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トンネルの先には  作者: 椎名れう
11/30

女子はめんどくさい。

果たして月曜日。舞鳥は来なかった。

「昨日、急に転んで足が痛いんですって。それで、骨折かどうか確かめに病院に行ってます」

先生は心配そうにそう言っていたが、俺は笑いだしたい気分だった。ざまあみろ。これで、おまえに見捨てられた俺の心の傷の深さを思い知れ。本当は泣き虫のくせに俺をバカにしやがるからだ。

割と晴れ晴れした気持ちで、授業を聞けた。自分で作った昼飯も、いつもよりうまい気がする。今日はいいことづくめだ。あのトンネルに行けば、願いが叶うって本当だったんだな。今の俺は、気分爽快だ!

パリーン! 教室の隅で、何かが割れる音がした。誰だよ、俺の気分台無しにした奴。

何が起きたかのかは、現場を見ればすぐにわかった。

女子数名が、ふざけてて花瓶を割ったらしい。教卓の下には陶器の破片が散らばっている。

「ちょっと恭子きょうこ、これどーすんのよ」

「責任取ってよ」

「なんで私だけ?!」

「実際に割ったのはあんたでしょ」

「それは、恵美えみが押したから…」

「知らないわよ、そんなの」

「そんなのないわ」

おそらく割ったであろう天野あまの恭子は、半泣き状態。後の二人は一緒に天野を責め立てる。これだから、女子はめんどくさい。さっきまで仲良しこよしをやってた三人が、事故一つでたちまち二対一に分裂しちまうんだからな。ここで男子なら、テキトーに笑ってみんな一緒に怒られるのに。

てかおまえら、うるさいんだよ。周りの視線気づいてるか?

クラス中の女子がバカ三人組を冷えた目で見ている。男子どもは無関心。当たり前だけど、介入者はいない。あいつらが自分でどうにかすべきなんだ。こう思っているのは俺だけじゃないな。

「あんたのせいよ!」

「一緒に遊んでたのに、なんで私だけ…」

「私も真里まりも割ってないもん」

もっと言えば、天野の弁解が一番うるさい。周りの女子に助けを求めてる感じ。で、誰も応えない。てか、おまえが割ったんだろ。おまえが罪を認めりゃ、それで終わりなんだよ。

「ちょっと待って」

いきなり止め役が入った。誰かと思えば、港海輝。あのめんどくさい奴だ。

「何よ」

「部外者は引っ込んどいてよ」

「あんた関係ないでしょ」

天野までが港を締め出そうとする。そりゃそうだろ。こんなダサい女、しかも女子いわくの「グループ」に属していない奴が来ても、めんどくさいだけだし。

「私見たよ。楠木くすのきさんの肩が花瓶の位置ずらして、前田まえださんが押して、天野さんがこけて、花瓶が割れたの」

「は? 何を根拠に?」

「見てたのは、私だけじゃないと思う。ねえ、坂田さかたさん」

声をかけたのは、部外者の女子。

「私が何見てたって?」

「坂田さんも、現場を見てたでしょ。私、坂田さんのことも見てたんだよ」

そう言って、港は坂田をじっと見つめた。誤魔化してもダメだよ、とでも言いたいんだろう。

それに負けたのか、坂田は頷いた。と、同時に教室の扉が開いて先生が入って来た。

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