恩返しのこと・十二編
(悪いね、リツ)
心中で律に謝罪の言葉を送りながら、ユーフィムは議事庁舎の中を走っていた。招かれざる客であるにも関わらず、議事庁舎内にユーフィムの存在に気づく者はいない。
気配を消しながら急ぐことなど、ユーフィムにとっては朝飯前だ。これは自分の一族の十八番でもある。加えて今は律の魔法で姿さえ見えない。決して誰にも気取られる事はないだろう。
(─────コハクかリシュリット様以外は)
この二人は規格外なので数には入れない。ユーフィムがすぐに気配を察するのと同様、この二人もまた気配に敏感なのだ。だが議事庁舎に入ってからしばらく経ったものの、自分を追ってくる気配がないところを見るとコハクもリシュリットも議事庁舎内にはいないのだろう。
(好都合だな)
ユーフィムは思わぬ幸運に、その綺麗な顔をにやりと綻ばせる。
向かう先は最上階。馬鹿と偉い人間は高い所が好きだと言われるように、大体の施設ではその組織を統括する者の執務室を最上階に設けるものだ。この議事庁舎も例外ではないだろうと踏んで向かった最上階でやはり目的の部屋を見つけて、ユーフィムは息を殺して中の気配を窺った。
(………誰もいない、か……)
誰もいない事を確信してから、ユーフィムは静かに扉を開ける。開く幅は自分が通り抜けられるだけ。そこをするりと抜けて再び静かに扉を閉じたところで、ユーフィムは部屋の中をぐるりと一度見渡した。
第二皇子の執務室だけあって、部屋にある調度品はみな質がいい。どれもかれもが一級品で揃えられた部屋の奥、ちょうど扉の真正面にひと際立派な執務机が目に入って、ユーフィムは静かな足取りでそちらへと向かう。途中、視界に左端におざなり程度に仕切りを置いたその向こう側の部屋にも執務机が二つ見えたが、そのどちらも見た目の豪華さが劣るところを見ると、やはり今足先を向けているこの執務机こそが、第二皇子のものだろう。
(………何かないか?)
ユーフィムは執務机の引き出しを上から順に開いて、中を物色する。探しているものは異界の旅人に関するものだ。おそらく第二皇子から国へ公式に異界の旅人の存在を報告しているだろう。ここアレンヴェイル皇国は異界の旅人の知識で発展を繰り返している国だ。その重要人物である異界の旅人が百年ぶりにこの世界に降り立った。これを国に報告しない理由はない。
ユーフィムが欲しいのは、その報告を受けて国から第二皇子に送られた公式の書状だった。そこには十中八九、異界の旅人を今後どのような処遇に取り置くべきかが記されているはずだ。その内容如何では、律を第一皇子に会わせるか再考する必要がある。
そう思って探しては見たものの、国からの書状どころかそれに準ずるような書類や資料さえ見当たらなかった。いや、そもそも探す事がことさら難しい。自分自身でさえ己の手の所在を認識できない中で、物を掴むという行為がこれほど難しい事だとは思わなかった。自分が今何を持ち、何に触れているのか、それを視界からの情報で認識ができないのだ。まるで暗闇の中で手に当たる感触だけを頼りに物を探しているような気分だ。いや、物が見えている分、よりもどかしいだろうか。文字通り手探りで目当ての物を探しながら、ユーフィムはその歯がゆさに嘆息を漏らした。
(……大体、姿をくらます魔法なんて聞いた事がない。これは本当に魔法なのか?)
姿を消す魔法は、リシュリットが好んでよく使う魔法だ。だが半妖精であるリシュリットが使うのは妖精由来の魔法であって、それを人間が使う事は出来ない。人間が魔法を使えるのは、精霊の庇護があるからだ。だからどうしても精霊由来の魔法に頼らざるを得なくなる。使える魔法が限られているのだ。
(少なくとも、俺が知る限り精霊魔法で姿を消すものはない)
精霊は、水・火・風・土の四大元素と、光・闇・時の特殊元素、そして音や氷、木、花などの細かな基本元素が存在する。そのうち特殊元素の精霊は人間が扱える存在ではない。光の精霊は聖女のみが使う事を許され、闇の精霊は意志を持たず、この世界を蝕む脅威の象徴として君臨し、そして時の精霊は気まぐれで決して人間の呼び声には応えない。人間が扱えるのは四大元素と基本元素の精霊のみ、そこから人間は様々な魔法を編み出してきた。
だがその中に、姿をくらます魔法はないのだ。
だとすれば、考えられるのは一つ─────。
(……リツが、新しい魔法を作った……?)
通常、新たに魔法を生み出すには、それに伴う詠唱を新たに考える必要がある。それは魔法を使うのに、魔法陣が必要不可欠だからだ。
陣の中に、精霊に何をどうしてほしいのか、細かな指示を特殊な文字や記号で書き記すのだ。その魔方陣の指示と術者の頭の中に思い描く想像が合わさって、精霊は自分がすべき事を認識する。詠唱はその魔方陣を描くために欠かせないものだった。
詠唱によって空に魔法陣を描き、それによって魔法が発動する。複雑な魔法であればあるほど魔法陣もより複雑になり、それを描くための詠唱も長くなる─────それが通常の魔法の仕組みだった。
だが律はそうではない。
詠唱を唱える必要もなければ魔法陣も必要としない。ただ想像するだけで精霊は律の思い描く魔法を生み出すのだ。それはこの世界の魔法の仕組みを超越していると言ってもいい。
かつてこの世界に、今はもう当たり前となっている様々な魔法を一人で生み出したとされる偉大な魔法士が存在していた。だが律の異常な能力を鑑みれば、比ぶべくもないだろうか。
─────とはいえ、律が生み出した魔法は律にしか扱えないのが難点だが。
結局その結論に至って思わずくすりと笑ったユーフィムは、ようやく物色を終えて息をひとつ落とす。
(何も見つからないな……)
異界の旅人に関するものが見つからなければ、せめて脅しの材料になるものでも、と思って引き出し中を引っ掻き回したものの、その一切が見つからない。人の上に立つ者ほど後ろめたい物があるものだと認識していたユーフィムは、まるで清廉潔白を絵に描いたような第二皇子の執務机に小さく舌打ちを送った。
(……ここではなく、別の場所に保管しているのか?)
考え込みながら何とはなしに机に手をついたユーフィムの耳に、かさりと音が聞こえてそちらに目を落とす。自分の見えない手が置かれたそこには、書類の束と、その一番上に置かれた一通の文がユーフィムの視界を奪った。それを手に取って、封筒からゆっくりと文を取り出す。何度も読み返したのだろうか、取り出した文は随分とよれていた。所々水がかかったのか、触れるたびかさかさと音を立てている。ユーフィムはそれをゆっくりと開いて、中に書かれた文字に目を通した─────その最中。
「…!?」
文を持つ自分の手が、唐突にユーフィムの視界に現れた。慌ててもう片方の手を確認するために移した視界にも、やはり同様に自身の手が見える。手も、足も、体さえ、もはやすべて露わになっている事を認識して、ユーフィムの頭の中は自分でも驚くくらい真っ白になった。
(これは…!……リツが魔法を解いた……?いや、解かされたのか……!?)
どちらが正しいのか、もう判断がつかない。
思えば今自分たちは、議事庁舎に忍び込んでいる賊なのだ。それはつまり危険と隣り合わせだという事。自分一人だけならば容易く逃げられるが、律とコーディはそうはいかない。彼らが衛兵か護衛騎士に捕まる可能性は多分にある。なのに二人から離れて単独行動を取ったのだ。これは明らかに自分の失態だろうか。
ユーフィムは律の安否を確認しようと、手に持っていた文を執務机に放り投げ血相を変えて駆け出した。その瞬間、執務室の扉が唐突に開いてユーフィムはなおさら硬直したように体を強張らせる。扉から入ってきたのは、まさか執務室内に賊が潜伏していようなどと少しも想定していない、無警戒な一人の男だった。管服を着ているので議事庁舎の職員だろう。鼻歌交じりに扉を開けていつものように執務室に入ったその男は、何気なく上げた視界に見た事もない小綺麗な顔の男が硬直したようにこちらを見据えている姿が入ってきて、同じくびくりと体を強張らせた。二人の間にいたたまれないほどの沈黙が訪れたのは、ほんの一瞬の事。次の瞬間には男が上げた悲鳴が、執務室のみならず議事庁舎内を駆け巡ったことは言うまでもないだろうか。
「賊っっっ!!!!!?賊が殿下の執務室にまで侵入していますっっっっ!!!!!?」
「ち…っ!」
腰を抜かしたようにその場にへたり込む男に舌打ちを送って、ユーフィムは駆け出すのと同時に大袖に隠し持っている双剣を握る。自分が次にどういう行動を取るのか、ユーフィムの中ではもはや考える必要もない事だった。その殺気を多分に含んだ美しいその瞳が今から何を行うのか如実に語っているようで、男はなおさら込み上げてきた恐怖から目を逸らすように固く瞳を閉じた。
「だ、誰か─────!!!!!!」
「よせ!!!!!ユーフィムっっ!!!!!」
救いを求めた声に呼応したのは、得も言えぬほどの幸福感と抗えないほどの強制力を有した、不可思議な声。その激昂を表したような硬い声音にユーフィムの体はびくりと強張って、まるで岩にでもなったかのように動かす事が困難になった。反面、鼓動だけは耳にうるさいほど鳴り響き、小さく肩で息をしながらユーフィムは視線だけを声がした方へと流す。そこにいたのは、はらはらとした表情で成り行きを見守っているコーディと、その前に立つ、険しい表情と安堵が入り混じったような複雑な顔を見せている律の姿だった。
「あ………」
言い訳を、と思いながら開いた口からは言葉が出ず、焦燥感と軽い混乱で思考は虚しく宙を撫でる。そんなユーフィムなどお構いなしに律は怯える男の前を素通りして、険しい表情を保ったままユーフィムの前に歩み寄った。そうして硬直して動かないままのユーフィムの頭を、軽くはたく。
「いて」
「まったくお前は!誰彼構わず剣を抜くな!本当に剣を抜く必要があるのか少しは考えてから剣を抜け!」
「…………………ごめん」
呆けたようにぽつりと謝罪すると、途端に心の重しが取れたのか、強張って動かなかった体がふわりと軽くなる。それにふと気づいて、「動ける」と呟きながら自身の身体を確かめるかのようにしきりに手のひらを開いては閉じる事を繰り返すユーフィムに、律はようやく一息つくようにため息を落とした。
「……今度はちゃんと、俺の声が聞こえたんだな?」
「え?」
「連れ合いが殺人犯なんてごめんだからな。これからは気をつけろよ、ユーフィム」
「……!」
そのいかにも親しげな言い回しに感極まって、律に向けた花も恥じらうような爛爛としたユーフィムの笑顔は、だが官服の男が上げた悲鳴を聞いて駆けつけた衛兵や護衛騎士達の登場によって、すぐさま泡となって消える事になった。
**
「────で?これからどうするのか算段はついてるんだろうね?リツ」
不機嫌そうにそうこぼしたユーフィムの体には捕縛された事を主張するかのように幾重にも縄が回され、無造作に執務室の床に座らされている。その両隣には同じように縄で縛られた律とコーディが、ユーフィム同様仲良く地面に座り込んでいた。
「………なんで姿を消す魔法を自ら解くかな」
「いいんだよ、始めっから捕まるのが目的なんだから」
「はあ!?」
それにはユーフィムとコーディが仲良く声を揃えて、理解できないとばかりに不満げな声を律に送った。
「そんなの聞いてねえぞ、俺はっ!!?」
「そうだそうだ!!だったら外で捕まればよかっただろう!?そうすれば門の外に放り出されるか数日牢に入れられるだけで済んだものを!!」
「…………放り出されても数日牢で過ごしても目的は果たせないだろうが」
すっかり目的を見失っているユーフィムに突っ込みを入れつつ、一致団結したように騒ぎ立てる二人を呆れたように細めた目で見つめる。どうやら喧嘩するほど仲がいいと言われるように、この二人は意外にも馬が合うらしい。
「……大体、お前一人なら難なく逃げられるだろ?ユーフィム」
「リツを置いては行けない」
「俺は?」
「コーディはどうでもいい」
「何だと!?」
「静かにしろ!!!捕まっている自覚はないのか、お前たちは!!?」
緊張感のかけらもない賊三人組にしびれを切らした衛兵が、たまらず剣を向けて声を荒げる。この光景に既視感を覚えるのは気のせいだろうか。
たまらず苦笑を落とした律に、だが衛兵などには目もくれずユーフィムは妙案が思いついたようにひと際声を高くした。
「あ、そうか!コッコを出せばいいのか!!異界の旅人にコッコが従ってる事は知れ渡ってる!!身も守れるし、異界の旅人の証明にもなる!!」
一石二鳥だと瞳を爛爛と輝かせるユーフィムに、律はげんなりとため息を返した。
「…………第二皇子の執務室で黒虎を出してみろ。それこそ国に喧嘩売ってるようなもんだろうが」
むしろ余計事態がややこしくなる事は目に見えているが、これを妙案だと提示するあたり、やはりユーフィムは無自覚で事態を引っ掻き回す才能があるらしい。
「…………なら、どうするつもりだ?そもそも捕まるつもりなら、なぜわざわざ第二皇子の執務室で捕まるような真似をした?外で捕まるならまだ微罪で済んだものを、よりにもよって機密性の高い第二皇子の執務室で捕まれば極刑は免れない。第一皇子を助けるどころの話じゃなくなるんだ。判っているのか?」
「だからここを選んだんだよ」
「…!」
小首を傾げるコーディとは対照的に、律が言わんとしている事をすぐさま悟ったユーフィムは、その綺麗な顔にことさら深く渋面を刻んだ。
「……第二皇子が賊に会いに来るとでも?確かに重要度が高くなればなるほど、上の人間が罪人の取り調べや罪状の見分を行う可能性は高くなる。だが皇族となれば話は別だ。特にこの国の第一皇子は長年不治の病で床に伏し、現時点では第二皇子が唯一の時期皇王候補になる。その第二皇子をわざわざ危険に晒すと思うのかい?」
思いのほか冷静に、懇々と諭すように静かに反論するユーフィムに、だが律は心得ていると言いたげに、にやりと笑みを返した。
「さすがに第二皇子が来るとは思ってねえよ」
「なら─────」
「でも事が大きくなれば、警備責任者は顔を出さざるを得ないよな?」
それにはさしものユーフィムもつい先ほど深く刻んだはずの渋面を解いて、しきりに瞬いた瞳をコーディと互いに見合わせている。小首を傾げて一拍空いた後、二人は示し合わせたように同時に律を見返した。
「……………警備責任者?」
**
騎士団長ジョファス=ルーヴェルは、騎士団員の訓練を終えて詰所に戻る最中だった。
魔獣の森で異界の旅人と共にいたヘルムガルドの姿を目の当たりにし、気が動転して正常な判断ができず失態に失態を重ねた彼らの狼狽っぷりは、正直目に余るものだった。それは肉体的な強さ云々の話ではなく、何よりも心の弱さが露呈した結果だろう。そう思ってジョファスはあれ以来、鍛錬をより厳しいものに変えたのだが、日に日に脱落者が増えていく現状にたまらず嘆息を漏らした。
(……軟弱者どもめ。騎士たる者、いつ何時どのような状況でも平常心を保っていられる心の強さが必要だと言うのに……)
あまりに訓練が厳し過ぎて騎士の一人がレオスフォードに助けを求めた結果、もう少し訓練の難易度を下げるように下命が下った。そうやって第二皇子が騎士を甘やかすものだから、いつまで経っても弱いままなのだと、ジョファスは不満を抱えていた。
(……それに比べて、異界の旅人は見事だった)
ジョファスの脳裏に、こちらを強い眼差しで見据える異界の旅人の姿が浮かぶ。彼の瞳には怯えも恐れも、そして狼狽でさえ窺い知る事は出来なかった。それはヘルムガルドがどういう存在であるのか知らないから、だけではない。異界に放り込まれた直後にわけも判らず騎士に取り囲まれ、有無を言わさず剣を向けられたにも関わらず、彼は怯えるどころか狼狽える事さえしなかったのだ。ただ静かに観察し状況を分析して、己の立場と次に自分がどう行動すればいいのか考えを巡らせていた─────その平常心を超えた冷静な観察眼と洞察力には、幾多の窮地を超えてきたジョファスでさえ脱帽だった。
(是非とも騎士団の参謀になってもらいたいものだ)
騎士の一人が血相を変えてジョファスを呼び止めたのは、彼が珍しく微笑を湛えながらそうひとりごちた時だった。
「騎士団長……っっ!!!大変です!!!」
「…!……どうした?」
「賊です…!!!賊が議事庁舎の殿下の執務室に忍び込みました!!!!」
「何っ!!!?」
詰所に戻るはずだったジョファスはすぐさま踵を返して、議事庁舎の最上階にある第二皇子の執務室へと足早に向かっていた。
「一体警備はどうなっている!!!?よりにもよって賊の侵入を許すなど、あるまじき失態だぞ!!!」
「も、申し訳ございません……!!ですが話を聞く限り、賊は突然姿を現したようで……!!まるで門の番人リシュリット様のようだった、と……!!」
「何を世迷言をっっ!!それで責任を逃れられると思っているのかっっ!!!?」
第二皇子の執務室に近づくにつれ、ジョファスの叱咤はより激しさを増していく。騎士団員の軟弱ぶりに苛立ちを抱えていた矢先にこの失態だ。もう彼らを庇う術も、擁護すべき言葉もない。
(それもよりによって、エルファス殿下のご容態が悪化したこの時に……っっ!!!)
レオスフォードは今や、兄であるエルファスの病を完治できる可能性のある異界の旅人の捜索で余裕がない。一応この一件を彼に報告するつもりではあるが、おそらくこちらに余裕を割くことはできないだろう。それでもきっと頭の片隅にこの一件を留め置いて、エルファスの事を考えながら何かの折にふとこの一件を思い出すたび、何もしなかった自分に嫌悪を抱くのだ。それを思うと彼に報告をする事すら憚られるし、何よりこのような時期に侵入を試みた賊が何よりも憎い。
ジョファスはそんな逆恨みにも等しい怒りを込めながら、感情の赴くまま執務室の扉を勢いよく開いた。
「一体どこのどいつだ!!?殿下の執務室に忍び込んだ不届者はっっ!!!!?」
「よお、久しぶりだな、おっさん。元気そうで何よりだ」
「………………」
「………………」
その微塵も思い描いてなかった目の前の光景に、ジョファスの思考はものの見事に停止してそのまま硬直したように動かなくなった。見開いたままの瞳には、ここにいるはずのない者の姿が映っている。今しがた脳裏に描いた人物だ。それも彼の体はなぜか縄で縛られている。
状況の整理が追いつかない中、緩やかに動きを取り戻した思考からわずかな理解を得て、ジョファスの脳内は騒然となった。
「………あの……?……騎士団長……?」
「………………この……」
「この?」
「この……っ!!痴れ者共がっっ!!!国の宝と言われる異界の旅人を縛り上げるとはどういう事だっっっ!!!?」
「!!!!!?」
そのジョファスの怒号が響き渡った直後、律たち三人の拘束が瞬時に解かれた事は言うまでもない。




