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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第三章 休暇中の大騒動「燃ゆる温泉街」編
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第56ページ アタミ伯爵家侵入事件

宿に戻った俺を待っていたのは、爺さんともう一人。


「帰ったかシュウ君。紹介しよう、こちらアタミ伯爵じゃ」

「初めまして、ヤマト・フォン・アタミです」

「シュウと申します」


一礼。

礼儀作法のスキルは内心どう思っていてもきていんと礼儀正しい行動を取れるから便利だ。

一番重宝しているスキルかもしれない。


さて、今日はもう宿でのんびりしようかと思ってたんだがな。

どうやらそうはいかないようだ。

悪戯を思いついたように笑っている爺さんの顔を見ればわかる。


それはそれとして何故俺の部屋にいる?

どうやって入った?


「あー…私は所用がありますのでこれで失礼させていただきます」

「まぁ待ちなさい」


くっ、逃げられない!!


「…いかがなさいましたか、前王陛下?」

「そんな嫌そうな顔をするでない、ほっほっ」


皮肉たっぷりに言ってやるがどこ吹く風だ。

ほんとにいい性格してやがる。

俺と爺さんのやり取りをアタミ伯爵はどうしていいかわからないようで、オロオロとしながら見ている。

少し申し訳ない。

伯爵が悪いわけではないからな。


「実はな」


だが爺さんの話は最後まで語られることはなかった。

嬉しいかと言われたら微妙だ。

なんせ話が途切れた理由も面倒事の匂いがする。


「大変です、伯爵!」


ドタドタとこちらに近づいてくる足音が聞こえると思ったら、ドアが勢いよく開かれた。

千客万来だな。


「どうしたミッシー、失礼だぞ」

「はっ、も、申し訳ありません!しかしながら一大事でございましてっ」


ミッシーと呼ばれた若い兵は、どうやら伯爵家の者らしい。

伯爵が申し訳ありませんと爺さんに頭を下げてから、ミッシーの話を聞く体勢に入る。

ミッシーは俺と爺さんの顔を見て、ここで話してよいのかと思案していたようだが、伯爵がそのまま聞くつもりなことと、今は細かいことに構っていられないと思い直したようだ。


「申し上げます!伯爵家に侵入者です!現在逃走中、忍部隊が追っております!」

「何っ!?」


伯爵家に侵入者っていうのが驚きのポイントなんだろうな。

だが俺は別のところに驚いています。

忍部隊だと?

すげーな初代伯爵。

そんなもんまで作っていたのか。


「侵入の目的は!?」

「どうやら宝物庫だったようです。何が盗まれたのかは、現在奥方様と執事長が確認中です!」

「メープルとリリアンは無事か!?」

「幸いにして負傷者は出ておりませぬ」

「そうか…」


その言葉に少し安心していたようで、浮かしていた腰をストンと落とす。

おそらく奥さんと娘さんなんだろうな。


「前王陛下、申し訳ありません。私は急ぎ帰らねば」

「うむ。仕方ないじゃろう、じゃが私も気になるのぉ…」


嫌な予感。


「共に行こう!のうシュウ君!」

「いえ、陛下私は」

「それはありがたい!シュウ殿が来てくれるなら百人力ですな!」

「…」


行くしかない感じになってしまった。

というかなんだその信用。

爺さん俺のことをどんな風に紹介したんだ?


「善は急げじゃ!すぐに馬車を用意して私達も向かう。シュウ君は伯爵と先に行っておいてくれ!」

「…了解」


こうなったらヤケだ。

とことん付き合ってやろうじゃないか。


---


伯爵の馬車をアステールに乗りついて行く。

伯爵家は、「天上の湯」から急げば四半時ほどで着くらしい。

近い…のか?

よくわからん。


「見えてきました!」


御者台にいるミッシーが声をかけてきた。

そちらには大きな屋敷が見える。

残念ながら日本家屋風ではなかった。

洋風建築だ。

さすがにダメだったか。

だが、仕掛け扉とかありそうだな。

少しワクワクしている。


「旦那様!」

「あなた!」

「ディラン!メープル!」


伯爵家の敷地内に入ると、中から二人の人物が飛び出してきた。

一人は着飾った女性で、おそらく伯爵夫人。

もう一人は燕尾服を着た、おそらく執事長の男性。


「怪我はないんだな!?」

「はい、あなた。家族も使用人も兵にも怪我はありません」

「よかった。詳しく報告してくれるか?」

「かしこまりました」


賊が侵入したのは、今から半時ほど前。

見回りをしていた兵士が闇色のローブを纏った怪しい人物を目撃。

大声で不審者の存在を知らせると、その人物は一気に逃亡。

途中までは兵が追っていたのだが、追いついた忍部隊と交代し、現在もアキホの町内を追走中。


兵はその間、屋敷内で異常がないか確認。

伯爵夫人と、伯爵令嬢の無事は確認され、宝物庫を確認した所、普段は閉まっているはずの鍵が開いていた。


そこで、執事長であるディランと、伯爵夫人メープルが呼ばれ、管理目録と照らし合わせ紛失物の確認作業をし、終わらせたのが先ほど。


「それで、何が失くなっていた?」

「…匣でございます」

「まさか…」


えっと…説明してもらえますか?


「ああ、申し訳ない。匣というのは初代アタミ伯爵から我が家に伝わる物でしてな。その中には、ある重要な物が収められている。申し訳ないが、何が収められているかは言えないが、危険な物だ」


聞かなければよかっただろうか?

いや、もう遅いな。


「それと、一緒に保管されていた初代の秘蔵書も失くなっていますわ」

「何?秘蔵書もか?いやしかしあれは、別に大したものでは…」


秘蔵書というのに大したものではないとはどうなんだ。

それ秘蔵する意味あるのか?


「まぁそちらはいい。しかし、匣が奪われたとなると奴らの目的は…」

「魔神の復活かの?」


いつの間にか来ていた爺さんが口を挟む。

その後ろにはシオンや、爺さんの護衛騎士達がいる。


「前王陛下…」

「よいよい」


礼を取ろうとする伯爵たちを押しとどめ、話を続けるように促す。


「おそらくはそうでしょうな」

「ふむ…シュウ君、頼めるかの?」

「どうせそのつもりだったくせに」

「ほっほっ」


目を反らせて笑っている。

このやろう。

いつかギャフンと言わしてやる。


冗談は抜きにして、俺は普段は使用していない目を使い、町を捜索する。

見たい所を見ることもできるのだが、その侵入者がどこにいるかわからない。

ピンポイントだと見逃す可能性があるので、鳥瞰視点で町全体を眺め見る。


アキホの町は、ガイアより広くはないが、如何せん人が多い。

闇色のローブなど脱いでしまえばそれまでだ。

ズームしたり視点の場所を変えてみたりもしたが、それらしき人物は見当たらない。


「どうじゃ?」

「…ダメだな。見当たらない。忍部隊はどうなんだ?」

「こちらもダメだったようです。戻ってきました」


アタミ伯爵の見ている方を見ると、塀を超えて黒装束の人影が入ってきていいた。

ザ忍者って感じだ。

あの装束まだ日が沈んでいないこの時間だと逆に目立つくないか?


「どうだった?」

「申し訳ありません。路地裏へ追い込んだと思ったのですが地下へと逃げられました」

「地下か…」


この町の地下は水路が張り巡らされておりまるで迷路のようになっているそうだ。

入って出てくることくらいは可能だが、せめて地図がないと捜索することはできない。

そのため、一人を侵入者が消えた地下への入口に見張りとして残し、一人が戻って状況報告、あとの二人が地図やランプなどの装備を取りに来たそうだ。


「わかった。引き続き頼む」

「はっ」

「おお、地下へシュウ君も連れて行ってくれるかな?」

「彼をですか?」


胡乱な目でこちらを見る忍部隊の人。

声の調子からどうやら女の人のようだ。


「頼めるかな?」

「構いませんが、ついてこれなければ置いていきますよ」

「ほっほっ、だそうじゃよ」


まだ行くことも了承していないんだが、随分な言い草だ。

よほど自分たちの技術に自信があるのかね?

まぁいい。

お手並拝見といこうじゃないか。

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[一言] 伯爵のことを男爵って言ってる
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