帰還、そして新たなる目標
カルディナの森を抜けたソウタ達は、始まりの町に帰ってきた。門の前には、先に戻ったカレルのパーティーメンバーとイルがいた。
「お帰りなさい、カレルさん、ユーティリアさん、ソウタさん」
「イルか、バルクはもう帰っているのか ?」
イルは首を横に振る。
「いいえ、まだ見かけていませんが」
「そうか。まあそのうちひょっこり帰ってくるだろう。今日はもう私達は休もうか」
ソウタ達は、自分達の宿泊場所に帰った。
まだ朝日が昇る早朝にソウタは目を覚ました。
「う~ん、まだ眠いな」
ソウタは寝返りを打つ。手が何か柔らかいものに当たった。
「この展開、前にもあった気が」
恐る恐る目を開く。やはり、そこにはユーティリアがすやすや眠っていた。しかし、あの時とは違ってユーティリアはちゃんと服を着ていた。
「起こすのも悪いな」
ソウタはユーティリアの胸から手を離しもう一度寝返りを打ちまた寝る。
ソウタが寝返りを打つ少し前、ユーティリアもまた目を覚ましていた。
「もう朝なんだ。でも、今日は昼まで何もすることがないしもう少しだけ」
「う~ん、まだ眠いな」
「(え ?)」
ユーティリアの目の前には、何故かソウタがいる。
「(何で私ここで寝てるの)」
ユーティリアは精一杯昨日の出来事を思い出そうとするが何も思い出せない。やがて、ソウタがこちらに寝返りをしてくる。
急いで寝たフリをするが、ソウタの手が胸に当たる。さすがにここで怒って起こすのも悪いと思い、なんとか我慢する。
「起こすのも悪いな」
そう言ってソウタが手を離す。ユーティリアは一安心する。その顔は赤く染まっていた。
「(もう仕方ありませんね)」
ユーティリアも少し微笑んで目を閉じた。
昼過ぎ、ギルドのテーブルでソウタとユーティリアが話していた。
「え、今なんて ?」
ソウタはユーティリアの口から放たれた言葉に驚いた。
「だから、一緒にパーティーを組んで王都に行きませんか ?」
王都と云えば、世界の冒険者達が集まる場所だ。それにより、様々なクエストも存在する。最近では、西の魔王の討伐クエストが発注されそのクエストに何百人もの冒険者が向かったと言う。
「別にいいけど」
「ほんとに !?」
ユーティリアはテーブルに身を乗り出す。
「なんでそんなに喜んでるの ?」
「何でもないです」
「それで、2人だけで行くつもり ?聞くとこによると、道中にはその辺とは比べ物にならない程の魔物が住む場所があるって聞いたんだけど」
「大丈夫、ちょっと待ってて」
ユーティリアは一度ギルドを出ていった。
「ほんとに大丈夫か」
「何がですか~ ?」
ソウタの背中に重みのある物が押し付けられる。後ろを振り向くと見たこともない少女がいた。
緩く巻かれた金の髪を持つおっとりとした雰囲気で腰にはレイピアが掛けられていた。
「あの、どちら様で ?」
「さぁね~」
そうしているうちにユーティリアと一人の少女がやって来た。
「あ !カグヤ、ここにいたの。もうちゃんとギルドの前で待っててって言ったのに」
すると金髪の少女が返事をする。
「ごめんね、どうしてもこの人のことが気になって~」
「まあいいけど。それじゃあソウタ、そっちの金髪の子がカグヤで、この黒髪の子がレイン」
「よ、よろしくお願いします」
レインは、丁寧に挨拶をする。
「で、この2人がうちのパーティーに入ってくれるの」
「そうなんだ、出発はいつ ?」
ユーティリアは少し考える。
「明日でいいんじゃない ?」
カグヤがそう答える。
「俺はいいよ。ユーティリアもいい ?」
「うん、レインもいいよね」
レインは静かに頷く。
「じゃあもう今日は解散。カグヤとレイン、また明日の朝ね」
ユーティリアとソウタは、カグヤとレインと別れた。
まだ日も昇らない朝早く、ソウタ達は門の前に集まった。
「それじゃあ全員揃ったし行きましょう」
そうしてソウタ達は王都を目指して始まりの町を出ていった。