夢の中22
どこかで聞いたかのような話であり、ありきたりの話のように思えてしまうかもしれない。
しかし、この行いをするのは非常に困難を極め、最初に霊力を自分の体から完全に離すことを覚え、離れた霊力に力を送り続けなければならず。
そこには技術力に耐久力と忍耐力が必要で、さらにこの状態で動くとなると無心に行える事が必要となってくる。
そして、それをアニーはすることが出来る。
ならばその力を今回の、妖探しに最初から使えば良いではないかと思うかもしれないが、体力や精神面での負荷が大き過ぎる。
体力も精神力も一気に消耗するこの術、アニーでも探索に使えば疲労を覚えるのは間違いなく。
これからドラゴンや鬼に匹敵するモノと戦うのに使って良い能力では無い。
アニーの切り札、その価値がどれ程なのかというと一挙手一投足を感じ取れるという所に価値がある。
一挙手一投足と述べた通り、手足の筋肉の動きに呼吸を吸い込む口の動き、そして心臓の鼓動まで捉えて、相手の動作を完全に把握することが出来るのだ。
それは今から自分を襲い掛かろうとする動作も、相手が一度態勢を整えようと逃げ出そうとしているのも、怒りに体が打ち震えているのも、恐怖で体が委縮しているのも分かる。
この術を使うことによってアニーは妖の一つ一つの動作を感じ取り、蝶のように舞い蜂のように妖を翻弄する時もあれば、相手の動きに合わせて丁々発止の切り合いを演じることが出来、まさに相手の手の内を知るという言葉の通り。
まさに最強の切り札であるが、一度切ってしまったら二度は使えない切り札。
少し話がそれてしまったが、これだけの高等技術を礼人に教えようというのだが、別にこの術自体は秘匿されていてアニーだけの奥義ではない。
才能もいるが鍛錬を積めば習得出来る技術であり、それを知っている礼人は今までずっとこの霊力をコントロールする力をみっちりと鍛え、最近になって放出することも出来るようになった。
だが、それでもアニーは、
「もっと鍛錬を積んで下さい……そうですね。今のままで鍛錬を積んだのなら大学を卒業するぐらいの年になったら一度見てあげますよ」
そう言って礼人が未だ未熟だといって教えようとしてこなかった。
それなのに今回、いきなり教えてくれるというもんだから礼人も驚いてしまったという事なのだ。
「本当に教えて貰えるんですか?」
「えぇ、一度口に出した以上は守ります」
そういうとアニーは礼人の手を優しく握って、先程自分が作った腕の形にさせる。




