[E竜]終わらせる存在 3
「どうしましたか?未通のまま終わるのが心残りであれば、部下に命じますが、でもそのくらい自分で調達してくれないと困りますよ」
反応がない事に、リヴィアは若干の苛立ちを覚える。
画竜点睛を欠く。
最高の気分だったところに、染みが広がっていくのが自覚できた。
「悪いですわね。少し結界を張るのに手間取りました」
フードの者から聞こえてきた声は・・・リヴィアの良く知る声で・・・
「誰ぞ?」
それまでの余裕は霧散した。
リヴィアは、最大限の警戒を喚起、魔力を身に纏わせる。
得体の知れない存在。
「愚かな問いですね。妾は、妾よ」
そう・・・その声は・・・存在感は・・・リヴィア自身。
フードを外す。
その下から出てきたのは、紛れも無くリヴィアの顔。
謎の存在は続ける。
「にしても、あれですよね。ミスリールだと信じて、ドヤ顔キメ顔で、色々言って・・・実は違いましたとか・・・恥ずかしい、恥ずかしいですよね・・・分かる、分かりますよ?」
それは、正しい指摘であった。
リヴィアは頭に血が昇るのを自覚した。
「貴様・・・!」
最早、生かしてはおけない。
リヴィアは、試射・終末の灯火を放つ。
ぎいいいいいいいいいいいい
リヴィアの力は満ち溢れている。
即時発動すら容易い。
だが。
ぽしゅ
リヴィア?が伸ばした手の平の前で、消える。
「無駄ですよ。来ると分かっているのですから、防ぐのは容易です」
「な・・・」
「さて、自己紹介をしておきましょうか。妾は、リヴィア。未来から来た貴方です。貴方を殺しに来ました」
「そんな馬鹿な事が・・・!」
「困るのですよ。この世界を壊されては・・・愛しいダーリンに出会えなくなります」
「な・・・妾の姿で何を気持ち悪い事を言うのだ!妾は恋愛感情など持ち合わせておらぬ!」
現リヴィアが未来リヴィアに炎の魔法を放つ。
未来リヴィアが動くまでもなく、炎がかき消える。
現リヴィアは悟る。
生来の力に加え、魔王の力まで得たのに・・・この存在の足下にも及ばないと。
終末の灯火ですら防がれそうだ。
「殺せ。腹立たしいが、妾は貴様には勝てん」
現リヴィアは玉座に腰を下ろし、扇子を広げる。
「まあそう、結末を急ぐでない。まだ、そなたに言うべきことがあるのですよ」
未来リヴィアが苦笑しながら、言う。
「言うべきこと・・・だと?」
「ええ・・・惚気と、愚痴です」
「聞きたくないから早く殺せ」
現リヴィアは、更に強い口調で呻く。