惨憺なフラシュバック
「だけど……まだちょっと怖いな。」
そう。ノリと勢いで怖く無いとは言ったけどやっぱあの一気にグッと来る感じはかなり苦手だ。風圧をかなり受けるし、顔が変な感じになる。正直かなりカッコ悪い。でも、怖いもんは怖いんだもん!僕ね、正直に物を言い合える事ってかなり大事だと思うんだ!
「もう、困ったさんだなぁ。仕方ないから手貸してあげる。ほら、手繋いで乗ろう!」
うん。優しいなぁ。カッコ悪くても、やっぱ正直なのは良い事なんだろう。こうして誠一はまた一つ学んだ。
「ありがとう。本当は嫌だったりしない?、だったら離すよ。」
「嫌なわけないじゃん。私から言ってるんだから!
それにさ、私今日かなり楽しいと思ってるんだよ。嫌いな人と一緒だったら楽しいって思わないもん。」
良かったー。やっぱ離すって言われたら精神的に来るからなぁ。怖いし
柔らかいなぁ。茜以外で女の子の手なんて触ったのは小学生以来だなぁ。…なんか悲しくなってきた。
怖いと思って握ると、優しく握り返してくれて、隣に友達がいるからなのか、はたまた花咲さんだからなのかは分からないが不思議と安心感があった。怖かったけどかなり楽しく感じたのはまた別のお話。
「喉乾いたからコーラでも買ってくるけど花崎さんは何かいる?」
「私は・・・ウーロン茶かなぁ。一緒に行こう。」
「大丈夫だよ。すぐ買ってくるからそこのベンチに座って待ってて」
「うん」
花崎さんは茜とか瑠奈さんとは違う感じなんだよなぁ。茜とか瑠奈さんは綺麗って感じなんだけど花崎さんは可愛いっていうのがよく似合うからなぁ。やや茶色がかったロングヘアーに透き通るような肌、二重と可愛いんだよなぁ。・・・て、何を考えてるんだ何を。
さて、買い終わったし帰るか。
あれ?さっき花崎さんがいたところに金髪モヒカンのいかにもここは世紀末かと叫びたくなるような恰好をしている方が3名ほど。もしかして絡まれてたりしないよな?
冷汗が流れる。もちろん思い出したのはあの日だ。惨憺たる事態に見舞われた日の事がフラッシュバックしてきて足がうまく動かない。絡まれてるってわかっているのにも関わらず、前の事がトラウマになって足がうまく進まない。もう大丈夫なつもりだったのに。
「助けてーー」
そう聞こえているのに足がすくんで、冷汗もかいて、あの時の痛みや茜の瞬間の表情が、全て帰ってきてのどのあたりで詰まって気持ち悪い。一瞬だけ見えた彼女の表情はひどく悲しそうで今にもすべて絶ってしまおうとも思えるほどに真っ暗だった。勇気を出して一歩踏み出せればどんなに楽だろうか?あの時に一緒に行っていれば。だんだん心の中で自分の事を攻めて攻めて反吐が出そうになる。でもだせない。一番つらいのは花崎さん自身なのだから。そう考えるたびにどんどん足がすくんでいって立っていられなくなってへなへなと倒れこむことしかできなくて、それでも何とか立って一歩を踏み出してもそれでいいのか?とか悲惨な顔をしていた表情や刺された時の一気に熱を失っていく感じの怖さが何倍にも増幅してきてきて。やっぱり僕には何もできなかった。そこに残るのは何もできなかったということだけ。結局、悲鳴を聞いた周りの人が遊園地の人を呼んできてくれてことが収まったように見えた。けどその時僕を見ていた表情はいつもの花崎さんから何個かのものが崩れ去てしまったような、そんな感じだった。僕はまた、人を傷つけてしまった。僕がちょっと勇気を出せばできたことなのに何もできなかった。悲壮感がこみあげてきて僕は心にでっかい風穴があいたように感じた。




