3年後、入学式
今日は入学式。
サリーナは、才色兼備に成長した。
やっと、魔法を学べる。
あの日からお父様と魔力操作の訓練は続けていて、意識をしなくても出来るようになった。…というか、血のように勝手に魔力が身体を流れている感じだ。
「ルーフ達は、連れていけないが、大丈夫か?」
「寂しいですが、お兄様達がいますし、問題ありません。」
リック兄様は8年生、リオン兄様は6年生に在学している。
「それに、離れても話はできますから。」
「そうだったな。」
「ルーフ、パール、アル。行ってくるわね。」
「行ってらっしゃい。」
「何かあればすぐに呼べ。」
「僕は、適当にその辺飛んでるよ。それは良いんでしょ?」
「他の生徒に、迷惑にならない範囲なら大丈夫よ。」
「は~い。」
私とお父様は、馬車に乗り込んだ。兄様達は、すでに登校している。新入生と、その親は、在校生よりも遅く行く事になっている為、今日は別なのだ。
明日からは一緒に登校する予定だ。
「緊張しているか?」
「少し。でも、魔法を学べる楽しみが勝っています。」
「そうか。困った事があったら、すぐにリックやリオンに言うんだよ。」
「はい。」
「もちろん。私にも話してくれ。」
「はい。」
「それから、」
「お父様。大丈夫ですよ。」
「そうか。」
学校前には馬車が並んでいる。きっと入学式に参加する家族のものだろう。
そして、馬車から降りると、周りの親子がこちらを見ているのに気づく。
お父様は宰相だし、そりゃ注目されるわよね。
視線の中には、サリーナに見惚れている物も多いが、本人は分かっていない。
「リーナ!」
「リック兄様!リオン兄様も!」
校舎側からふたりがやってきた。
サリーナは自然と笑顔になる。
「おふたりとも、時間は大丈夫なのですか?」
「入学式の開始時間まで空いたからな。他の生徒も、ほら…」
リック兄様の言葉で再度周りを見ると、言われたとおり新入生では無さそうな生徒が増えている。
「それにしても、リーナ。制服が似合うね。」
「ああ。このデザインは、リーナの為に作られたんだろうな。」
「…はい?」
「そうだろ、そうだろ。」
3人が親バカ、兄バカを発症…。
「家族の欲目です。」
「「「まさか!事実だ!」」」
「もう…。」
ふと、強い視線を感じた。そちらの方向を見ると、短髪のスポーツ少年のような子がこちらを見ていた。
「?」
「リーナ、どうしたんだ?」
3人は、サリーナの視線を追う。
「あー…。」
リオン兄様が声を漏らした。
「リオン兄様、お友達ですか?」
「ザックだよ。」
「………え?」
アイザック様?
本当に、アイザック様?
印象変わり過ぎじゃない!?
何か…こう…美少年って感じだったじゃん。今は美少年と言うより、好青年って感じ。これ…伝わるかなぁ。
「ザック!ザッ~ク!」
リオン兄様が呼ぶが反応はない。
「動かないな。」
「誰か待っているのではないですか?」
「それでも、挨拶くらいはするだろう。」
「あ~、うん。多分あれは…。とりあえず、声をかけてくるよ。」
そういうと、リオン兄様はアイザック様の所ヘ走って行き、声をかける様子が見える。…が、まだ反応が無いようだ。
あ、背中を叩いた。
「不敬とか大丈夫なのでしょうか。」
「「…」」
アイザック様とリオン兄様がこちらへやってくる。
「サ、サリーナ。ひ、久しぶり。」
「アイザック様、お久しぶりでございます。あの…大丈夫でしょうか?」
「?」
「先程、リオン兄様が…。」
「あ、問題ないよ。僕がぼーっとしていたのが悪いんだ。」
「そうですか。…お疲れなのですか?」
「え?あ、まぁね。そうかも。」
「そうですか。やはり、6年生ともなると忙しいのですね。」
「いや、それ程でもないかな。」
ん?どういう事?
私は首を傾げる。
「リーナ、そろそろ行こうか。」
「はい、お父様。アイザック様、身体にお気をつけください。」
「あ、ああ。ありがとう。」
「リック兄様、リオン兄様。また後で。」
「うん。」
「後でな。」
サリーナとジャックは入学式の会場へと向かった。その途中、新入生親子に声をかけられ、応える様子もみられる。
アイザックは、その後ろ姿をジッと見ている。
「ザック…。」
「殿下…。」
「ふたりとも言いたい事は分かっているよ。でも、しょうがないじゃないか。以前から可愛かったが、あんなに可愛さに磨きがかかっているとは…。サリーナが光って見えたよ。」
「「可愛いのは認めます。」」
「それにしても、変な虫が付かないと良いが…。」
パトリックが周りを見ると、サリーナを目で追う男子生徒が多くいる事が分かる。
「早い内に牽制しましょう。」
「そうしよう。変な虫よりも、殿下の方がマシです。協力お願いします。」
「分かった。」
王子にとる態度ではないが、なんだかんだ、ふたりの兄はサリーナの好みに近づこうと努力をしているアイザックを認めていた。
◇
会場へ着くと、新入生と親は分かれる。
入学式は、校長の話から始まった。
「皆さん入学おめでとうございます。本校は~。これからの学校生活を楽しんでください。」
その後は、ひとりひとり名前を呼ばれて壇上へ上がり、魔力量の測定をする。
「サリーナ·スウィンティー。」
「はい。」
壇上に上がると、何もせずに結果が書かれた紙を渡された。
「貴方の魔力は、すでに報告されていますので、測る必要はありません。結果通知書のみとなります。アルファベットはクラスです。」
「分かりました。」
私は壇上から降りる。
紙を見ると、そこには測定不能とAの文字があった。
「皆さん入学おめでとうございます。~それでは、学校生活が将来に続く、実のあるものになる様に願っています。これで私からの挨拶を終わります。」
生徒会長挨拶で締めくくられた。
生徒会長は、この国の第1王子であるアイザック様のお兄様。
ん?こっちを見てる?
……気の所為よね。
「それでは、クラスに分かれてもらう。」
クラスはA~Fまである。貴族が多いが、そうでない者もいる。表向き、学校での身分は皆平等。
だからこそのアイザック様とリオン兄様の関係性よね。
私はAクラスの列に並ぶ。
「前にどうぞ!」
何故か前の子に譲られる。
「え?ここでいいわよ?」
並び順なんてどうでも良いんでしょ?
「そんな事ありません。どうぞ。」
「私の前に。」
「私の前にも。」
何これ…。
結果、私は一番前になっていた。
「はぁ…。」
「それでは、クラスに向かいながら、校内を案内します。」
私は教師の後を付いていく。
きっと、この人が担任の先生なのよね?
…と思ったが、違ったようだ。
校内見学が終わり教室に入ると、違う先生が待っていた。
「席は自由よ。適当に座ってね。」
活発そうな女性だ。
私はどこに座ろうか悩み、他の生徒の様子を見るが、他の生徒は動かない。
何故?
「はぁ…。スウィンティーさん。座ってちょうだい。」
先生が溜息を吐きながら私を名指しする。
「はい。」
私は今いる目の前の席に座った。
すると、他の生徒も私の周りから順に座っていく。
何故?
「皆、座ったわね。それでは改めて、私は担任のジェシーよ。よろしくね。」
ジェシー先生はウインクをした。
「今日は学校生活の説明をして終わりよ。知っている事もあると思うけど、復習と思って聞いてね。」
ジェシー先生の話をまとめると、
①学園は身分関係なく過ごす事。
②クラスは魔力量で分かれている為、変動あり。
③7年生から専門コース(文官、騎士、商人、職人、医療、普通)に分かれる。
思っていたより、専門コースが多いのね。
因みに、リック兄様は文官コースだ。
「それじゃあ、今日はここまで。皆、気をつけて帰ってね。解散!」
そう言って、ジェシー先生は教室を出ていった。
「スウィンティー様。」
「はい?」
隣の席の男の子に声をかけられる。
しかし、
「リーナ!」
すぐに教室の出入口から呼ばれた。そこには、リック兄様の姿があった。
「ごめんなさい。兄が来たわ。」
「は、はい。また明日。」
私はリック兄様へ駆け寄る。
「リック兄様。どうなさったのですか?」
廊下へ出ると、リック兄様の他にリオン兄様、アイザック様、そして第1王子のアレックス様がいた。
少し離れた所には、人集りができている。
「あの4人が一緒なんて!」
「目の保養。」
「かっこいい。」
「あの可愛い子誰?」
「彼女?」
「えー。アレックス様以外、婚約者も彼女もいない筈よ。」
…兄様達、人気があるのね。
「俺たちも、もう帰りだから迎えに来たんだよ。」
「あ、はい。ありがとうございます。でも…」
私はチラッとアイザック様とアレックス殿下の方を見る。
「話してみたかったんだよ。リックの妹で、ザックのおも…」
「ちょっ!」
アレックス殿下の口を、アイザック様が抑えた。
「…聞いた?」
「?」
「いや、いい。大丈夫。」
アイザック様は、ゆっくりアレックス殿下の口から手を離した。
「ふーん、なるほどな。」
「兄上…。」
「リックは、将来私の右腕となる。家族みたいなもんだろ?その妹にきちんと会いたかったんだよ。」
「いつも兄がお世話になっております。」
「いいの、いいの、堅苦しいことは。これからよろしく。」
「はい。よろしくお願いいたします。」
「じゃあ、行こうか。私とザックも見送るよ。」
「そんな、」
恐れ多い…。
「あ、僕はリオンと予定があるのでスウィンティー家へお邪魔します。」
「あ、そうなの?それは、それは…。」
「兄上…。その言い方、棘がありませんか?」
「気のせいじゃないかな。私も帰って姫に手紙を送ろう。」
私達はそのまま馬車の所まで行くと、馬車にはお父様とアルの姿があった。
「アル!?」
「馬車の上に止まっていたから、待っている間、相手をしてもらっていた。アレックス殿下、此度の挨拶素晴らしかったです。」
「ありがとう。しかし、今日はサリーナ嬢のめでたい日。こちらの事など良いから…。それから、今日は弟が世話になる。」
お父様の眉がピクッと動いた。
「父上。ザックは僕と約束してるんだ。どうせなら一緒に帰ろうと思って。」
「…分かった。アイザック殿下、狭いですがどうぞお乗りください。」
「急な来訪申し訳ない。」
“アル。”
“何~?”
“お願いがあるんだけど。”
“いいよ。”
“家に戻って、ロンドにアイザック様がいらっしゃると話してきて。”
“了解~。”
すでに、リオン兄様が使いを出しているかもしれないが、報告しておいて損はない。
アルは、お父様から離れ空へ飛び立った。
お父様はこちらを見たが、私がにこりと笑うと視線を戻し、皆を馬車へ乗るよう促した。
「さあ、帰ろうか。」




