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30 黄金のレガリア/いずれまた

 しばらく苦戦していれば、アルベルトⅠⅢがおもむろに喋りだす。


「どうやって進めばいいのかは不明だが、今のうちに灯りを用意しておくのはどうだろう?」


 はっとした表情で、セリーリアが顔を上げる。

 それがNPCからのヒントだということには、セリーリアも察せたようだ。

 いつの間にか、インベントリにしれっと入っているランタン。それを取り出して使ってみれば、扉の左側に、今までは暗くて見えなかった通路が現れる。


「はわわ~! さすがです、主さま!」


 もちろん、そこが正解の入り口だ。


(まあ、実はライトで照らさなくても入れるんだけどな……)


 探索クエストにおいて、ライトで周りを照らすことは重要だ。

 それをプレイヤーに明示する意図が、ここにはあるのだろう。


「足元が……」


 不安定な砂利道に、セリーリアが歩きにくそうにしている。


「わたくしの手につかまってくださいまし!」


 光尾兎(ルクシャウラ)が抱き着かん勢いで主人に近づけば、セリーリアはナチュラルに首を横に振る。


「ルーちゃんはモンスターを見かけたら、何も言わずに急に手を離しそうだからヤだ」

「ルーは離れません! いざとなれば、この腕を切り落として置いていきます!」


(発想がサイコ……)


 オフロードは順々に慣れてもらうしかないが、わざわざ意地悪をすることもないだろう。光尾兎(ルクシャウラ)を明後日のほうに追いやってから、コーザは素直に手を貸していた。


 曲がりくねった道を慎重に進めば、ダンジョンの内部が見えて来る。

 炭坑を思わせるいくつもの空洞は、淡い光に照らされており、それが行き止まりであることを自ら証明していた。


「ふむ、どうだろう。僕らも少し掘ってみないか?」


 アルベルトⅠⅢの発言だ。

 しかし、選択肢のウィンドウは表示されない。

 プレイヤーの行動次第でどうにでも転がるため、没入感を減らすテキストウィンドウを表示したくなかったと見える。


 だが、入り口のそばにはこれ見よがしにツルハシが落ちているので、本来はこれを使って進めるのが予定されたデザインであることに疑いはない。


「もしかして、これですか?」


 とてとてと走ったセリーリアが、ツルハシを持ち上げてアルベルトⅠⅢに示す。


「おお! 具合のいいものを見つけたな」


 NPCのほうには一向に動く気配がないが、セリーリアは気がついていないようだ。

 素直な反応で、道の奥へと入っていく。

 今頃はQTEの表示が出ていることだろう。

 採掘できる場所にアイテムを持って近づくと、採掘は勝手にはじまる。


(採掘スキルが高いと、もっとプレイングの幅も広がるんだけどな……。生産系は専門家に頼むほうが便利だから、ついつい疎かにしがちだ)


 振り上げたツルハシをセリーリアが力いっぱい地面におろす。

 カツンという甲高い音が響いて来たので、セリーリアの視界には採掘の結果が現れたはずだ。それは、そばで見ていたチームの仲間にも共有される。


「ふむ。何もなかったか。どうやらすでに掘り尽くされているようだな」

「そうですか……残念です」


 アルベルトⅠⅢの言葉に、セリーリアががっくりと肩を落とす。


「気にするな、セリーリア。そこでは何も拾えないぞ」


 コーザの発言に、セリーリアはほっとしような顔を浮かべ、次いで、それはそれでどうなんだと言いたげにツルハシを睨みつけた。


(……正確には0・1%くらいの確率でゴミを拾えるんだけどな)


 このゴミを10個集めると「やりすぎ、早く次に進んで」という称号が得られる。コレクターにとっては必須の作業かもしれないが、通常のプレイングでは無関係だ。


「主さま、わたくしが見つけましょうか?」

「時間の無駄だからやめておけ」


 主人に代わってコーザが言えば、威嚇するような声を光尾兎(ルクシャウラ)が発する。まもなく、セリーリアも笑いながら首を横に振っていた。


 採掘をしたかどうかにかかわらず、プレイヤーは探索に関する2つのパズルと、ダウジングを行える。パズルは石像の向きを変えて揃えるものと、壁に隠された凹みを見つけて、上まで登るというものだ。


 高所恐怖症の人にはちょっと難しいかもしれないが、セリーリアにその心配はない。十分に楽しめているようだった。


 てきぱきと上にあがったセリーリアが、下にいるコーザに手を振る。


「コーザさん! 上にも何もないようです! でも、すごく綺麗ですよ」

「そうか……」


 コーザには曖昧にうなずくことしかできない。


「ルーちゃんもそう思うよね?」

「はい、ルーは主さまと共にいられて幸せです!」


 実のところ、コーザは高所恐怖症なので、壁の上には登ったことがないのだ。

 セリーリアの眼前には水晶の洞窟が広がっていた。実際に洞窟の中にまで入れるわけではないのだが、景観はすこぶる神秘的だ。ここまで頑張ったプレイヤーへのご褒美として設定されたものだろう。


「上にもないともなれば……いよいよ、この僕の出番のようだな」


 そう言ったアルベルトⅠⅢが、金属の棒を懐から2本取り出す。

 見たまんまのダウジングだ。

 しかし、うまく扱えないようで、取り出した姿勢のままNPCはとまどっていた。


「参ったな……。持って来たはいいが、これはどう使うのだ?」


 アルベルトⅠⅢがセリーリアに棒を差し向ける。

 渡されたほうのセリーリアも困惑していたが、こちらも大部分はQTEだ。何か特別な動作を必要としているわけではない。


 出されたヒントに従ってセリーリアが歩いて行けば、まもなくアルベルトⅠⅢが弾かれたように声を上げる。


「こ、これは……」


 地面を掘り返すアルベルトⅠⅢ。

 そこに見えたのは、古びた王冠だ。

 残念だが、とても価値があるようには見えない。露骨に落ちこんだアルベルトⅠⅢが、遠い目をしながらコーザたちに語った。


「噂は真実ではなかったのか。……しかし、今日僕らの冒険は何物にも替えがたいものであったと、僕は信じている。僕らの絆こそが、黄金のレガリアだったのだな」


(知ってはいるが、相変わらずしょうもねえオチだな)


 コーザとしては冷ややかな笑みしか浮かべられないが、セリーリアのほうは目を潤ませて神妙な顔でうなずいている。


「いずれまた、本物の黄金のレガリアをともに見つけよう! それまでは記念にこれを持っていてくれ」


「わかりました!」


 拾ったばかりの王冠がセリーリアに手渡される。アイテムの品名は感謝のレガリア。なんの手伝いをしていないコーザにも、どうやって複製したのかは知らないが同じものが渡されていた。


『アルベルトがチームを脱退しました』


 去っていくNPCの背中をセリーリアが寂しげに見つめる。


「あたし、感動しました……」

「そ、そうか……」


 思わず、コーザはずっこけそうになった。

 どうだ、くだらなかっただろうと声をかけるつもりでいたコーザとしては、実行しなくてよかったと胸を撫でおろす。間違いなく、セリーリアに嫌われていたことだろう。


(ちなみに、それ2000Gで売れるぞ……)


 手間だが、確実に所持金を増やせることもあって、初心者のマラソン用に選ばれるチュートリアルだった。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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