証明
あれからもう5日になる。つまり週末だ。不思議とまだ罪悪感はない。こうしてた方が茜も花咲さんも全てが良くなる。そう信じていた。まともな判断力は失われ精神的にもそろそろ限界だ。
目に見えて変わったのは土曜日だった。
「ねえ、誠一、開けて。何があったか話がしたいの。」
「何も無い。何も無いから。」
真っ赤な嘘だ。でも何故か茜には言わない方が良いんじゃないかと思った。本当になんでだろう。
「入るよ。嘘だってわかるんだよ!」
「嘘なんかじゃ無い。信用にてくれよ」
「うわ、酷い顔。熊が出来まくってるじゃん。
部屋も汚れてるし。そうじするからリビングにいて。」
ほぼ力の入らない僕の体はすぐに外に出された。
ああ、なんで何だろうな。ここまで甲斐甲斐しくお世話してもらってて真実の一つも話せない人間だったんだな。本当に吊り合わない。弱い、弱過ぎる。
いっそのことこの関係性どころか俺は生きてたって価値がない。死んでしまった方が良いのだろうか?
肯定する。簡単に出来る。けどもやっぱり死ぬのは怖い。
「ねえ誠一、話をしよう。」
「大丈夫。茜と話すようなことは何も無いから。」
「ゴメンね。私今の誠一の言葉信じられない。花咲さんから聞いちゃったから。」
顔が引きつっていくのが感じられる。ほらやっぱりダメだ。何の価値もない。死んでしまえと悪魔に囁かれる
「ならほっといてよ。花咲さんにも、茜にも顔見せる事が迷惑なんだよ。だから僕なんてほっといてさ…どっか他の人と。僕達、別れよう。」
「そっか。」
「誠一、今からキツイこと言うね。
何が迷惑よ。花咲さんは知らないでど私ぐらい頼りなさいよこの大バカ者ッッ!そんなの自己満足でしか無いのよ。私はね、誠一と一緒にいて迷惑なんて待ったか思ったことないのよ。自惚れないでよ。誠一にはそんなヒーローみたいな力無いのよ。自己犠牲を払うことで悲しむ人がどれだけいると思ってるの!?
そんな変にグダグダしてる暇があったら花咲さんに一言でも謝る事が先でしょ!ゴメンね。私ちょっと家に帰る。別れるのは賛成よ。正直今の誠一は腑抜けているもの。ショック療法だけど許してね。」
「僕はちっぽけで何の力もなくて、何にも出来ないことなんて分かってるんだよ。自分を犠牲にしなければ何も出来ないんだよ。俺を犠牲にするのが一番良いんだよ。」
「それも自惚れだよ。
誠一、ゴメンね。愛してる。どうかいつものように戻ってね♡」
優しく囁くような声で言った。
ついにフラれた。正直茜の言葉は胸に響いた。響いたけど花咲さんに会う気にもどうしてもならなかった。まだこれで良いと思う自分がいる。茜と別れて、それぞれの道を交わらないようにして、僕がいなくなれば全てが解決するんじゃ無いかと思っていた。きっとこのまま僕が消えてしまえば解決なんだ。
僕はそのまま駅に行った。もちろん目的は決まっている。
「何をしているの?とりあえず家に来てちょうだい。」
瑠奈さんに半ば連行させられて家の中に到着した。
「話してくれるかしら?」
「何も無いので大丈夫です。」
「本当に嘘が下手ね。部長命令よ。話しなさい。」
「はい。かなり長いですけど良いですか?」
「聞かせて。心配だわ。」
「では最初から話しますね。
まず友達と遊園地に行ってて、飲み物を僕が買いに行ったんです。その帰りにその友人が襲われそうになってて、でもこの前見たいに刺されるんじゃ無いかとか思ってたら本当に怖くなってて、助けられませんでした。一歩踏み出せれば良かったんですけどね。それでその友人が茜から聞いたんですけど表情が凍り付いてしまったらしくて、本当になんか後悔して、会わない方がいいと思って引きこもってたんです。でさっき茜とも喧嘩して別れてしまって、もう生きている意味も無いし皆僕が死ねば幸せになるって思って。」
瑠奈さんに全てを話した。話してしまった。なぜか言葉は自然に紡がれていって言うつもりもなかったものがスルスルと出ていく。なんで何だろう?
「一発だけ殴らせてね。」
痛いッッ。けど花咲さんがこれ以上の痛みを受けていると思ったら痛くもかゆくも無くなった。
「茜ちゃんが死んじゃったら誠一君はどう思う?」
「そりゃもちろん悲しいですよ。別れたとはいえ、好きだし。」
何が言いたいんだろう?フラれた僕を見て笑ってるのかな?
「まあ、そうだよね。
pr)私は誠一君が好き。でも誠一君は死のうとした。この証明の答えはわかるね。私の気持ちは悲しい。
証明終了(QED)って事。」
「でもどうすれば良かったんですか!?」
ああ、また逃げた。逃げて逃げてまた逃げて僕は本当にダメな人間だ。
「落ち着いて。」
瑠奈さんはそう優しく言うと僕を抱き寄せた。
「苦しい時は泣いたっていいんだよ。誰かに相談して、いいんだよ。逃げていいんだよ。」
そう言われると何だか急に安心もした気がして、そしたら急に眠気が襲ってきてそう言えば何日か寝てなかった、いや眠れなかった事を思い出して、そのまま寝てしまった。




