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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第二章 友との出会い「深淵の森」編
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裏話 六魔会議

長机だけが置いてある大きな部屋。

七つの席が用意され、5つが埋まっている。


「そういば失敗したらしいな、スパンティム」


魔王軍最高幹部六魔将第四席、ビオ・スパンティウム。

実年齢は青年どころではないのだが見た目だけは青年風の男。

華奢そうな体つきと、鋭く吊り上がった目が特徴的だ。

緑色の長髪を後ろでくくっている青年はかけられた言葉に不快げな態度を顕にした。


「そういうお前こそ部下が死んだらしいじゃないか、エスパーダ?」


その言葉に今度はエスパーダと呼ばれた男が顔を顰める。

筋骨隆々とした体型、金色の髪をオールバックにしているその男。

六魔将第三席、シュテルク・エスパーダ。


「あいつは勝手に先走りやがっただけだよ。お前は綿密な計画だったんだろう?」

「そうだよねー。僕も協力してあげたのになー」


横目で見ながら呟くのはまだあどけなさの残る少年のような姿をした者。

しかし、こちらも実年齢がそうではない。

六魔将第六席、ラビエス・クーストス。


「あら、坊やが手を貸すなんて珍しいじゃない?」


面白そうに笑うのは紫色の長髪に浅黒い肌したこの場で唯一の女性。

六魔将第五席、メーア・ストランク。


「む、僕だって偶には手くらい貸すさ」

「実際動いたのはあなたじゃないんでしょうけどね~?」

「むむむっ」

「全員おしゃべりはそこまでにしてください。魔王陛下がいらっしゃいました」


今まで黙っていた青年が口を開く。

六魔将第二席、ポワゾン・モルテル。

水色の髪を肩程で切りそろえている優男風の男。


その言葉に全員が一斉に立ち上がる。

言葉の通り魔王が入室してた。


「遅れてすまない」

「謝る必要なんてありませんわ、陛下。一番上の者が最後に来るのは当然のことです」

「一人来てないやつがいるがな」


一つだけ空席となっている椅子。

本来なら六魔将の第一席が座る場所を見ながら、まだ歳若く見える魔王は苦笑した。


「タナトスはどうした?」

「おそらく…寝ているのではないかと」

「そうか」

「よろしいのですか陛下!あやつは少し勝手がすぎるのでは!?」

「必要な時には動いてくれるだろう。今は構わんよ」


どうせ無理に連れてきてもここで寝るだけだ。と言葉の裏が読めた六魔将の面々はそれ以上何も言わない。


「それで陛下、本日はどういったご用件で?」

「ああ、シェンツィアートから報告があってな。アレがもう少しで完成するそうだ」

「アレっていうと…アレですかい?」

「アレだ」


その言葉に六魔将の身体が無意識に震える。

この場にいるのはそれぞれがそれぞれ化物クラスの力を持っており、この六人だけでも人族の軍勢が何人いようと倒せない程の実力者たちだ。


そんな実力者だが、アレの完成が近いというそのことに無意識で戦慄を抱くほどの危険物。

それを理解している筈なのに、まったく気負った様子のない自らの主の姿に、同時に畏敬を抱く。


「すると…」

「ああ、時は近い」

「戦争かっ!腕が鳴るぜっ」

「…」

「…どうした、ビオ?」


戦争と聞き、反応はそれぞれであったが、一人だけ暗い顔をしたビオを不思議に思い魔王が尋ねる。


「陛下、現在人族には懸案事項がございます」


意を決したようにビオは語りだす。

自らの策略を力だけで翻した者の存在を。


「ほう?そんな者が…」

「加えてその者は、エスパーダの部下と交戦、試作段階でしたが魔人巨兵化の魔道具(マジックアイテム)まで用いた上でこれを殺害しております」

「そうなのか?」


聞かれたエスパーダは苦々しい顔で頷く。

試作段階の魔人巨兵化となる魔道具(マジックアイテム)を使用すると、その試験内容を知るために視覚や聴覚といった感覚を共有し、開発者であるシェンツィアートの元に送られるようになっていた。

故に、深淵の森であったことは全て情報として上がってきているのである。


「なるほど、其方の懸案はよくわかった。それで?其方のことだ。何かしらの考えは用意してあるのだろう?」

「は、彼の者のことは私に一任していただきたく…」

「うむ、わかった。其方に任せる、ビオ。頼んだぞ」

「ありがたき幸せでございます」


ビオは考える。

試作段階であるとは言え魔人巨兵を簡単に屠ったあの者。

もはや軽視はできない。

それに加え、人族、獣族共に魔族から見ても能力的に引けを取らないであろう人物が何人かいる。

それらが一致団結した時、アレが完成していたとしても戦いは五分五分となってしまうかもしれない。

なれば、減らせる戦力は減らしておかねばなるまい。


未だ、何者か調べがつかないあの男。

七星剣、獣王、三獣士、二人のSSSランク冒険者、そして何よりあの憎き錬金術師。

どうやって始末をつけるか、これは自分たちが直接でなければならないかもしれない。


そう思うと、ビオは協力を取り付けるために口を開いた。

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