舜花のこと
大家族で有名な糜家に、一人の子供が新しく引き取られた。
舜花と呼ばれた子供は舌ったらずで、それに赤茶色の髪にクルミ色の瞳、そして痩せていた。
いや、連れて帰ってくれた均や珊瑚は、食べ物をちゃんと食べさせてくれたのに違いないが、それまでが悲惨な状況だったのに違いない。
それに、愛妻の美梅から抱き取った子仲の腕で、ウニウニと愚図る姿は昔の琉璃にどことなく似ていた。
いや、琉璃は別れてから、変わっていったはずだった。
自分達といた頃は、表情は哀しげで絶望していた。
舜花は人には驚いているが、子仲にしがみつき無意識に甘えることを知っている。
琉璃への贖罪にもならないが、舜花を引き取り育てることで許されれば良いと思った。
それに、
「おとーしゃん、おかーしゃん」
と恥ずかしそうに声をかけてくれる。
それだけでも、愛おしいと思えた。
用意していた部屋に連れていったが嫌がり、しがみつく。
「ひとり、やっ!」
「うーん。梅花は自分の部屋に行ったからね」
「じゃぁ、お父様とお母様のお部屋にいきましょうか?しばらく一緒にいましょうね?」
「う……あい!舜花はいゆのでしゅ」
「まぁ。舜花はお返事ができるのね。賢いわ」
美梅に嬉しそうに頬を赤くする。
「おねえしゃまにおしょわりました。そえに、テンリャンおにいしゃんでしゅ」
「それは良かったね。天藍は優しかった?」
「あい‼」
「じゃぁ、着替えをして家族とお話をしようか?お父さんには、舜花のお兄さんお姉さんがいてね?そのお兄さんたちに子供がいるんだ。同年代かな?それに近所には、舜花と変わらない年の子がいるね。天藍の妹には滄珠がいる。それに、舜花より少し上かな?亮花は10歳だからね」
「んーと。舜花は……こんだけでしゅ」
指を差し出す。
「8才かな?」
「んっと、ひとーちゅ、ふたーちゅ、みっちゅ……やっちゅでしゅ」
「数が数えられるのかい?すごいじゃないか!お父さんはビックリだよ」
「おねえしゃまにおしょわりました。練習したのでしゅ。あってましゅか?」
「当たっているよ。頑張って覚えたね……流石はお父さんとお母さんの娘だよ」
自分達の部屋に案内すると、牀に横にする。
「疲れただろう?少しお休みしなさい。傍にいるからね?」
手を握ると、本当に嬉しそうに笑い、目を閉じた。
カサカサの手を撫でて、
「手を、つるつるにしてあげないといけないね……」
「衣も沢山仕立てて、飾りも選ばないと……楽しみですわね」
「でも、厳しく言うと怯えてしまうから、優しく学ばせないといけないね」
「大丈夫ですわ。お利口な子ですもの」
美梅は髪を優しくほどく。
質素な釵に気付き、
「あら、可愛いわね。誰かに戴いたのかしら?こちらにおいておきましょう」
と置いたのだった。
しばらくして目を覚ました舜花は、手を握り、自分を見てくれている優しい眼差しに、
「お、おとうしゃん。おはようごじゃいましゅ。ここにいてくれたのでしゅか?」
「約束しただろう?あぁ、お母さんは舜花に似合う衣を探しにいっているからね。もうすぐ戻ってくるよ?今日は、均殿や珊瑚さまと、皆で食事をするからね。天藍も梅花もいるから、楽しみだね」
「一杯、でしゅか?」
「う~ん。お父さん達はお仕事仲間の家族と、良くお食事会していてね?均殿に久しぶりに会えるからと喜んでいるんだよ。それに、珊瑚さまは金剛のお祖母様で、ご挨拶をしたいからね。お会いしたくないかな?」
「い、いい子にしましゅ」
少し怯えている娘の頭をなで、
「大丈夫大丈夫。お父さん達がいるからね?」
「あい」
扉が開き、入ってくるのは美梅と梅花親子である。
「あら、舜花。目が覚めたのね?丁度良かったわ。衣を選んできたのよ?どうかしら?」
「私は可愛い色にって思ったのだけど、お母様が舜花は元々が可愛いから、今日は清楚な色にしましょうですって」
「梅花の可愛い色は色がきつすぎるわ。淡い色がいいのよ」
「じゃぁ、お父さんは出ているから舜花。着替えておくんだよ?」
子仲は席をはずす。
衣を脱いだ舜花に、手早く子供用の衣を着せる。
そして髪を結い上げ、置いていた釵を飾る。
「まぁ、可愛いわ。舜花」
「お母様、この釵を考えていたのね?似合っているわ。素敵」
「あ、あいがとうごじゃいましゅ。おかあしゃん。おねえしゃま」
二人に手を取られ出ていくと、子仲が目を細め、
「良く似合うよ?じゃぁ、行こうか」
と進んでいったのだった。




