途中で別行動になりました。
途中までは順調に時間を稼いでいたものの、やはり疲労などだろうか次第に軍も速度が落ちていく。
新しい地域に侵入すると言うことも問題ではある。
その為と、それ以外に将軍の子龍とその補佐である金剛、途中合流した金剛の祖母、珊瑚、参謀格である孔明に季常、均は話し合う。
そして決まったのは……。
「えっ!お父さん‼俺……」
天藍が、悲しげに顔を歪める。
「違うよ。天藍?大事なお願いがあるの」
孔明が、まだ痩せている成長期の天藍を優しく抱き締める。
「解ってると思うけれど、お父さんの一族は特殊な能力持ちなんだよ……お父さんはね?星見……これは、金剛や天藍の弟、喬と妹の滄珠だけが、生まれつき身に付けている能力なんだ。これは未来を見る……良い悪い関係なく……見えてしまうんだ」
「未来を見る……」
「そうなんだ。普通なら空の星宿図を見て、明かりを頼りに星を探す……でも、お父さんと喬と滄珠は、無意識に見てしまうんだ。お父さんは頑丈だから何とかなる。でも、まだ小さい滄珠と、体の調子が良くない喬に何かあったらと思って……」
「それにね?」
ヒラヒラ~と紙の書簡を読んでいた均が、
「兄さまの奥さんである琉璃がね?とても美人なの。お祖母様の珊瑚さまを見て。とっても美人でしょ?琉璃はお祖母様の姪なの。馬鹿将軍……じゃないや馬孟起将軍の奥さんが琉璃のお姉さんなんだけど……」
「あ、実は二度程、声をかけて頂きました……」
頬を赤くする。
「優しい方です。お祖母様も大好きです」
「琉璃がね?実は、ちょっと困ったことになってるの」
「困ったこと?」
「それがね?」
均が説明する。
「琉璃とお姉さんである雲母殿も、お父さんは黄承彦さま。お母さんが趙瑠璃さま。お兄さんがお父さんの技術の師匠で、月英と言うんだよ。ちなみに、月英兄さんの奥さんは士元兄さんの妹なんだけどね?まぁ、兎も角、琉璃は黄承彦さまの子供なの。ご両親も認めているのに、魏文長って言う馬鹿が、琉璃に横恋慕してね?兄さまがいない間にちょっかい出してね。しかも、父さんたちがいなくなった時を見計らって、『あの女は俺のもんだ‼』って公衆の面前で連れ去ろうとしたんだって。丁度、参謀補佐の人と出仕したばかりの張益徳将軍の息子の苞と天藍の弟の広が守ってくれたんだけど、3人が大怪我。で、少し離れて様子を見ていた天藍の2才上の黄漢升将軍の息子さんがぶっ飛ばしてくれたんだけど……危険だって」
そして、孔明が息子を見る。
「それにね、天藍の4才下になるのかな?広は壁に叩きつけられた上に、自分の後に殴られて気絶した苞が、頭から壁に突っこみかけたのを自分の体で庇って、動くのも辛いって寝込んでいるんだよ。で、琉璃の傍には一応誰かがついているけれど、7つの滄珠と幼い桃花もいるし……守ってくれる人が傍に居て欲しいと思って」
「それにね?実は、兄さまや金剛、子龍将軍は正式に動いているんだけれど、私は任務を放棄して随行しているから、早めに戻っておくべきだろうって促されてね……天藍?父さんと先に戻ろう。で、天藍は家族に会うのと挨拶をする。それに、珊瑚さまも一緒に行くからね?」
珊瑚は心底残念そうに、
「本当は一緒に行きたいのだけれど、足手まといになりそうだから……自分の力は理解しているわ。慢心しては反撃をくらってしまうことも。でも、一緒に行きたかったわ……子龍将軍に諌められるまで、そのつもりだったもの」
とため息をつく。
「お祖母様も一緒ですか?」
「そうよ。琉璃と循と喬はあったことがあるけれど、統と広、滄珠と桃花には、会ったことがないのよ。天藍は兄弟やお母さんに会いたいでしょう?」
「えっ?あ、はい……」
もじもじとする。
自分を認めてくれるかも不安だが、会いたいのは確かである。
嫌われたくないし、緊張もする。
「大丈夫だよ。だから、お祖母様と均と先に荊州に先に戻って?お母さんや兄弟に顔を見せるんだよ?良いね?」
「は、はい。お父さん」
「良かった……。じゃぁ、均。お母さんと天藍を頼むよ?」
「うん。解った」
「あの、お父さん」
恐る恐る天藍は問いかける。
「最近、皆さんの動きが……大丈夫ですか?」
周囲は目を見開く。
「どうして?」
「休憩が増えたのと食事の量が減っています。それに煮炊きをする為に、火を炊く数が減っているようで……食料が足りないのですか?」
「よく解ったな……」
金剛が感心する。
「お、俺だって少しだけど勉強してるし、お祖母様やお父さんにも繕い物とか習ったし……」
「天藍は器用だよなぁ……俺は不器用……あ、喬もそそっかしいんだ。いつも統がべったりしてる」
「な、仲良くできるかなぁ……」
「出来る出来る。もう、循だけ絞めたらそれで充分」
「循……同じ年だよね?」
考え込む。
その様子に、
「天藍。明日には、書簡とかを積んだ荷車で移動するから、良いね?お祖母様と3人。人手は割けない」
「わ、解りました。父さん。それにお父さんや将軍、季常老師、金剛も気を付けて……」
「老師……えっ?私?」
季常が目を見開き、指で自分を示す。
「はい。お父さんと父さんにも教わりましたが、一所懸命根気強く教えて下さったのは老師です」
「……ど、どうしよう……う、嬉しい……」
くしゃくしゃと顔を歪める。
「わ、私は、本当に教わるだけで教えたことがなくて……きちんと教えられているか心配で……」
「まぁ、そこそこ?これから頑張れ、季常」
「均も……一応、大変だと思う。頑張れ」
明日には別々の道を行く、仲の悪い二人が顔を見合わせる。
「あ、一応、季常。奥さんと娘宛の書簡を預かっとくけど?明日までに書くんだよ?」
「ぎゃぁぁ‼何書けばいいんだ‼時候の挨拶?仕事のこと?あっ‼衣装は揃えましたかでいい?大丈夫だと思いますが、何かあったら周囲の方に相談して下さいでいい?」
「まぁまぁだね」
「あぁぁ……眠れないよ~‼」
季常の悲鳴に、周囲はプッと吹き出したのだった。




