラとキャスは驚く。



 私は一番効果がある魔法を、ニキータにお願いした。


「ニキータさん、瞬間移動をお願いします」


ニキータは消えて、玄関ドアから入って来た。次に、


「麻美、出来るかな。ニキータさんにコツを尋ねて」

「やってみる」


 麻美が消えた。戻って来ない。どこに飛んだんだろう。しばらくして、トイレから出て来た。


「もう、これ、最高! ちょうど行きたかったんだ」

「もう、麻美の、バカ!」


一同笑う。


 巫女は各自で、瞬間移動を楽しんでいた。目を回した巫女が続出した。



 さて、隣室の様子は?


「勇、老けたわね!」

「勇さん、あの桜子さんとはどういう関係でしょうか?」


 母のトミが気になり尋ねる。勇はエストニアの事故の時からの事を、三浦くんを交えて話し出す。


 同時に両親には、どのようににして、助かったのかを尋ねる。


「幸夫兄さんか、そうか、兄さんが助けてくれたんだ」

「そうなのよ、それでね、幸夫には嫁が居てね、娘が二人で離れ離れで、勇、お前に預けたそうどよ。勇はどうしたんだい?」

「あの子は、霧”というんだ。去年まで育てたよ。残念だが、双子を残して死んでしまった」

「いやいや、そんな大きい娘かい?」

「そうだね、兄さんの長女がここに居るから、呼んでくるよ」

「お父さん、この世はいったいどうなっちまてるんだか」


 勇は私と麻美を呼んでくる。それぞれに沙霧と澪霧を抱いている。


「初めまして、私、幸”といいます。幸夫お父さんの長女になります。父とは、モンゴルで4年ほど一緒に暮らしていたようです。私の両親は、ロシア兵に連れられて行きました。これくらいしか覚えていないんです」


 両親は、


「そうかい、あんたが幸夫の娘かい。次女が昨年死んだらしいが?」

「はい、とても聡い妹でした。2年前に初めて会ったのです。偶然でしょうが近く居ながら全く判りませんでした。昨年に姉妹だ!と言われまして。この双子が霧の娘になります。ひ孫さんですよ。ひいお爺ちゃん、ひいお婆ちゃん。抱っこしてあげてください。霧も喜びますわ」


「うんうん、めんこい娘だこと!」

「麻美さん、すまない。幸夫はどこかへ行ってしまったんだよ。引き止めておけばよかったよな」 

「そうですか、また会えるんですよね!」

「・・・・・・・・・」

「この前まで、幸夫とホロの二人と一緒だったんだよ。二人には息苦しかったかもしれないね。偵察に行くからと、出て行ってしまったよ」


 トミがそう言った。


 三浦教授は残念そうに、


「そうだったんですか、まだ何も分かっていませんでしたから、親子が会えないなんてとても残念ですよね。連絡の方法はないのですか?」


 平蔵は、


「ああ、そうなんだ。俺らは娘の恨みを晴らすんだ~、と言って出て行ったきりでね。もう、戻らないかもしれない」


 幸=麻美は、もう泣き出しそうな顔をしていた。


「そんな~、両親には会いたいし、霧の報告と、それに、それに・・・」


 

 私は教授のご家族のお話を聞いていたが、意を決して、


「お爺さん、お婆さん、霧の双子を私に育てさせて下さい。お願いします」


 麻美はどうにか涙を抑えて、


「この子達は。霧と智治さんの娘です。霧は亡くなる前に、遺言を残しました。霧の希望は、ここの桜子と智治さんが結婚して、私の可愛い娘を育てて欲しい、と言いました。どうか、霧の希望を叶えて下さい」


 勇が、


「ああ、霧は姉ではなく、さくらちゃんを母にと希望しました。この二人はさくらちゃんが結婚したら、養育をお願いするつもりでいます」


 両親は、


「そうですか、私はそれで構いません。お父さんはどうしますか?」

「ワシも異存はないよ。ただし、二人が結婚するまで、うちで預かろうじゃないかい。さくらさんも、勇と一緒に居たんだろう? これからも居ればいいよ」


「ありがとうございます。直ぐに結婚いたしますので、それまでよろしくお願いします」


 サワは、


「私の娘でもよろしくてよ!」

「ちょっと、サワさん、それはあんまりだよ。この俺は除け者か~?」


 この場の者はわらう。私は、智治を連れてくる。


「こちらが、お孫さんの智治になります」


 智治はかしこまって、


「智治と言います。霧さんの夫です」


 トミと智治は、


「智治さん、知らなかったとはいえ、悲しい思いをされましたね。私たちの孫の霧を妻にされた事にお礼を申します。ありがとうございました」

「いいえ、霧には、この私の命を助けてもらいました。命の恩人でもあります。ただただ、霧を守るからと思っていましたが、守れなくて残念です」

「いいえ、これからは霧の娘たちを立派に育ててください。お願いしましたよ!」

「はい、しっかり育てていきます」



 この夜の食事は、エストニアの料理だ。



 ジャガイモが主食として使われる。これに、キャベツ、ニンジン、エンドウ豆、大豆、カブ、ネギなどがの付け合わせとして添えられる。キノコのスープをはじめ野菜のみを使った料理は少ない。が、肉や魚料理に巧みにアレンジされている。みなさん、ごちそうさま。


 さて、大人が23人と赤子が2人、家に入りきれたの?


「この家は最高だな! 大きい窓があってさ、窓の横にテーブルを置けば、庭と居間が続き間に変わったよ!」

「ホントだね」

「おう、このテーブルの箱には弾薬がゴマント入っているからな。火を着ける

 なよ」

「キャー!」




*)最終決戦    



 1918年2月20日 エストニア


 時は流れて、幸の両親の幸夫とホロはとうとう戻らなかった。麻美は会えずに終わった。

                           

 「明日、ペトログラードのネバ川の畔の、ロシア軍人狼兵秘密研究所を襲撃する。今日は十分に休養をとってくれ」


 翌日からは皆戦地へ赴く。




 1918年2月21日 エストニア



*)決戦当日  


 巫女が前線に立つ。人狼の男共は敵兵の後始末だ。いくら能力解放しても直ぐに人狼兵が人間に戻る事は無い。巫女の背後を守るのが役割となった。


 巫女は超人的な能力があっても、重火器の見えない弾丸は避けれない。苦しい戦況ではあるが、ウルガは、爆発物を投げて銃兵を遠ざけてくれるが無理である。ここで、先輩が多数の被弾で負傷する。玉数が多いので、ニキータと共にベースに下がる。先輩は優しいので誰かを庇ったのだろう。


 総当りの銃激戦で負傷が多い。ウルガの爆薬を持ちアヴローラが敵の後方に飛び爆薬を投げた。ロシアの人狼兵は総崩れ状態になり、巫女たちは突撃した。


 その勢いで研究所の奥まで進撃する。ウルガのお土産の爆薬を多数置いて来た。大きな爆発後、ロシア兵は雨散霧消になり研究所を巫女達が占拠した。


 研究資材やデータは全て焼却したと思われる。名も無い所長が居ないようだが、良いのだろうか。後々の災いになってしまうが、ここでは解らない。



 他の戦えない女は食事の用意に徹した。街中が戦場となって、パブでの仕事とかはどこかへ飛んでしまった。同じく戦えない男たちは食材の確保へ、民間防衛組織との往復で忙しい。民間防衛組織との連絡と打ち合わせも行なっている。両教授は頭脳集団になっていた。


 私は戦えないので、ダイヤを持ち、霧の祭壇前で祈りをささげる。突然に沙霧と澪霧が大声で泣き出した。そこへ、ニキータが慌てて飛び込んでくる。

 

「智治、大丈夫か?」


 先輩はロシア軍の銃弾を多数受けて負傷している。私は直ぐに飛びつく。そしてニキータにお願いした。


「ニキータさん、先輩を助けて。1929年の日本へ飛んで。智治が導くわ。日本で治療を受けさせて、お願いします」

「おう、任せな! このお礼は高くつくぜ!」

「うん、大丈夫。牛・馬でお願いね?」



「クロ! 出てきて、お願い。智治を助けて!」

「ブヒヒ~ン、ニクイヤ~ン!!」


 私は霧のロザリオを智治に預けた。ニキータは直ぐに消える。


「クロ! お願い。ニキータと一緒に、智治を助けて! 日本へ飛んで!!!」



 1918年2月23日 エストニア


 翌日には、ロシア軍人狼兵秘密研究所の襲撃が成功する。ロシア軍人狼兵はみな人間に戻された。巫女たちの完全勝利である。


「みんな! 頑張ったわ! 私たちは勝ったのよ! もう最高だわ!」


 1918年2月24日に、エストニアの勝利が確定した。私たちが命を賭してきた戦いが終わった。


「桜子! やったわね、おめでとう!」

「霧、終わったよ。・・・智治さんは、きっと大丈夫。天国から守ってあげて!」


 沙霧と澪霧は、ニコニコとして私に笑いかける。


「そうか、二人には未来が解るんだね?」

「ア~ィ! バブ! バブ!」



 1918年2月24日にエストニア第一共和国独立の宣言がなされる。その後もソ連やドイツ帝国の度重なる軍事侵攻を撃退させて、完全独立を果たす。


 1920年のタルトゥ条約でソ連から独立を承認され、1921年には国際連盟にも参加した。



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