本当に俺の願いは叶った。
「「!」」
トンネルの外の風景を見るなり、俺たちは言葉を失った。そこには見渡す限り無限の花畑が広がっていたのである。だが、俺の心を一番感動させたのはそれではなかった。思い出し、そして分かったのだ。俺の願いとそれが叶ったこと。今こそ、言いたいことを思いっきり言える。
「ねえ、遊ぶ?」
「ああ、綺麗だよなあ。でもそれより」
俺は願いが叶ったのだ。
「なあ、俺分かったよ。初めてここに来た時、俺は『自分の中のモヤモヤを打ち砕いてほしい』って思ってたんだ。その時は、こんなど田舎に生まれてろくに遊ぶこともできなかったから、『ゲームセンターに匹敵する気晴らしこそが俺の気分を和らげてくれる』って本気で信じてた。でも、そんなのは一時的に忘れさせてくれるだけだった」
港は黙って聞いている。
「だけど、今トンネルでお前に話聞いてもらって思った。俺が本当に欲してたのは、お前みたいに話聞いてくれるやつなんじゃないかって。で、多分そうなんだ。俺は一人じゃ抱えきれない。だから、頼みがある」
「なあに?」
「これからも、俺の話を聞いてほしいんだ。お前しかいない。頼む」
うんと力を込めて言う。これは俺の本心だ。それに、こいつしかいない。
驚いたことに、港は泣き出した。声を上げてわんわんと。
「お、おい」
「うん、いいよ! 私もね、うっとうしがられずに悩んでることとか聞かせてくれる人に会いたかったの。普段から一人っていう状況を改善したくて! 少しでも周りの人の役に立てれば、みんな仲良くしてくれるかなって思って。でも私、グループとかに所属してないしこんな外見だから、自信なかったの! もちろん、いいよ! こっちこそよろしく!」
「よっしゃ! 待てよ…」
これは彼氏・彼女の枠に入るのか考えていたが、急に彼女の言葉に違和感を感じた。
(こんな外見? そんなにひどいかあ? ちょっと髪跳ねてて、ぽっちゃりしてるだけじゃんか)
「何見てるの?」
「いやあ、見苦しくなんかないと思うけどなあ」
「やだ。君のお父さんみたいなことを言う」
「まじかよ」
そんなつもりないのにな。まあいっか。願いが叶ったんだし。俺と海輝は手を繋いで無限に続く花畑を見据えた。




