どうやら華音がたいへんなようです。
「王子、帝国のシエル様より連絡が来ておりますが」
「……通せ」
クレアはエトワールとリリーに任せた。」
私の部屋には、少々信用ならないが魔王もいる。
この万全な状況でどう出る、帝国軍。
「初めまして、シャルロット殿。シエル・クラウンと申します。
今回はなぜ彼女をとらえる必要があったのかをお教えしようと思いまして。」
なにか、引っかかった。
まるで、もうとらえているかのような口ぶりである。
と、その時。
扉が開いた。
「大変だプランツ! ……華音が――消えちまった」
勇輝のそんな声に、シエルがクス、と笑う。
「おや、気づいてすらいなかったのですか。それは散々ですね、華音さん。」
スクリーンに華音の姿が映し出される。
その光景に、息を呑んだ。
ぐったりと床に倒れこんでいる彼女。
首からは鎖が伸びている。監禁されているのだろうか?
アップにされた首元には、噛まれた跡が数えきれないほど。
そしてその顔は青白く、まるで今にも死んでしまいそうだった。
「か、華音……ってめえ! 華音に何しやがった!」
「なにって、……ねえ? ちょこっと吸血鬼の群れの中に五時間ほど放置しただけですよ」
「っざけんな! 華音は人間なんだぞ!」
勇輝がスクリーンに向かって叫ぶ。
だがシエルは笑ったままだ。
「知ってますよ、そんなこと。いや、むしろ人間だからこうした、と言ったほうがよろしいかな? まあ、もうそろそろ無駄話は終わりにして。本題に入りましょうか。彼女――立花華音さんの邪眼は『未来視の邪眼』。この邪眼は……世界一つをも滅ぼす力を持っています。」
「……なんだと」
自分の声が意外にも低かった。
「だから、殺せるんですよ。世界一つを軽々とね。彼女を自分のものにしてしまえば――わかりますよね? 世界を手に入れたも同然なんですよ」
「華音を今すぐ解放しろ」
俺よりも低い声で、そんなことを言ったのは勇輝だった。
噛み締めたのか、下唇から血が滲んでいる。
「いいですよ」
「は?」
随分と間抜けな声が出た。
「あなた方が――帝の宝玉を集めてくれば、ね」
帝の宝玉――それは、この世に4つあると言われている魔法具である。
それを全て手に入れたものは、この世のありとあらゆるものを操ることができるらしい。
それを、集めろと?
「そんな無茶な……」
「別にいいんですよ、このまま華音さんが吸血鬼の餌になっても」
それが決め手だった。
「プランツ、俺……宝玉探してくる」
「はあ!? お前、どんだけ難しいことかわかって言ってるのか?」
「……わからん! 知らん!」
そう言うと勇輝は、扉を開けて走り出て行ってしまった。
「ああ、もう……くそっ!!」
とりあえずシエルとの通信を切って、俺は立ち上がった。
久しぶりの更新となりました。
なんだかネタがない……