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公爵令嬢は悲運の王子様を救いたい【改稿版】  作者: 田鶴


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12.アマーリエの心痛

 アマーリエはジルヴィアと共に公爵邸の廊下を歩いていた。天気が良く廊下の窓は開け放されている。窓のすぐ外側では、数人の侍女がアマーリエ達に気付かずに夢中になっておしゃべりしていた。話題はどうやらアマーリエとジークフリート、パオラの三角関係のようである。


 ジルヴィアが彼女達の無駄口を止めようとすると、アマーリエは人差し指を唇の前に立てた。そしてジルヴィアの腕を引っ張って窓の下に屈んで耳を澄ました。


「お嬢様、お気の毒よね。殿下がやっと爛れた男女関係を止めたと思ったら、今度は本気の浮気なんて」

「お嬢様がもう少し大きくなれば、お似合いの美男美女カップルになるでしょうに。お気の毒よね。あの年代の4歳差って大きいのよね。お嬢様はまだ社交界デビューできる年じゃないから」

「でも本当に本気かしら? お相手のツヴァイフェル伯爵令嬢を見たことあるけど、あの美しい殿下に見合わない方よ。地味でぱっとしなくて侍女のお仕着せを着せたら私達と区別がつかないぐらい」

「フフフフ!酷いこと言うわね! でも男女の仲なんてわからないものよ」

「何言ってるの、貴女もそう思ってるでしょ?」


 ジルヴィアは、とうとう堪忍袋の緒が切れ、勢いよく立ち上がって窓から外へ身を乗り出して叫んだ。アマーリエは、とっさに反応できず、ジルヴィアの服を掴もうとした手が空を切った。


「いい加減になさい!」

「ジルヴィア!」

「あっ! 申し訳ありません!」


 ジルヴィアに叱られ、侍女達は慌ててその場を離れた。でも同じ階級の侍女から叱られて内心は不満たらたらなことが顔からもありありと見てとれた。


「ジルヴィア、わざわざ敵を作らなくていいのに」

「使用人がお嬢様の噂をするなんて公爵家の恥です。侍女長に話して躾を徹底してもらいます」

「そういうの告げ口って言うのよ」

「いいえ。愛の鞭です。どこに行っても主人一家の噂話をする使用人は敬遠されますから」

「でもあれは本当のことだから……」


 アマーリエの長いまつ毛のついた瞼はふるふると震え、今にも涙が落ちてきそうだ。


「あの優しかった殿下がそんな風になったってまだ信じられない……」

「これには何か理由があるに違いありません」

「……でも殿下は私に事情を話してくれないのよ。それって浮気は本当だってことじゃない? 私が成人してたら夜会でも殿下にくっついてそんな女の所に行かせないのに……」

「いい案があります。うちの爵位は低いですが、旦那様の協力があれば殿下が出席する夜会に出てあの女を牽制することもできます。例え殿下が私と踊ったとしても、私とでは年齢も実家の爵位も釣り合いませんから、うがった見方はされないでしょう」


 ジルヴィアは今年22歳になるから、ジークフリートの5歳年上になる。現代だったらそのぐらいの年齢差の姉さん女房は不思議でも何でもないが、この時代の王侯貴族ではほとんどありえない。しかも彼女の父は子爵だから、王太子妃になるには爵位が低過ぎる。


 それに対し、伯爵令嬢はぎりぎり王太子妃になれるし、パオラはジークフリートと同い年なので、ジークフリートの伴侶になれる希望を捨てていない。


 アマーリエの父ルートヴィヒはもちろんそんな企みを成功させるつもりは全くない。ジークフリートの行状には腹を据えかねているが、まだ婚約破棄させるまでは考えていない。


 ジークフリートはルードヴィヒにもアマーリエにもその行動の理由を何も言わないものの、ルートヴィヒは王家の諜報部隊の責任者としてその理由の推測はできている。ルートヴィヒは、今度の夜会でパオラをエスコートしない事と、主賓の後の最初のダンスの相手にジルヴィアを選ぶようにジークフリートと約束を何とか取り付けた。

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