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23話 【勇者サイド】 計画

「くそ!まさか道化師に負けるとは!」


 イラはラグナに負けてからずっとそればかり繰り返し言っていた。


「イラ様落ち着いてください」


 ミーナが暴れるイラを抑えようとしているが


「うるせぇ!」


 止まらないイラは周囲に当たり散らしていた。


「落ち着いてくれイラ」


 メアも混ざって止めようとするが。


「許せねぇ………あの道化師が。俺に散々恥じ掻かせやがって」


 そう言って剣を取るイラ。


「おい!キングボア討伐しにいくぞ!」


 仕方なく荒々しく宣言するイラに私達もついて行く。

 そうしてやってきた草原。

 キングボアがいた。


 体長は4m程はあるだろうか。

 デカい。


「マリー!ミーナ!バフをかけてくれ!」

「はい!」

「分かった」


 私はあの後自分の身の丈に合った魔法を使うようになっていた。

 やっぱり前までの強力な魔法はラグナがいて初めて成り立っていたことを私は知ったのだった。


 現に私は上級魔法を今メインに使っている。

 ラグナがいた頃には彼のバックアップもあり超上級魔法という最高峰の魔法を仕えていたが今は無理だ。

 

「ぐあっ!」


 しかしそれでもやはりキングボアに剣は届かないのか弾き飛ばされるイラ。

 今日も今日で何度もそれを繰り返す。

 今までならキングボアなんて楽に倒せてた相手だ。


「はぁ………はぁ………」

「はぁ………」


 傷だらけのイラやメアが肩で呼吸する。


「おっしゃぁぁあぁぁあぁぁぁ!!!!!」


 イラが叫ぶ。


「やったぁぁあぁぁ!!!やったぞぉぉぉぉぉ!!!キングボアを倒した!!!!」


 今まで楽に倒していた相手だということを覚えていないのだろうか。

 まさか1時間も戦闘してようやく倒せるとは思っていなかった。


 ラグナがいればもっと楽な相手なのに。

 そんなことを思う。


 しかも倒したと言ってもエリクサーやその他レアアイテムをガンガン使って倒しただけだ。

 正直負けているのと大して変わらない。


 ラグナがいないと自分達はAランクあるかどうか、のパーティだということを本当に思い知らされるのだった。


「よし、戻るぞ!」

「「おー!!!!」」


 メアとミーナがそう声を上げて戻るイラについて行く。

 私も行かなくちゃな。



 酒場に戻ってきた私たちはいつものメニューで祝杯する。


「かんぱーい!」

「「かんぱーい」」

 

 私はパーティ内でどんどん孤立していっていた。

 理由は分かってる、ラグナだ。


 ラグナの事が私は好きだった。

 でも、ラグナは私の気持ちに気付いてくれない。


「おいマリー?」

「ごめん」


 そう言って外に出る。

 今は風に当たりたかった。


「聖者様また獣人を治したらしいぜ」

「聖者ラグナさんだろ?最近は人間もボチボチ見てもらってる人増えてきたみたいだな」

「俺の知り合いなんか彼女のこと相談に行ったらしいぜ。いもしないのに」

「ははっ。それは頭を診てくれる医者に行かないとな」


 そんな会話が聞こえてきた。

 ラグナは1人になっても誰かを助け続けているみたいだ。


 それに比べて私たちはどんどん落ちていくだけだった。


「おい、あの子勇者パーティの子だろ?」

「えーっとマリーとかって人だよな」

「最近の勇者パーティなんか感じ悪いよなぁ」

「元々悪かったろ?勇者が威張っててさ」

「確かに言えてるわー。聖者のラグナさんがいた頃は特に気にならなかったのにな。最近はどんどん威張ってて獣人相手に金貨100もふんだくろうとしたらしいしな。ドン引きだわ」

「それまじでやばいよなー。ラグナさんは明るくて優しくていい人なのにな。勇者パーティのいいイメージなんて殆どあの人が作ってたのにな」


 そんな会話も聞こえてきた。

 確かにラグナはいいイメージを作ってくれていた。


 それを………イラは勘違いで追放した。

 ラグナだって自分が弱いのは理解してたのにそれでも追放した。


「はぁ………」


 星空を見上げる。

 どこかでラグナと同じ星を見てるんだろうか。

 そんなことを思う。


「ラグナ何してるんだろ」


 そんなことを思いながら酒場に戻る。


「おう、マリー」


 机に乗り出してくるイラ。


「何?」

「お前が本気になれない理由分かったわ。やっぱりあの踊り子なんだろ?」

「関係ない」

「いや、関係ない訳ないだろう。お前ラグナが出てってからずっとその調子じゃねぇか」

「そ、それは………」


 否定できない。

 ラグナと離れてしまって悲しいから全力を出せないというのは間違いじゃないと思う。


「俺がその悩みの種排除してやるよ」


 そう言ったイラは自分の剣を掲げた。


「この剣の錆にしてやる」


 そしてそう言ったのだった。


「幼馴染でしょ?私たち。正気?」

「んなもん関係ねぇよ。こっちは世界救おうとしてんだよ。その勇者パーティのメンバーがあんなゴミのせいで全力になれないってんなら消してやるって言ってんだよ」

「そうだ。関係ないぞマリー」


 メアもそんなことを言い出した。


「私個人としてはラグナは良い奴だと思ってるし良く思っている。でもそれとこれとは別だ。マリーが本気になれないなら排除するまで」


 辛辣な言い方をするメア。


「決まり、だな」


 そう言ってイラは立ち上がる。


「あいつは近々王城に向かうだろう」

「何で知ってるの?」

「あいつに嫌がらせをしているからな。その結果あいつは王城に来る。今度こそ、王の前で跪かせてやる」


 そう口にするイラの口元が歪んだ。


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