予期せぬ乱入者達
「それで、ここからはどうするんですか ?」
ひとまず休めそうな所に着いたソウタ達は、今後について考えていた。
「そうだな、まずは傷の回復に努めよう。回復師、魔力は大丈夫か ?」
回復師の2人は、軽く頷く。しかし、1人は少し顔色が優れない。魔力切れが近いかもしれない。
「俺は少し周りを見てきます。すぐ戻るんで」
そう言ってソウタは立ち上がる。それをカレルは引き留める。
「待て、危険だ。せめて、私だけでも」
「駄目です。そしたら、彼らは誰が守るんですか。それに、一番傷が少ないのは俺なんですから、俺が行きますよ」
ソウタは草むらの中に入っていった。
草むらを抜けたソウタは、自分の手を見た。その手は小刻みに震えていた。足も震えており、立っているのがやっとだった。疲れがでたのかソウタはその場に座りこむ。
不意に草むらが揺れる。ソウタは、剣を構え臨戦態勢にはいる。しかし、出てきたのは敵ではなかった。
「バルクさん !」
ボロボロになったバルクが地面を這いずりながら出てきたのだ。
「どうしたんですか !?」
ソウタは急いで駆け寄る。
「奴らが……この森にいるはずがないのに。危険だ、今すぐこの森を出なければ。さもないと、全員死ぬぞ」
「とりあえず、詳しい話は後で聞きます。今は、俺のパーティーの所に行きましょう」
ソウタはバルクを肩に担ぎ自分のパーティーの所まで運ぶことにした。
「回復師、処置を早く !バルク、何があった ?」
傷だらけのバルクを見たカレルは慌てて駆け寄った。すぐに2人の回復師が治療を開始した。みるみるバルクの傷は治っていく。やがて、完全に元の状態に回復した。
「バルク、何があったんだ ?話してくれ」
「俺達のパーティーは順調に魔物を狩っていたんだ。だが、そこに奴らがあらわれた。南の魔王 戒毒王の幹部、骨騎士とその取り巻きのミノタウロス共だ。だから、ここから早く逃げなければ」
「きゃぁぁぁぁ !」
「今のは、ユーティリアの声」
ソウタは、すぐさま声のした方に走りだした。
「私達も追いましょう」
「やめておけ、死ぬだけだぞ」
パチンッ
カレルはバルクの頬を叩いた。バルクは、一体何が起こったのか理解出来ていない。
「そんな人だとは思わなかったわ」
放心状態のバルクを置いてカレルはソウタを追う。カレルのパーティーのメンバーもカレルについていく。
「勝手にしてろ」
バルクは、別の方向に進んで行った。
ユーティリアのパーティーのメンバーは骨の馬に乗った骨の騎士と戦っていた。しかし、3人しかいない。周りには残り3人の死体が無惨な姿で転がっている。
「おらっ !」
大剣を持った男が骨の騎士に向かっていく。だが、その剣は軽々と骨の騎士の剣に弾かれる。次の瞬間、騎士の剣が易々と男の体を貫く。
その隙を見計らって魔術師の少女が詠唱を唱える。すると、少女の体は縦に真っ二つに引き裂かれる。後ろから体長2m程のミノタウロスが現れる。その手には血のついた巨大な斧を持っている。ミノタウロスは次にユーティリアに狙いを定める。
「い、いや。来ないで」
ミノタウロスに言葉が通じるはずもなくどんどん距離が縮まる。手に持った斧を振り上げる。
恐怖でユーティリアは目をつむる。ミノタウロスは斧を降り下ろす。
「(もう終わりだ)」
ユーティリアは死を覚悟した。
「起動軸 盾」
降り下ろされた斧は幾何学模様が浮かび上がる半透明の謎の壁に止められた。
ユーティリアはいつまで経っても痛みがこないので、恐る恐る目を開ける。そこには、いつも見ている後ろ姿があった。
「ソウタ !」
「ごめん、遅くなった」
ソウタは、ミノタウロスに向け手をかざしている。どれだけミノタウロスが斧で謎の壁を攻撃してもひびすら入らない。
「ありがとう、助けてくれて」
安心したのかユーティリアはもう泣きそうだ。
「もう少しすれば、俺のパーティーのメンバーが来るはずだから。ユーティリアは皆についてこの森を抜けるんだ」
「ソウタは……ソウタはどうするの !?」
「俺はここでこいつらの相手をしていくよ。大丈夫、必ずまた会えるから」
「少年 !」
話しているうちにカレル達が追いついてきた。
「カレルさん、この子を頼みます」
「君は……いいのか ?」
ソウタは軽く笑う。
「カレルさんも同じこと聞かないで下さいよ。誰かが足止めしないと全滅しますよ。だから、後のことは頼みます」
ソウタは真剣な表情になる。
「わかった、死ぬんじゃないわよ」
「いや !ソウタ !」
カレルはユーティリアを連れて森を引き返していった。
「じゃあ、やるか !」
ミノタウロスからはとてつもない殺気を放たれている。
「さあ、ここからが俺のチートのお披露目だ」
ソウタは盾を解除し、ミノタウロスと骨の騎士とにらみあった。