マクラちゃん! さんじょう!
「パーラムさんっ! 大丈夫ですか!? 季節外れのスーパー台風で家壊れていませんか?!」
乎代子はクスの髪をブラシで梳かしていると、バン! とドアが開け放たれた。
「はあ? 誰?」
「パーラムさん、私です! 尾先ヶ 間蔵ですう! 忘れちゃったんですか?!」
尾先ヶ 間蔵は見当違いな事を捲し立てる。
「いやぁ、私は洞太 乎代子だって」
「貴方が乎代子だとかなんてカンケーないです。パーラム姐さんはパーラム姉貴さんです!」
「は、はあ、」
ここで否定してしまうと敵対して、ズタボロにされかねない。それに他人ではあるが、そこまで心配されるのは悪い気はしなかった。
「確かに2月にあんな台風は人生初めてだったも」
関東地方、もとい埼玉県やその上流域に大雨をもたらしたスーパー台風は暴れ川を覚醒させ、多大な被害を生んだ。東京も、いや、関東にあそこまで爪痕を残した台風はあの有名なカスリーン台風以来だろうか。
武蔵野台地の上にアパートはあったので、さいわい洪水被害は受けなかったが廃墟が暴風に煽られてしまい、倒壊しまいかとヒヤヒヤしていた。
いつの時間か、パビャ子が赤い雨だ、と呟き、地震かと勘繰るぐらいの奇妙な地鳴りが鳴った。部屋にいた全員が死を覚悟した。
が、脳裏に恨めしそうに泣いている女性が浮かび──あれは悲しくて悲しくて仕方ない泣き声なのだ、と変に納得してしまった。
クスを怖がらせないよう抱きしめながら、その女性やラファティ・アスケラが去ってしまうのを予感したのだ。
(パーラムの力ってやつなのか)
「マクラちゃんがいるからにはパーラム姐さんに傷一つつけさせませんよ!」
「ていうか、なんで居場所がわれてんの」
「多多邪の宮さまから教えてもらいました! わえはしばらく長い旅に出る、って! パーラムをよろしく頼む、と言われましてね」
フン! と胸を張り、自慢げに彼女は言う。
「し、死亡フラグじゃん。それ」
「ク?」
「クス、どうしたの?」
「パ」
ああ、と乎代子はさらに肩を落とした。さらに厄介な事態が起きるのだと。バタバタと階段を駆け上る音がして。
「あーっ、誰よその女?!?」
乎代子 なぜカスリーン台風を知って?




